(第2章)悪夢の出産、そして成長

'(第2章)悪夢の出産、そして成長
 
「このクソがぁっ!クソっ!クソっ!クソおおっ!」
ヘレンは怒りと憎しみに満ち溢れた歪んだ表情を浮かべた。
そして何度も汚い言葉を吐き続けた。
リーはハンドガンの銃口をヘレンの額に向けつつもこう言った。
「そんな汚い言葉を吐いても無駄です!いいですかおとなしくして下さい!
おとなしくするんです!その子の為にも!」
しかしヘレンは汚い言葉を吐くのを止めなかった。
間もなくしてヘレンは一瞬だけ苦しそうに顔を歪めた。
更にゴホッゴホッゴホッと大きく咳を始めた。
やがてヘレンは咳が止まらず苦しそうにゴホゴホと咳を続け、
次はグホッ!グホッ!と吐きそうな表情に変わった。
異変を感じたリーが近付いた途端、急にヘレンは甲高い絶叫を上げた。
「きゃあああああああっ!あああああああああっ!」
やがてうつ伏せに倒れ、ゴロゴロと床を転がった。
ヘレンは下腹部から全身に走る激痛で顔を真っ赤にした。
そして涙を浮かべ、痛みに耐えられず、
仰向けのまま床の上で左右に身悶えし続けた。
「ヘレンさん!しっかりして下さい!ヘレンさん!」
リーは必死にヘレンに呼びかけたが激痛のあまり、
彼女の声にほとんど反応しなかった。
やがてヘレンの下腹部の黒い服と白い肌が
ビリっと大きく真っ二つに裂けた。
同時に大きく裂けた下腹部の傷口からビシャアアアッ!と大きな音を
立てて、多量の真っ赤な血が噴水の様に勢いよく吹き出した。
そして吹き出した彼女の真っ赤な血はリーの顔面と
茶色の服に多量にかかった。
流石のリーも驚き、大きな茶色の瞳を大きくぱっちりと開けた。
一瞬の沈黙の後、再びヘレンはまた苦しみ出し、
身体を左右に蛇のように大きくくねらせ、、絶叫を上げ続けた。
「ああああっ!いやああああああっ!ぐええええっ!ぐええええっ!えっ!」
ヘレンは顔を真っ赤にして涙を浮かべ、首を左右に
激しく振り続け、甲高い絶叫を上げ続けた。
「あああっ!ぐえええっ!ぐうああっ!きゃああああん!あぐあっ!がっ!」
間もなくしてヘレンは身体を左右に激しく揺らし続け、
身悶えを続けてから僅か3分後にとうとうバチイン!
と大きく膨らんだ下腹部が風船のように破裂した。
同時に更に大量の血液と肉片が周囲の鉄の床を濡らし、飛び散った。
同時にヘレンも多量出血により即死した。
やがて息絶えたヘレンの下腹部から何かが這い出て来た。
ヘレンの下腹部の内部から無数の牙の付いた小さな真っ赤なつぼみに
赤みを帯びた胴体(とはいえヘレンの血液で染まっているので
体色の変化に気づきにくかった。)
更に幼体プラントデッドは細長く発達した
小さな緑色の触手状の蔦の両腕を伸ばした。
そして10対の細長い真っ赤な鉤爪で自ら臍の尾を
切断すると内部から飛び出してきた。
続けて植物の根に似た短い両脚を踏ん張り、よろよろと立ち上がった。
「ピイーッ!」と甲高い声で鳴いた。
やがて幼体プラントデッドは無数の牙の付いた
小さな真っ赤なつぼみをゆっくりと開いた。
やがて幼体プラントデッドは再び「ピイーッ!」
と鳴き声を上げるとリーに向かって素早く走って来た。
同時に大きくジャンプした。
続けて幼体プラントデッドは細長い緑色の触手状の蔦の
右腕を上下に振り、真っ赤な鋭い鉤爪でリーの左肩を切り裂いた。
リーは右肩に鋭い痛みを感じ、顔をしかめた。
一方、幼体プラントデッドは高い天井に張りつき、
四つん這いで素早く歩き続けた。
更に天井から落下しながらリーの背後から
両肩に乗っかり、おんぶの状態になった。
咄嗟にリーは右手で幼体プラントデッドの真っ赤に
輝くつぼみをむんずと掴み、渾身の力で引き剥がすと
片手で上下に振り、投げ飛ばした。
