(第44楽章)魔導ホラーの黙示録・爆発する狂気を内包する幼き魔人の少女。



(第44楽章)魔導ホラーの黙示録・爆発する狂気を内包する幼き魔人の少女。

6体目の魔導ホラーは。いや正しくは幻想郷の魔人はー。
最初はモトキもダーマも10歳未満の女の子だとは思っていた。
しかしよくよく見るとジルの娘のアリス・トリニティ・
バレンタインと同じ歳だと思った。
金髪をサイドテールにまとめ、その上からドアノブ型のナイトキャップを被っていた。
瞳は闇夜を照らすように真紅に輝いていた。
また服装は真紅を基調とした半袖の服とミニスカートだった。
ちなみにミニスカートは一枚の布を腰に巻いてクリップで留めていた。
背中からは一対の枝に七色のクリスタルが幾つも並んで
ぶら下がった歪な形をした翼を生やしていた。
やがて仲間を失い、なおも自分に従う金城慆星に抵抗する魔人ホラー達を見て
混沌とした恐怖と怒りと憎しみに満ちた魔導ホラー達は紫色の両刃の長剣を構え、
次々とその幻想郷の魔人の女の子に襲い掛かった。
しかし幻想郷の魔人の女の子は口元を緩ませた。
同時に全身から真っ赤に輝く強力な賢者の石の力と魔力の刃を放った。
そして周囲にいた多数の魔導ホラー達は賢者の石の力で軽く吹き飛ばされた。
続けて何体かの魔導ホラーの肉体は魔力の刃でズタズタに
切り刻まれてダメージを受けていた。
全身からドス黒い血を流し、怪我を負った魔導ホラー達と
ただ地面を叩きつけられただけの魔導ホラーは立ち上がった。
その幻想郷の魔人の名はフランドールと言う。
それから間も無くして魔導ホラー達は本来の目的を思い出したのだろう。
生き残った多数の魔導ホラーの内、3体が一斉にアリス、ダーマ、
モトキが見ている自分の家の大きな窓の方を見た。
3人は魔導ホラーの視線を感じ、全身が固くなった。
アリス以外、ダーマとモトキの表情は強張った。
「おいおい!ヤバくね!」
「さっきからこっちをガン見してしているんだけど……うわああっ!」
「ヤバい!ヤバい!ヤバい!アリス俺達の後ろに隠れろ!いや!それよりも!」
モトキは大慌てでアリスを抱きかかえて逃げる準備をした。
ダーマは近くに置いてあった金属バッドを掴み、両手で構えて戦闘に備えた。
「ううっ!くそっ!いざとなったら!タイキックでも食らわせてやらあっ!」
「まって!あいつら人間じゃないんでしょ?通じるの?」
モトキはアリスをしっかりと両腕でしっかりと抱えながらダーマにそう言った。
しかしダーマの顔を真っ青だったがそれでもアリスを守る為に人間の男らしく戦う
闘う為にしっかりとバッドを両手に構えながら眼鏡の奥の茶色の瞳でこちらに
突っ込んで来るであろう3体の魔導ホラーを見た。
そして3体の魔導ホラーがジルの自宅の大きな窓の近くまで急接近した。
ダーマは死ぬ覚悟を決め、腹をしっかりとくくった。
大丈夫!大丈夫!アスレチックで鍛えた体力があれば!
きっと!きっと!大丈夫!大丈夫!
ダーマの心臓は早鐘のように鳴り続けた。
フーツとゆっくりと息を吐き、気持ちを落ち着けた。
3体の魔導ホラーはアリスとダーマとモトキがいる
自宅の大きな窓のまで目前に迫った。
その時、いきなり3体の魔導ホラーはまるで
金縛りにでもあったかのように急停止した。
ぐっ!なんだ!くそっ!動けない……。
3体の魔導ホラーは動きたくても動けず必死にもがき続けるが動く事は出来なかった。
一方、3体の魔導ホラーの背後でフランドールは両手を伸ばし、
両掌に3つの大きな球体の『目』を出現させていた。
やがて幻想郷の魔人フランドールは口元を緩ませてニヤリと笑った。
そして静かな口調でこう言った。
「キュッとして……ドカアアン!」と。
同時に彼女は両手の3つの『目』を軽く握り潰した。
次の瞬間、3体の動けなくなっていた魔導ホラー肉体は
まるで風船のように膨らんだ後に破裂した。
これにより3体の魔導ホラーは何も出来ぬまま即死した。
それを見ていた他の数体の魔導ホラーは恐怖を感じた。
続けてフランドールはさらに楽しそうに笑った。
やがてそれは狂気を帯び始めた。
ただの子供の笑い声は次第にどんどんツマミを回すように大きく甲高くなって行った。
やがて狂った笑い声はけたたましくなった。
またフランドールの赤い瞳は更に真っ赤に輝き、凄まじい殺気を放ち続けた。
そしてけたたましく笑い続けた。
続けてフランドールはバッ!バッ!と左右の腕を広げた。
同時にフランドールの両掌には多数の『目』があった。
そう幻想郷の魔人フランドールの能力はー。
ありとあらゆるものを破壊する能力である。
原理的には全ての物には『目』と呼ばれる最も緊張している部分があり、
そこに力を加えると呆気なく破壊出来るのである。
幻想郷の魔人フランドールはその『目』を自分の手の中に移動させて
拳を握り締める事によって次々と魔導ホラーの肉体が風船のように
どんどん膨らみ、破裂して消滅して行った。
その度に魔導ホラー達は断末魔の絶叫を上げ続けた。
