(第72章)レベッカ最後の抵抗

(第72章)レベッカ最後の抵抗

テロリストの一人のレベッカが何人かを人質に立て籠っていると聞き、
テレビ局の山根優香は朝のニュースの撮影の準備をしていた。
 すると後ろから後輩の女性アシスタントがコーヒを2つ持って優香の方に歩いて来た。
そして白い息を吐きながら大きな声で
「よかったですね!おめでとうございます!」
と話しかけた。
後輩の女性アシスタントに話しかけられた優香は無理やり作り笑いを浮かべ
「ええ……ありがとう…」
すると後輩のアシスタントは優香の事が心配になり
「どうしたんですか?気分が悪いんですか?」
と尋ねた。
優香は大慌てで笑顔を取り繕い
「いいや!別に!」
後輩の女性アシスタントは
「いいですね先輩は!あんなイケメンの尾崎さんと結婚して!
息子の蓮さんとさらに2人目の子供もいるなんて……」
あたしにも見つかるかな??」
優香は元気を取り戻し
「見つかるわよ!いい人が!」
それから別のカメラマンが
「優香さん!本番です!」
優香は後輩に分けてもらった元気で
「はい!今行きます!」
と返事するとカメラやマスコミのいる方へ歩いて行った。

 蓮と凛の言い争いが始まった時、ふとガーニャが
「……本当に助けられないのか?」
とつぶやいた。
凛と連がガーニャの視線の先を見ると、怪獣化したサンドラ
の肉芽種だらけのゴツゴツとした背中に、雪と共に降り積もっていた青黒いクリスタルは、
白い稲妻のAサイクル光線の刺激を受け、それぞれ先端が4つに開き、
青い液体を紫色の肉芽種に流し込んだ。
肉芽種の一部が蒸発を始めた。
サンドラは熱い痛みを感じ、暴れようと体を動かしたが体力が尽き、ほとんど動けなかった。
 それから背中の肉芽種の一部は蒸発し、
穴が幾つも開いていた。
さらにガーニャが暁のクリスタルの中に閉じ込められているサンドラを見ると、
暁のクリスタルが徐々に青緑色のクリスタルに変化しつつあった。
暁色だった空間が次々とシャボン玉の
ように破裂し、青緑色の空間に変わった。
ガーニャは
「一体?どうなっている?」
凛は首を振り、
「分からないわ……」
と答えるとまた怪獣化したサンドラの方を見た。
怪獣化したサンドラはやはりほとんど動いていなかった。

 レイと同じ病院に運ばれたジェレルから、最新のエコー検査
により宇宙人の子供らしき物体が見つかったので、
すぐに医師や看護婦達は彼のベッドを手術室へ運び始めた。
 手術室まであともう少しという所で突然、容体が急変した。
意識もうろうとしているジェレルの腹に再び、レイに襲われたのと同じ激痛が走った。
 医師が心電図を見ていると緑グラフが徐々に小さくなっていた。
「マズイ!心臓が停止するぞ!」
また別の医師はジェレルの動脈のある首筋に軽く触れると
「脈も徐々に低下しています!」
「熱いタオルや湯たんぽで体を温めて宇宙人の子供を弱らせるんだ!」
そして看護師がジェレルのベッドにある限りのタオルや湯たんぽを詰め込み、
体を温めたおかげで彼はサウナ状態だった。
 しばらくしてジェレルは完全に意識を失った。

 元FBI捜査官の男は両手で拳銃を構え、洋子に襲いかかろ
うとするレベッカの目の前に立ち少し首を傾げ
「さあ……どうかな?」
と言うとすぐに引き金を引いた。
 その弾はレベッカの右肩を撃ち抜いた。
 レベッカは右肩を抑え、ジーナとサミーの方を向いた。
すぐに二人は火炎放射機を構えようとするが、8本の触手でレベッカは2人を跳ね飛ばした。
 ジーナはガラスを突き破り寒空の雪の上に倒れこんだ。
サミーはそのまま柱に背中をぶつけ、その場に倒れた。
FBI捜査官の女は
「なんて力なの……まさか?MIBも絡んでいたなんて……」
レベッカは次の標的を元FBI捜査官の女に向けた。
そして怒りの唸り声を上げ、元FBI捜査官の女に襲いかかった。
 すぐに彼女は拳銃で応戦した。
隣でアヤノや元FBI捜査官の男性も拳銃で援護射撃を行った。
 レベッカは銃弾の嵐によりその場で力尽き、倒れて青黒い塵と化した。
しかし元FBI捜査官の男は油断せず、その青黒い塵を思いっきり蹴っ飛ばした。
その中には何もいなかった。
長野先生は
「いない……」
洋子は怪訝な顔で
「死んだの?」
と尋ねた。
長野先生は拳銃を構え
「その場を動かないで!まだどこかにいるわ!」
サミーは起き上がり
「まだ生きているのか?」
山岸は頭が真っ白でパニックの状態のまま、
それでも青白い顔で、自分の持っていたデジタルカメラ
一部始終を恐怖で震えながら無意識に録画していた。
その背後から赤黒い影が逆さまになって降りて来た。
アヤノは山岸に向かって
「伏せて!」
と大声で言った。
山岸はデジタルカメラをしっかりと持とうとして誤って放り投
げ、地べたに車に轢かれたカエルよろしく伏せたが、突然、
天井から伸びて来た赤黒い触手が
首に巻きつき息苦しさに思わず手足をジタバタさせた。
 しかしその瞬間、銃声が聞こえ、すぐに呼吸が楽になった。
洋子がすぐに駆けつけ
「大丈夫?」
と言って山岸を立ち上がらせた。

(第73章に続く)