投げ飛ばされたプラントデッドはそのまま
ビタンと鉄の壁に叩きつけられた。
しかし素早く仰向けの状態から起き上がった。
やがて幼体プラントデッドに異常が起こった。
突如、幼体プラントデッドが急速に巨大化を始めた。
いや、どうやら急激に成長しているようだ。
そして緑色の蔦が複雑に絡んだ全身の皮膚は剥離し始め、
新たに分厚く太いまるで木の幹を思わせる筋組織が形成されて行った。
更に緑色の背中からバキバキと音が鳴り、
6対の枝状の突起物が生えて来た。
やがてバカッと無数の牙を持つ真っ赤に輝くつぼみが花弁の様に開いた。
更に口内の中央から緑色の無数のイバラの棘の付いた
細長い舌がニュルリと伸びていた。
そして立ち上がり、2足歩行を始める頃には
リーと同じ背丈まで身体が伸びていた。
そして太い木の根に似た10対の棘に似た指で
しっかり鉄の床を踏み、立っていた。
やがて成体となったプラントデッドは天井に向かって甲高い声で吠えた。
「ピイイイイイイイイイイイイ!」
リーは素早く成長した成体プラントデッドを茶色の瞳で睨みつけた。
そして両手でマシンガンを構えた。
その時、リーの無線機に通信が入った。
「こちら!ブレス・マドセン!何があった!捕えたのか?」
「残念ですが!ヘレンさんは死亡しました!
そして妊娠していた下腹部から出産し、目の前で急速に成長しました!」
「マッ……マジかよ……!せっかく!
冷凍冬眠から目覚めるのを阻止したのに!もう一匹出現したのかよ!」
「どうやらあの突然変異体プラントデッドに襲われた女性は
ウィルスに耐性が無くて卵に変質しても、ウィルス耐性があって
人間の姿を保って妊娠しても、ワクチンを投与してウィルスの影響を
抑えない限り、どの道、出産する時、死んでしまうようです!」
「クソっ!ひどい話だぜ!」
やがて急速に成長した成体プラントデッドは
目の前にいるリー・マーラと向き合った。
成体プラントデッドは無数の牙を持つ、真っ赤なつぼみをバカッと開いた。
そして巨大な真っ赤な4枚の花弁の中央から緑色の
無数のイバラの棘のついた細長い舌を高速で伸ばした。
リーは素早く身体を右側に傾けて回避した。
同時に高速で伸びてきた緑色の無数のイバラの棘が
リーの白い肌の右頬をスパっと切り裂いた。
リーの白い肌の頬の傷口から血が流れた。
それでもリーは顔色を変えず、また無線機でブレスと話し続けていた。
「それで射殺しますか?」
「ダメだ!ダニア博士からヘレンから生まれた胎児は必ず
生きたまま捕獲しないと!」
「ええ、でも!すくすくと成長して強くなってしまったんじゃ……」
「方法はある!このBOW(生物兵器)の特性や能力、
商品としての価値を審査するテスト中に不足に事態に備えて
幾つかコールドスリープ(冷凍冬眠)カプセルが出せるようになっている!
ロックは俺が外してやる!何とかしてそいつを中にぶち込め!
その為にはパネルを操作するんだ!」
「了解!実行を!」
成体プラントデッドはリーに近づくと真っ赤に輝く
鋭利な鈎爪で胸部部を切り裂こうとした。
だがリーは後退し、それを回避した。
その時、不意にガタンという物音がした。
反射的にリーは物音がした方の床を見た。
すると四角いダクト方一人の白衣を着た
若い女性の研究員が顔を覗かせていた。
その白衣を着た若い女性の研究員は胸元まで伸びた
金髪に先の部分がカールしていた。
更にきりっとした茶色の細長い眉毛に榛色の美しい宝石のような瞳。
やや細長い輪郭にまだ少し幼さが残る愛らしい顔立ちをしていた。
そして何も知らないらしく彼女は安心しきった表情で
無線を片手に誰かと連絡をしていた。
誰と連絡をしているのだろう?リー・マーラはいぶかしんだ。
 
(第3章に続く)