(第4章)Electricity in the body!!

(第4章)Electricity in the body!!
 
リー・マーラはBOW(生物兵器)及びウィルス兵器開発中央実験室内で
幾つかのコールドスリープ(冷凍冬眠)カプセル起動させ、成体プラントデッドが
ダクトを通ってここへ戻ってくるのを今か今か今かと待ち構えた。
その時、またリーの無線機にブレス保安部長から連絡が来た。
「こちら!ブレスだ!実はあのミラーナについて調べておいた。
どうも彼女は反メディア団体ケリヴァーのメンバーで社員とヘレンと共謀して
HCFのBOW(生物兵器)及びウィルス兵器研究開開発資金を反メディア団体
ケリヴァーのメンバーの活動資金として着服・横領していたらしい。
それがダニアにバレてメンバーだった社員は『R型暴走事件』
があったあの洋館から回収された突然変異プラントデッドの餌か繁殖の為に
人体実験として利用されたらしい。ヘレンはすでに知っているな。
つまりだな実験室の中に一人ずつ社員が閉じ込められて。』
「成程、これである程度の生態は把握できたと」
「そういうこった!ミラーナも多分!いい機会だから利用されたんだ!」
リーとブレスが無線で会話をしている途中、突然、実験室内の
あのミラーナが逃げ込んだダクトから大きな音が聞こえた。
「来たわ!話はまた後で!」
「ああ!分かった!」
ブレスの返事の後にリーは急いで無線を切り、身構えた。
やがて「ピイイイイン!」と甲高い鳴き声を上げ、成体プラントデッドは
ダクトから這い上がり、ゆっくりと立ち上がった。
続けて再び成体プラントデッドはバカっと真っ赤に輝くつぼみを開いた。
そして巨大な真っ赤な4枚の花弁の中央から緑色の
無数のイバラの棘の付いた細長い舌を大きく真上に振り上げた。
同時にリーは横跳びで回避した。
振り下ろされた緑色のイバラを棘が付いた細長い舌はバチバチ
火花を散らし、鉄の床を削った。
続けて成体プラントデッドはまた緑色の無数のイバラの棘に覆われた
細長い舌を思いっきり右に振リ回したので素早くリーはしゃがんだ。
成体プラントデッドの緑色の無数のイバラの棘に覆われた細長い舌は
リーの頭上をかすめ、茶髪を2.3本切った。
リーは目の前にあるコールドスリープ(冷凍冬眠)カプセルを見据えた。
成体プラントデッドは緑色の木の幹に似た太い触手状の右腕を振り上げ、
真っ赤に輝く鋭利な鉤爪をリーの右肩に向かって振り下ろした。
グシャッ!プシュウウッ!成体プラントデッドが振り下ろした真っ赤に輝く
鋭利な鉤爪はリーの緑色の服を切り裂き、白い肌を切り裂き、
少量の血が噴水のように噴出した。リーは僅かに痛みで顔をしかめた。
真っ赤に輝く鋭利な鉤爪は更に深く右肩の皮膚に食い込み
さらに多くの血が噴き出した。
しかしリーはそれでもまた僅かに顔を歪めた。
だが構わずリーは右腕を振り上げ、右拳で成体プラントデッドの
無数の牙を持つ真っ赤なつぼみの右頬を力強く殴りつけた。
続けてリーはさらに右拳で成体プラントデッドの無数の牙を持つ
真っ赤なつぼみの右頬を無言で容赦無く何度も殴り続けた。
しかし成体プラントデッドはバランスを崩さなかった。
更にリーは正面に向かって拳を突き出した。
だが意外にも成体プラントデッドは大きく右側に無数の牙を持つ
真っ赤に輝くつぼみの頭部の付いた首を傾け、回避した。
それからまた成体プラントデッドはリーと正面に向き合い、
今度はゆっくりと無数の牙を内側から剝き出し、大きく開いた。
そして4対の花弁の中央の口内の奥で無数のイバラの棘に覆われた
細長い舌の棘だらけの鋭利な先端が蠢いていた。
リーは「くっ!」と声を上げた。
すかさずリーはお腹にシイナの子供がいる事を心配し、
あの特殊能力を使用するのをためらった。
しかしその間にも成体プラントデッドは4対の花弁の
中央から無数のイバラの棘に覆われた細長い舌を伸ばし、
