(第76章)凛の本心と後悔の念

こんばんわ畑内です。
ゴジラの自作小説を載せます。

(第76章)凛の本心と後悔の念

危険を感じたアヤノの呼びかけでスピードアップした
車はまるでレースカーの如く「ブウウウン!」という空気を切り裂くような音を立てた。
幸い高速道路は、怪獣出現で市民全員地下に避難したので他の車は全く見当たらなかった。
3人は強い力で椅子に背中がへばりつき、ただじっとしていた。
 空が一瞬だけ青白く輝き、今度は空気の音に負けない程の
「バアアアアアン!」と言う激しい爆音が3人の耳を貫いた。
その爆音を聞いた運転手はハンドルを右に切った。
「キイイイッ!」とタイヤが道路にこすれる音が聞こえ、大きくドリフトをすると、
道路の標識を巧みにかわし、森の中へ入り、走り続けた。
 やがて強烈な衝撃波が襲いかかった。
だが爆心地からかなり遠くだったので、木々は大地にしっかり根っこを張り、
倒れずに済んだが、人が作った幾つもの道路脇のフェンスや標識、
電柱は大きな音を立てて次々と倒れて行った。

 青緑色の空間で魔獣サンドラの体が風船の様に膨らみ、
やがて破裂し、紫色の塵となる様子を目の当たりにしたガーニャとサンドラは無言だった。
凛は
「これで…終わりよ!」
蓮は
「食われたな……」
とガーニャとサンドラの隣でつぶやいた。

 数時間後、辺りを捜索していた自衛隊や機動隊により木の近くで一台の車が発見された。
車内にいた運転手やアヤノ、サミー、ジーナは奇跡的にかすり傷だけで無事だった。
ジーナは運転手に
「ありがとう…」
運転手は
「いや……いいですよ!」
と運転席で答えた。
3人が乗っていた車も奇跡的に無傷だったので、
そのままジェレルとレイのいる別の病院へ向かって今度は安全運転で向かって行った。
ちなみに網走厚生病院で蓮の病室で押収したパソコンも奇跡的に無傷のままアヤノが持っていた。

 一方ゴジラは青白い爆発と衝撃波が収まる頃、
紫色の塵と化した魔獣サンドラの身体はやがて8枚の青白い翼に吸収された。
自然に青白い翼は消え、ゴジラが勝利の咆哮を上げながらもその場に倒れそうになったが、
両足を踏ん張って立ち上がり、雪の上に転がっている青緑色のクリスタルを静かに見据えた。
その青緑色のクリスタルはすでにゴジラ位の大きさまで成長していた。
しばらくしてそのクリスタルの先端が開き、内部から全身青緑色の鱗に覆われ、
全体像がゴジラに似た胎児の状態の怪獣が誕生した。
轟天号内でニックが唖然とした表情で
「信じられない……」
とつぶやいた。
やがてそれは呼吸を始め
「ビイイイイィィィッ!」
と大きな声を上げた。その様子をゴジラはじっと見ていたが、
数時間にも及ぶ長い闘いで体力を使い果たしたゴジラは、傷だ
らけの体を必死に庇い、右足を引きずりフラフラと時々よろめきさえしながら静かに海へ帰って行った。
一方青緑色のゴジラに似た胎児の怪獣は、数時間後、大きな声がやがて小さくなり、
その場からまるで空間に吸い込まれるかのように跡形も無く消失した。

 網走厚生病院の病室のベッドでようやく
目覚めた凛と蓮はお互い顔を見合っていたが、凛は蓮に向かって口を開き
「あたしも…あたしはデストロイアに友達を殺されて
デストロイアを激しく憎んでいたわ…
それに自分の因縁について初めて知った時も怖くて……不安で…
前世の芹沢博士とゴジラの因縁から逃げてばかりいたわ……」
蓮は真剣な表情では
「それで?」
凛は
「あなたの父も実はあたしと同じく自分の因縁に苦しんでいた……
言葉じゃなくても何となく直感で感じただけなんだけど……
最後は因縁から解放されたけど……助けられなかった……
あたしがもっと早く因縁を受け入れていたら……
あなたの父は死なずに済んだんじゃないのかなって?
それにもっと多くの命だって救えたかもしれないのに……
今…あなたが苦しんでいるのを見て!ものすごく後悔しているのよ……
多分一生後悔する事になると思う……」
と自分が長い間、抱いていた自分の胸の内をすべて明かした。
蓮は凛の胸の内の本心を聞き、今まで自分が抱いていたゴジラや凛に対する
怒りや憎しみは何だったんだろうと思わずにはいられなかった。
凛は隣のベッドで静かに涙を流し嗚咽を漏らしていた。
蓮はふとサンドラの事を思い出し
「サンドラは本当に大丈夫だろうか?」
凛は
「きっと!大丈夫よ!悪魔を追い出したから…多分……」
と言いながら、だんだん自分も心配になって来た。
すると蓮が
「俺……あんたの本心を聞けて良かった!少し考え直してみるよ!」
とだけ答えると疲れ切った様子で眠り始めた。
凛も同じく暖かいベッドで眠りについた。

 別の病室でガーニャが頭に包帯を巻いたまま再び目を覚ましていた。
見舞いに来たジーナに向かって
レベッカは?囮作戦は成功したのか?」
しばらくジーナは黙っていたがやがて口を開き
「残念だけど…死んだわ…」
ガーニャは
「そうか…残念だ!サンドラは?」
サミーが
「無事保護されたよ!地球防衛軍轟天号に…」
と答えた。
ガーニャは熱心に
「彼女の様子は?」
サミーは
「驚く程、精神が安定しているって!今この病院に運ばれている!
でも!しばらくは面会謝絶だ!まだ少し不安定だからね……
彼女の病室の周りにはミュータント兵や警備員がガードしている!」
しかしガーニャは少し放心状態のまま
「気絶している間…凄い…体験をした!」
ジーナは思わず
「何?どんな体験なの?」
と聞いた。
ガーニャは自分が体験した事をジーナとサミーに話して聞かせた。

(第77章に続く)