(第77章)真冬の戦いから翌朝……

(第77章)真冬の戦いから翌朝……

サンドラとゴジラの長きに渡る闘いから翌朝、
凛はベッドから眠そうに眼をこすり起き上がると、カードを使い朝のテレビを付けた。
 ニュースで日東テレビの音無杏奈がサンドラとゴジラの戦いの後の現場を取材していた。
「こちら日東テレビの音無杏奈です!数時間にも及ぶゴジラと怪獣の激しい闘いは昨日の夜、
時刻は0時にようやく幕を下ろしました!」
カメラマンは廃墟となった網走市の様子をテレビに映し始めた。
 網走市内は壊れかけた民家やビル、マンションの瓦礫が山のように積み重なり、
あちこちの壁や雪が積もり壊れかけた道路にはゴジラのものと思われる血痕がベッタリと付いていた。
信号にも血が付き、時々、ボタボタと音を立て雪に覆われた道路に落ちていた。
杏奈はマイクを持って壁や信号、道路を指さし、
「これが!現在の状況です!あちこちに飛び散ったゴジラ
血痕が戦闘の凄まじさを物語っています!
なお血痕から微量の放射能が検出されている事から、現在この区域全体は立ち入り禁止になっています!我々取材班も中には入れない状況でこの先何が起こっているか分かりません!」
と報道した。

ジーナとサミーはガーニャから、気絶している間、
夢か現実かよく分からない世界にいて……そこで少年と少女に会って、
クリスタルの中で長い間、孤独で恐怖と絶望を感じながら閉じ込められているサンドラがいて……
サンドラを俺が起こして彼女が罪を悔い改めて、それで自分自身の邪心が出て来て、
という具体的な体験の話を呆気にとられて聞いていた。
それから話を終えたガーニャは
「そういえば……夢の中にいた少年と少女の顔は網走厚生病院
で見た気がするな……名前も確か凛と蓮とか?」
サミーは
「信じられないな……見ず知らずの人間が夢に出るなんて?」
ジーナは冗談半分で
「ひょっとしたら天使だったのかもよ!」
するとガーニャは笑いながら
「今思い出せば!そうかも知れない!」
と言ったが、少し深刻な顔になり、しばらく黙りこんだ。
ジーナはその様子を見て
「どうしたの?」
と心配な顔で聞いた。
ガーニャは
「今まで……俺達はあの宇宙人達のトラウマから逃げ続けていた……
彼女も同じだった……俺たちを裏切った事をずっと後悔していた……」
ジーナは驚き
「どうしたの?急に?」
と聞いた。
サミーは話題を変えようと
「ところで長野さんはどうするの?」
ガーニャは
「どうやら……洋子の護衛の為に東京に戻るそうだ!」
ジーナは
「彼女は宇宙人だということだけど……」
サミーは
「でもレベッカ達とは考え方はたしかに違っていた……」
ガーニャは
「ただ……どこまで信用できるかは分からない……」
ジーナは
「大丈夫だと思うわ!MIBの仲間が監視をしている限り……」
と言った。

凛はまたリモコンで別のチャンネルに変えると、
今度はロシア人達が起こした『網走市厚生病院立て篭もりテロ事件』について、
山根優香が網走厚生病院前の広場内でレポートをしていた。
「この辺り一帯は関係者や特定の患者の家族、遺族以外は立ち入り禁止になっています!
私の息子も入院しているという事で特別の許可頂き!取材しています!
この病院に立て籠ったテログループ5人は全員銃撃戦によって死亡しました!
2人生きていたという未確認情報がありますが!
警察関係者は全員死亡したこれは単なるデマだと言う姿勢を崩していません!
もし1人生きていたらと一部の人々から不安の声が上がっています!
なお!警察官の一人はテロリストと何らかの関係があるジュリア
容疑者を東京の地球防衛軍本部に送還し事情を聴く予定だと述べました!」
 凛はしばらくテレビを眺めていたがそこにユキや山岸、洋子が駆け付けた。
ユキは半ベソをかき泣きながら両手で凛の体に抱きつくなり
「よかった!無事だったのね!よかった!よかった!」
大声を上げ泣きながら嬉しそうに言った。
隣で寝ていた蓮は少し不機嫌な声で
「なんだ……騒々しいな……」
と言い起き上がった。
そこに洋子が歩いて来て
「……気が付いたのね!」
またユキが泣きながら歩いて来た
「よかったわぁ!みんな無事で!」
と涙を必死にハンカチで拭き、かすれた声で言った。
蓮はユキの泣き顔を見て思わず正座し
「ユキ……すまない……俺……」
ユキは笑いながら
「いいのよ!」
と返した。蓮もようやく笑顔を取り戻した。

網走市の壊れた建物の瓦礫の中で発見されたサンドラは、
地球防衛軍轟天号内コンテナに収容され、両手両足を特殊な鎖で縛られ、極秘にへ運び出された。
国連の特別機で来た美雪と神宮司博士およびその他の医師は、
地下牢のベッドで眠っているサンドラの顔を見た。
その表情はとても穏やかで、安らかな寝息を立て静かに眠っていた。
 全身には青緑色の薄い鱗に似た血管が浮き出ていた。
美雪や神宮寺博士がサンドラの体内を調べた結果、
ウィルスに感染したことによってできた癌はまるで最初から何も無かったかのように消失していた。
またウィルスも同じく跡形も無く消滅していた。
 ただし、サンドラの体内に組み込まれた美雪とも凛とも違うG塩基を始め、
ゴジラクリオネ、ヒグマ、宇宙人の3つのDNAが検出された。
美雪は困惑した表情で
「ウィルスも癌も消えている……」
神宮寺博士は
「奇跡だ……病気が治ったんだ……」
と喜びにも困惑にもつかぬ声を上げた。
美雪は
「でも……一度人間として死んで、生き返っているから
やっぱり宇宙人のDNAは残っているのね……」
とつぶやいた。

(第78章に続く)