(第45楽章)誇り高き幻想郷の魔人にして魔法少女の行進曲

(第45楽章)誇り高き幻想郷の魔人にして魔法少女の行進曲

「キャハハハハハハッ!キャハハハハハハハッ!」
フランドールは狂ったように笑い、尊師に向かって猛ダッシュを始めた。
尊師も冷静に魔戒剣を両手で構えた。
次の瞬間、フランドールは尊師の目の前で急停止した。
尊師は隙を付いてフランドールの小さな身体を切り裂こうとした。
しかしフランドールは尊師の目と鼻の先で
自らの身体をコマのように高速で回転させた。
フランドールは左右交互に身体を動かし、神の小太刀『ウラーヌス』を振り続けた。
尊師は不意を突かれたのにも関わらず冷静に魔戒剣を交互に左右に高速で振り、
神の小太刀『ウラーヌス』の両刃を魔戒剣の両刃で次々と
オレンジ色の火花を散らし、弾き返し続けた。
しかしフランドールは「アハハハハハハッ!」と笑い、
左右に身体を回転し続けながら今度は半回転しながら左腕を振り、
小さな左拳で高速で尊師の右頬と左頬を交互に殴り続けた。
尊師は左右の頬に酷い激痛を感じた。
「ぐっ!あっ!ぐおっぐっ!がっ!ぐあああっ!」
「キャハハハハハハハッ!そーれーっ!」
フランドールは最後に左腕を高速で伸ばし、左の小さな拳で
尊師の顔面を真正面から殴り続けた。
「ぐおおおおっ!」と大きな声を上げて尊師は弾き飛ばされた。
しかし尊師はコンクリートの道路を滑り続けながらも両足を踏ん張り、
バリバリと音を立ててコンクリートを削り、着地し立ち続けた。
「このおっ!子供のくせに!」
尊師は歯を食いしばり、両眼を見開いた。
続けて両手で魔戒剣を高速で左右左右に振り回した。
そして魔戒剣の両刃でフランドールの10歳未満の小さな体を切り刻もうとした。
フランドールは満面の笑みで切りかかった尊師に笑いかけた。
同時に神の小太刀『ウラーヌス』を高速で左右に振り回した。
そして神の小太刀『ウラーヌス』の両刃で全ての尊師の魔戒剣の
両刃を全てオレンジ色の火花を散らし、弾き返し続けた。
その間、フランドールは甲高くけたたましく笑い続けながらこう楽しそうに言った。
「キャハハハハハハハッ!魔戒剣で斬撃を連続で放っているだけじゃ!面白くないわ!
尊師おじさん!キャハハハハハハハッ!」
更にフランドールは尊師の魔戒騎士としての高速の斬撃を青く輝く
両刃の神の小太刀『ウラーヌス』を弾き返し続けた。
しかも右手にその神の小太刀『ウラーヌス』で尊師の高速の斬撃を防ぎつつも、
右手をギュッと握り締めると高速で再び尊師の右胸、左胸、右肩、左肩を殴り続け、
最後にアッパーで小さな拳を尊師の顎に叩きつけた。
尊師はそのまま体をくの字に曲げ、真上に吹っ飛ばされた。
「うおおおおわああああっ!」
さらに追い打ちをかけるようにフランドールは目にも止まらぬ速さで
尊師の真上に移動した後、空中で前転し、小さな赤いストライブシューズの踵を
尊師の背中に叩きつけた。尊師は背中に激痛が走った。
やがてそのまま撃ち落されるように尊師は高速でコンクリートの道路に落下した。
ズドオオオオン!と言う大きな音と共にコンクリート
道路は粉々に砕け、クレーターが出来た。
やがて尊師は両手をクレーターのコンクリートの床に付けた。
そして両膝をクレーターのコンクリートの床に付けた。
間も無くして足元をフラつかせ立ち上がった。
尊師は自分の手から魔戒剣が消えていることに気付いた。
「何っ!」と声を上げて大きく見開き、フランドールが神の小太刀『ウラーヌス』
を持っている右手と尊師の自分が持っていた魔戒剣を持っている左手を素早く見た。
「貴様!いつの間に私の魔戒剣をっ!!」
「フフフッ!あらあらいつの間に最近の魔戒騎士は地に堕ちたのかしら?」
魔人フランドールはせせら笑い、尊師の魔戒剣をホイッと後ろに放り投げた。
後ろに放り投げられた魔戒剣はそのままクルクルと回転し、落下し、
コンクリートの道路ドスン!と深々と突き刺さった。
すると尊師は魔人フランドールの予想に反して「へっ!」と笑って見せた。
それを見た魔人フランドールは苛立ち、こう言った。
「何がおかしいの?」
すると尊師は魔人フランドールを小馬鹿にしたように笑い、こう返した。
「フフッ!私はもう魔戒騎士ではありませんよ!
