バイオハザードブラッディローズ ATTRACTED HIRO アトラクティド ヒーロ。

バイオハザードブラッディローズ
 
ATTRACTED HIRO アトラクティド ヒーロ。
(第1章)
 
私の名前はリー・マーラ。HCF所属の優秀な産業スパイです。
実は今、丁度、昼寝をしていてHCFが管理運営している
セヴァストポリ極秘研究所の自分の自室のベッドの上から目覚めた所です。
あの『R型』暴走事件が起こった洋館から無事、
全ての任務を終えて帰還しました。
今頃、反ディア団体ケリヴァーのメンバー達はあの
『R型』暴走による破滅的なバイオハザード(生物災害)
の発生と言う未曽有の悲劇に巻き込まれ、
死ぬ者と生きる者が現われている事でしょう。
そしてさっきの夢から私は『R型』の思考を読み取ることに成功。
『R型』は全ての世界の大人を敵に回し、世界を破壊しようとしている。
そう、たった一人の独善的で自己中心的な思考しか
出来ぬ愚かな男の間違いのせいで。
リーは『R型』の夢から目覚め、
そう考えるとベッドからゆっくりと上半身を起こした。
その時、ふと自分の机の上に私物が置いてあるのに気付いた。
リーは無造作にその自分の私物に視線を向けた。
ひとつ目の私物は数年前に自分が入社したHCF
(ハイブ・キャプチャー・フォース)
社のパンフレットだった。パンフレットにはこう書かれていた。
「HCF社へ入社おめでとうございます!!
我が製薬会社はウィルス兵器やBOW(生物兵器
の製造と運用を行う闇市場(ブラックマーケット)
御用達の企業でございます!
非人道的な人体実験の管理と運用、
我が社の産業スパイの育成と他秘密組織の
技術提供を行い、積極的に新型のBOW(生物兵器
の製造を行っています!」
もうひとつの私物はグローバル・メディア企業
についての独自に調査した資料だった。
「この企業の表向きは最新のパソコンのOSやウィルスワクチンソフト、
フロッピーディスク、ゲーム機種、
スマートフォン、携帯等のメディア機器。
テレビやDVD、ブルーレイ、3Dプリンター、コピー機等の日用品。
CTスキャンやエコー(超音波)機等の医療器具等。
ありとあらゆるメディア用品を製造販売している。しかし裏向きでは
密かにHCFや政府、CIA(アメリカ中央情報局)と協力して
軍用AI(人工知能)の研究開発や人間達の意識や思考を統合させる事で
多様な機能を持つ新たなAI(人工知能)を開発しているようだ。
多数の人間の思考と意識レベルのデータを集める為、
米政府も密かに協力している。
主な協力者はCIA(アメリカ中央情報局)の高官の
日本人の男と米民主党下院多数党内幹事の男で多額の資金が
グローバル・メディア企業に提供されている。
故に米政府や企業、CIAにとって
反メディア団体ケリヴァーは邪魔な存在だった。
その団体を『R型』を使用したバイオテロ
逆に利用し、暴走事故を装って壊滅させた。」
リーがそこまで自分が調べた資料を読んでいた時、急にまるで
誰かが電気のスイッチを切ったかのように目の前が真っ暗になった。
続けてウィーンウィーンウィーンウィーンウィーンと
警報器の警告音が鳴り続けた。
とにかく警告音が騒がしいので何事か
確かめようと視線を床に向け、ベッドから降りた。
すると部屋の隅の机に置いてあったテレビ電話が鳴った。
リーはやれやれと首を左右に振り、テレビ電話のスイッチを押した。
間もなくして画面にHCFのBOW(生物兵器)研究開発主任の
ダ二ア・カルコザの顔がアップで映し出された。
「こちら!ダ二アよ!あの出来損無いの私のもう一人のクローンが
あの突然変異プラントデッドの胎児をお腹に宿したまま
5人の研究員を殺害後に逃亡したわ!現在!居住区画!
つまり貴方のいる区画を逃亡中よ!危険なら逃げて!
いや!まって!可能なら捕まえて!もしも出産が始まったら!
胎児を回収して用済みの私のクローンを殺して!いい?」
「了解しました!直ちに準備します!」
リー・マーラはベッドから起き上がった。
資料とパンフレットを読み終えたリーは
素早く防弾チョッキとサバイバルナイフに
ハンドガンをを近くの棚から取り出して準備をした。
そして自分の部屋のドアをパスワードでロックを解除して開け、外へ出た。
外の住居区画内は薄暗く人の気配がまるで無かった。
リーは薄暗い入り組んだ廊下を慎重に進んだ。
その時、天井のダクトから音がした。
ガタン!ゴトン!ゴトン!ガタン!と。
リーは素早くハンドガンの銃口を天井に向けた。
間も無くして天井のダクトの物音は止んだ。
リーは慎重に物音が止んだダクトの近くの