更に次々と魔導ホラーが風船のように膨らみ、破裂する度に
ドス黒いホラーの血が周囲に大量に飛び散った。
「キャハハハハハッ!もろい人形!キャハハハハハッ!」
幻想郷の魔人フランドールは高笑いしながら逃げ惑う魔導ホラーや
反撃する魔導ホラー達を片っ端からどんどん破壊して行った。
その様子をジルの自宅の大きな窓から見ていたダーマもモトキも
アリスも無言で顔を真っ青にして見ていた。
「マッ……マジかよ……」
「こわっ!いや……あの子は何であんな能力が……」
「あの子は私の……似ている……」
アリスの言葉にダーマもモトキも茫然と聞いていた。
「でもあたしにあんな能力はないと思う。でもなんと言うか……」
アリスはそこまで言うと口ごもり、黙り込んだ。
それからジルの自宅前で始まった魔人ホラーの集団『魔人保安警察MSS』
と魔導ホラーの戦闘からかなりの時間が経過した。
魔人ホラーのホワイトライダー、レッドライダートランペッター。
そして幻想郷の魔人フランドールの攻撃によっていつの間にかジルの自宅に
攻めて来た魔導ホラーの軍勢は一匹残らず殲滅させた。
周囲には魔導ホラーの悲鳴も怒号も悲しみの声も何も無くなり、
ようやく夜の静寂に包まれた。
そして周囲のコンクリートの道路にはドス黒いホラーの血溜まりと
クモの巣状にヒビが割れ、深く抉れたクレーター、水溜まりが残されていた。
またどこからか飛んできたであろう紙くずや物、ごみの類、
どこの店か分からぬ看板が看板が散乱していた。
そこにドスン!と言う大きな音と共にコンクリートの道路の上に何かが落ちた。
魔人ホラー達が見るとそこにはー。魔人ホラー・マザーハーロットがいた。
真っ赤なフードを被り、白い髑髏の顔。
真っ赤な首に真っ赤な両肩。真っ赤なドレス。
紫色の半ズボン。細長い紫色の腕抜きをしていて右手に金色の聖杯を
いつも持っていたが代わりに人間の男の生首を持っていた。
その人間の男の生首は真新しく切断された首の断面からポタポタと
どんどん垂れ続け、コンクリートの床には血溜まりが出来ていた。
そう、その人間の男の生首の正体は。
今回の魔導ホラーを全て統括している王。
でも実際は小心者で億秒で欲望剝き出しにただ偶然どこかで手に入れた
魔導ホラーの力を利用してニューヨーク市内で魔導ホラーを操って好き放題悪事を
働き、しかも調子に乗ってシモンズ家、そして
秘密組織ファミリーに牙を剥いた愚かな男、金城慆星である。
何故?彼らがこちら側(バイオ)の世界に流れ着いたのかは今だに不明だが、
恐らく時空を操るエイリスかあるいは『オロス・プロスク』の仕業かも知れない。
いずれはあくまでも憶測であり、本人が死亡してしまい。
魔導ホラーが全滅した以上真相は闇の中である。
とは言ってもリベラや燕邦は純粋な人間として生きているので
彼女達に聞けば分かるかも知れないだろう。
しかし魔人ホラーや幻想郷の魔人も魔導ホラーの殲滅と金城慆星殺害を
指示した魔王ホラー・ベルゼビュートも彼らが何処から来たのか全く興味が無かった。
全ても魔導ホラーを全滅させてボスの金城慆星の首を手に入れ、
ジルの娘のアリス・トリニティ・バレンタインとあの真魔界竜アナンタと
ジルの息子のシェーシャ・バレンタインとたまたまホームスティしていた
モトキとダーマもおまけ程度に含めて保護した。
やがて予めバベルの結界で彼女の自宅のあらゆる場所の入り口と窓を
全て封鎖しておき、魔導ホラーが侵入出来ないようにして置いたのを
ペイルライダーは思い出し、そのバベルの結界を解除しようとしたその時ー。
コツコツと足音が聞こえ、魔人ホラー達が足音のした方に目を向けると
一人の60代の男がこちらに歩いて来た。
オールバックの黒髪にキリッとした太い眉毛に強面のがっちりとした顔と
体格に黒いスーツと黄色のネクタイをしていて、両手に真っ黒な手袋を履いていた。
そして60代の男は鋭い茶色の瞳から殺気を放ち、恨みがましくこう言った。
「貴方達のせいです!貴方達のせいで従うべき者を失った!」
マザーハーロットはクカカカカ!と歯を打ち鳴らし、けたたましく笑い出した。
「面白イ男ジャ!糸ノ切レタ操リ人形ヨ!操リ人形ハ頼ル者モ指示ヲ仰グベキ者モ
失ッタ!デワ!新タナ道ヲ模索スル機会ヲ貴様二クレテヤロウ!
フランドール!コヤツハ元魔戒騎士ジャ!相手ヲシテヤレ!」
「分かりました!こんな人間の小物の為に罪の無い人間を殺し続けて
人間を魔導ホラーに変えた外道の男は直ぐに殺します。」
やがてフランドールの右の握りこぶしが青く発光した。
「貴様如きの雑魚なんか神の大剣『レーヴァティン』を使うまでもないわ!
これで十分よ!フフフフッ!」
そしてフランドールの青く輝く握り拳からパキッ!と音を立てて
刀と脇差しの中間の両刃の剣が出現した。
「神の小太刀『ウラーヌス』!」
尊師も黒いスーツの懐から真っ白な鞘を取り出した。
続けて真っ白な鞘から両刃の長剣の魔戒剣を抜いた。
魔戒剣が月光に反射してキラキラと輝いていた。
 
(第45楽章に続く)