攻撃しようとゆっくりと口内の奥からリーの顔面に迫っていた。
リーはお腹の中のシイナの赤ちゃんが子宮内の羊水で
守られている事を祈りつつもこの特殊能力に賭けた。
リーは静かに英語でこう言った。
Electricity in the body!!」
次の瞬間、リーの全身の細胞が真っ赤に輝いた。
同時にバリバリとすさまじい弾けるような音が鳴り続けた。
そしてリーの身体から真っ赤に輝く凄まじい電撃が放たれた。
放たれた真っ赤な凄まじい電気はリーの両肩の深々と食い込んでいる
真っ赤に輝くかぎ爪を通って成体プラントデッドの
緑色の全身の植物細胞を感電させた。
やがて成体プラントデッドは真っ赤に輝く電撃に苦しみ、左右に自分の体を揺らした。
「ピイイイイイイイイイッ!」と甲高い悲鳴を上げた。
成体プラントデッドは全身を激しく痙攣させた。
やがて全身からわずかに黒い煙が吹いた。
リーは口を堅く閉じ、歯を食いしばり、全身の力が抜けて倒れてしまいそうになる
身体を両足を踏ん張り、しっかり支えた。
間も無くして成体プラントデッドはとうとうバランスを崩し、大きく後退した。
リーはその隙を決して逃さず、右足を振り上げ、そのまま正面から
成体プラントデッドの無数の蔦が複雑に絡み合った胸部にキックを炸裂させた。
「ピイイイイッ!」と鳴き、成体プラントデッドは吹き飛ばされた。
吹っ飛んだ成体プラントデッドは「ドオオオオン!」と正面から
コールドスリープ(冷凍冬眠)カプセルの内側の強化ガラスに背中を叩きつけられた。
カプセルの蓋は自動で閉じた。リーはすぐさまコールドスリープカプセル
(冷凍冬眠)カプセルの横の起動スイッチを押した。
やがてビーッとブザー音が鳴り、プシューとコールドスリープ
(冷凍冬眠)カプセル内に大量の冷凍ガスが噴き出された。
やがて成体プラントデッドはコールドスリープ(冷凍冬眠)カプセル内で
0度以下まで体温が急激に下がり、成体プラントデッドはようやく
生命活動を停止させ、休眠した。
リーはようやく鉄の床にドンと尻もちをついた。
それからすぐにリーは自分の脳の一部に移植された軍用AI(人工知能
の特殊な検査プログラムで子宮内の胎児を分析した。
結果、自分の子宮内のシイナの胎児は幸いにも健康そのものだった。
どうやら子宮の壁と羊水が体内で発生した強力な電撃を通さない
絶縁体の役割をしている事が判明した。
リーはそれを知り、ほっと一安心した。
間も無くして短い黒い髪に榛色の瞳に体格のようタフガイな男と数人の若い男女を
引きつれてBOW(生物兵器)及びウィルス兵器中央実験室の分厚いドアが
開いたと同時にマシンガンやスタンバトンを持って次々と突入して来た。
「ブレス!保安部よ!よっ!よかったです……」
そう言うとリーは危うくまた意識を失いかけた。
慌ててブレスは駆け付けた。
「おい!しっかりしろ!もう大丈夫だ!」
続けてまたBOW(生物兵器)及びウィルス兵器研究開発中央実験所
の分厚い扉を開け、そこに東洋系の女が駆け付けた。
その時も真紅のタイトなワンピースを着ていた。
彼女の親友であり、先輩のエイダ・ウォンだった。
「リー!リー!しっかりして!」
エイダは大慌てでリーの元に駆け付けると必死に呼びかけた。
するとリーは微かに笑い答えた。
「ええ、問題ないわ!子供は無事!」
エイダはふうーと息を吐き、胸を撫で下ろした。
それからまた保安部の隊員に続いて回収チームが到着した。
そしてあのミラーナが現れた分厚い鉄の床の四角いダクトから
緑色の巨大なツルに覆われた球体、つまり卵が球体のコールドスリープ
(冷凍冬眠)カプセルの中に入れ、クレーンで引き上げられていた。
そう、あれはダニアに騙されて成体プラントデッドに襲われた女性社員の
ミラーナの成れの果てだとすぐにリーもエイダも分かった。
2人はそれぞれ黙ってみつめ、残念な表情を浮かべた。
 
(終章に続く)