ましてや無能な魔戒騎士でもありません!私は尊師!金城慆星様に
従える忠実なる最強の魔導ホラー!貴方如きのお子様。
ましてや我々よりも下等な陰我ホラー如きに私の意志は揺るぎません!
そして私は金城様が貴方に殺される前に私に命令してくれました!
それは私が金城様の意志を継ぎ必ずやこちら側(バイオ)の世界を支配すると!
まずは貴方を喰らい!強大な力を貰う!
そして魔王ホラー・ベルゼビュートの首は必ず頂くっ!」
「人形遊び!つまらない!つまらない男!」
魔人フランドールは残念な表情でそう呟いた。
続けてけたたましく笑い始めた。
「人形!貴方人形だから!遊んでもう壊してやるううっ!」
魔人フランドールはらんらんと輝く真っ赤な瞳から強烈な殺気を放出した。
「無駄ですよ!貴方は私を本気にしましたのだから!」
尊師は余裕の笑みを浮かべて両手を合わせた。
同時に全身が紫色に発光した。
続けて尊師は魔導ホラーに変身した。
魔導ホラーになった尊師の姿は魔戒騎士の狼か龍に似た形をしているが
非常の有機的かつ禍々しかった。
さらに彼は下腹部の一本の助骨をビリッと剥がした。
そして一本の助骨を多数の太い棘が並んだ大剣に変化させた。
「うおおおおおおおおっ!」と尊師は雄叫びを
上げて魔人フランドールに切りかかった。
多数の太い棘が並んだ大剣の鋭利な棘が集合した太い棘が
魔人フランドールの頭部に迫った。
しかし魔人フランドールはニヤリと笑った。
同時に再び右手がバリバリと音を立てて発光した。
続けてオレンジ色に輝く両刃の大剣が現れた。
魔人フランドールは静かに大剣の名前を言った。
「『神の大剣レーヴァティン』!!」
魔人フランドールは自分の小さな身長よりも遥かに長いオレンジ色に輝く
高熱の両刃の神の大剣レーヴァティンをいとも簡単に片手で振るった。
そしてオレンジ色に輝く高熱の両刃の大剣『レーヴァティン』は
尊師が持っている多数の太い棘が並んだ大剣に激突した。
たちまち多数の棘が並んだ大剣は真っ赤に変色し、
ジュウッ!シュウウッ!と音を立てた。
「ぐっ!くそっ!バカな!大剣が!私の大剣がっ!」
「無駄よ!燃え盛る大剣はあらゆるものを焼き払うの!」
その魔人フランドールの言葉の通り、尊師の自らの助骨で作り出した
多数の太い棘が並んだ大剣の鋭利な棘の部分は
高熱で徐々に溶け出し、液化して行った。
やがて尊師の多数の棘が並んだ大剣の表面がパリパリと音を立てた。
そして尊師自慢の多数の棘が並んだ大剣は熱膨張によりヒビが入り始めた。
「がっ!はっ!バカな!そんな筈はないっ!私は!私はっ!」
「ねーえ?あたしと貴方の違いが分かる?分かんないならさ!