通気口にハンドガンを向けながら接近した。
その時、いきなり持っていたリーの無線機が
何度も鳴ったので直ぐに無線に出た。
「こちらHCF保安部長ブレス・マドセンだ!リー!
あのダ二アのクローンのヘレンが脱走した目的が判明した!
あいつは天井のダクトを通ってHCFのBOW(生物兵器
及びウィルス兵器研究開発の実験区画に向かっている!
どうやら自分のもう一人のダ二アに物扱いされた事や
自分の存在意義を否定された事による復讐の為にあの
突然変異体プラントデッドを放ってダ二アにけしかけるつもりだ!」
「成程!確かにかなり怒っていましたからね!」
リーはほとんど表情を変える事無く淡々と答えた。
「恐らく天井のダクトにいます!さっき通る音が聞えました!」
「よし!このままHCFのBOW(生物兵器)及びウィルス
兵器研究開発の実験区画へ向かってくれ!とにかくヘレンよりも先に!
そこに辿りつき!ダ二ア・カルコザ博士を保護してくれ!もちろん!
あの突然変異体プラントデッドのコールドスリープ(冷凍冬眠)カプセルの
ロック解除の方法をヘレンは知っているかも知れん!あれが解放されれば
この研究所内が巣となり!繁殖してしまう!何としても阻止するんだ!」
「了解しました!直ちに任務に移ります!」
リーは直ぐに手持ちのスマートフォンを起動させた。
そしてマップを確認するとどうやらこの居住区を出て、
幾つかの細い通路を通った先にあるようだ。
リーは早速、居住区を進むと正面の扉で自分のIDカードを
扉に付けられた機械に照合させた。
結果、IDカードに付けられているIDと機械が照合され、
自動でプシューと空気が抜ける音と共に扉が開いた。
細長い通路に出るとマップを頼りに幾つかの
細長い通路から正しい道を選び、進んだ。
時々、天井のダクトがガタンガタンと上下に叩く音が聞えた。
恐らくヘレンが進んでいるのだろう。よほど急いでいるのか?
物音が大き過ぎて何処に行くつもりなのか
音を頼りに進めば容易に分かった。
もはやダクトに隠れている意味が無いのでは?とリーは思った。
それからリーは細長い通路を進み、ようやくHCFのBOW(生物兵器
及びウィルス兵器研究開発の実験区画に辿りついた。
再びリーは自分のIDを照合し、分厚い自動扉のロックを解除すると
プシューと空気が抜ける音と共に分厚い扉が左右に開いた。
その先で近未来的な施設で四角い部屋が多数ある大ホールになっていた。
リーはマップを頼りに大ホールを抜けて
更に奥のもう一つの大ホールに入った。
更にもう一つの大ホールから多数の廊下の一本を通り、深部へ進んだ。
そこは薄暗く静かで多数の部屋は全てロックされていた。
恐らく中にいるHCF所属の医師や看護婦、
医療関係者の研究員達を守る為であろう。
とは言えあの突然変異体プラントデッドがコールドスリープ
(冷凍冬眠)カプセルから目覚めればこの施設のロック機能が
まともに機能するかどうか疑わしかった。
リーはそう考えつつも先へ進み続けた。
やがて目の前にさっきよりも巨大な分厚い鉄の扉があった。
その扉は何百にも及ぶ分厚い板が重ねられ、厳重にロックされていた。
リーは自分のIDを照合した。
更に多分、ブレス保安官のお陰か何百もの
ロックが解除され、自動で開いた。
その先は一本道で『BOW(生物兵器)及びウィルス兵器開発中央実験所』
と言う看板が付いたぶ厚い扉があった。
既に分厚い扉のロックが解除されていたので自動で開いた。
そこは実験用の円形の広場で完成したBOW(生物兵器
の特性や能力、商品としての価値を審査する為の
テストやチェックを行う場所だ。
間も無くして天井のダクトから女が落ちて来た。
その女はどうやらヘレンのようだ。
ヘレンはダ二アのクローンだけあって特徴を似ていた。
茶色のショートヘアーに茶色の瞳、少しピンクの肌をした丸顔。
真っ黒なコートを着ていた。
「もう!逃げられませんよ!ヘレンさん!」
「勿論!逃げるつもりはないわ!まずはあたしを物扱いしたダ二アに復讐しないと!」ヘレンは大きく膨らんだ下腹部を優しく右手で撫でた。
「この子の為にも!あのクローンを殺さないと!」
続けてヘレンは黒い服のポケットから端末機を取り出した。
すかさずリーは腰のホルスターからハンドガンを取り出し、
引き金を引いた。
放たれた弾丸は見事、端末機を撃ち抜いた。
「きゃあっ!くそっ!何て事を!せっかく苦労して作ったのにっ!
あたしはIQ100なのよ!このクソ!」
「いいですか?もう!無駄です!直ぐに保安部が!
駆け付けます!あれは目覚められません!」
 
(第2章に続く)