尊師おじさんは私には絶対勝てないよーっ!」
「なんだと!私は最強の魔導ホラーだ!私は誰よりも強い!」
尊師は多数の太い棘が並んだ大剣の柄を両手で握り締めると渾身の力で
両腕を振り、魔人フランドールの神の大剣『レーヴァティン』を弾き返した。
魔人フランドールはバック転して空中に浮いた。
さらに追い打ちを掛けようと背中から巨大な細長い
真っ黒な鉄筋の蝙蝠の翼をバサッと広げた。
続けて尊師は両手で多数の太い棘が並んだ大剣をしっかりと構えた。
「うおおおおおおおおおおっ!」
雄叫びを上げて尊師は空中で停止して浮いている
魔人フランドールに再び切りかかった。
しかし魔人フランドールはニャリと笑った。
そして尊師が多数の太い棘が並んだ大剣を右斜め下に振り下ろした。
同時に魔人フランドールは燃え盛る神の大剣
『レーヴァティン』を左斜め上に振り上げた。
更に激突した瞬間、オレンジと黄色の火花がはじけるように闇夜に広がって行った。
そしてまた尊師と魔神フランドールの大剣同士がつばぜり合いになるかと思われた。
しかしー。魔人フランドールの燃え盛る神の大剣『レーヴァティン』
の一撃で尊師の持っている多数の太い棘が
並んだ大剣はバコオオオオン!パリイイイン!
とガラスが割れるような音を立ててその多数の棘の
並んだ大剣の刀身はあっという間に見事粉々になった。
そして割れた刀身は砕けた真っ黒な多数の大小の破片となって周囲に飛び散った。
「うっ!ぐおおおおおおおっ!バカな!こんな筈ではっ!何故だ!」
尊師は目の前の現実が受け入れられない
様子で魔人フランドールは余裕の笑みを浮かべた。
魔人フランドールは得意げに尊師にこう言った。
「言ったでしょ?貴方は私には絶対に勝てない。何故なら。
貴方は金城慆星の操り人形に無理矢理された。
故に貴方が本来持っている筈の自我も意志も無い!よく考えて見なさい!
金城慆星の手によって自らの魔戒騎士としての意志を無理矢理捻じ曲げられて
『魔導ホラー』になった貴方と自らを最強の吸血鬼スカーレット家としての
プライドと意志。そして魔王ホラー・ベルゼビュート様に自らの意志で忠誠を誓い
命令通りにジル・バレンタインの娘のアリスや息子のシェーシャや
2人の一般人を守る為に最後まで自らの意志を通して
『魔人フランドール』として戦い続けるあたし。
どちらがかが強いなどレーヴァティンの獄炎を見るよりも明らかよ!」
「ふっ!ふざけるなあああっ!元の魔戒騎士の意思やプライドなど必要ないっ!
私は魔導ホラー!私は!私わあああっ!」
尊師は激しく心を乱した。
同時にさっきまで最強と呼ばれた尊師の力はみるみると全能力が
大幅に下がって行くのを魔人フランドールは敏感に感じ取った。
一方、尊師は「自分が最強の魔導ホラーである」と言う
強いプライドと意志が粉々に打ち砕かれ、闘う気力を失いかけていた。
その代わり尊師の心には自分の意志やプライドを粉々にされた
憤怒と憎悪の炎がメラメラと燃え上がっていた。
尊師はやり場のない感情を魔人フランドールに
ぶつけるべく獣のように大きく咆哮した。
「グオオオオオオオオオオオオン!」
尊師は再び自ら打ち砕かれた最強の魔導ホラーのプライドと
意志を取り戻すべくある行動に出た。
それはー。魔人フランドールを捕食する事である。
 
(第46楽章に続く)