(第47楽章)血の薔薇の刻印と魔戒騎士と法師を糾弾する魔王

(第47楽章)血の薔薇の刻印と魔戒騎士と法師を糾弾する魔王
 
魔人フランドールはそんなアリスの純粋な
想いに心を動かされ、感動して涙を流していた。
しかし残念ながら魔人フランドールは自分とアリスの世界が違い過ぎる為に
アリスの純粋な想いに応える事は出来なかった。
代わりに魔人フランドールは意味深な言葉を残した。
「貴方のママは魂に刻まれた『血の薔薇の刻印』により永遠の生命を得るの!」
「えっ?それはどう言う意味なの?フランドールちゃん!」
「御免なさい!もう行くわ!ここに留まっている理由はもう無いわ。
だって敵対する魔導ホラー達も金城慆星を暗殺してボスの首も取った。
魔戒騎士と貴方のママは直ぐに来るわ。そうなればもう安心よ!大丈夫だから!」
それから魔人ホラー・マザーハーロット、ペイルライダー、ホワイトライダー、
レッドライダー、ブラックライダー、トランペッター、魔人フランドールは
フッと一斉に姿を消して静かにその場から去った。
それから大体、10分経過した頃。ブーンと言う車の音が聞こえた。
続けてバタン!と玄関のドアが開く音が聞こえた。
同時にジル・バレンタインと冴島鋼牙の声が聞こえた。
「アリス!ダーマ!モトキ!みんな!」
「みんな!無事か!返事してくれ!」
アリスとモトキとダーマは直ぐに全員返事した。
「大丈夫!ママ!鋼牙おじさん!」
「はい!みんな無事ですっ!」
「たっ!助かったあーっ!」
それからパタパタと鋼牙とジルは居間に入って来た。
アリスは思わずママに両腕を伸ばし抱きついた。
ジルは両腕でアリスを抱き抱えた。
やがてジルの寝室で「おぎゃあっ!おぎゃあっ!」と泣き声が聞こえた。
するとジルはアリスを下ろして寝室にダッシュした。
そう息子のまだ1歳のシェーシャがさっきの声で起きてしまったようだ。
間も無くして1歳の息子のシェーシャを両腕で抱えて「よしよし」
とあやしながら居間に入って来た。
しばらく息子のシェーシャを母親のジルがあやしている内に顔を真っ赤にして
両眼に涙を溜めて泣き叫んでいた状態も徐々に落ち着きを取り戻した。
やがて「あぶあぶ」と赤ちゃん言葉を交わして笑い始めた。
ジルは「ふーつ」と安堵の表情を浮かべた。
「とにかく無事でよかった!」
「ええ、まさか敵対している魔導ホラー達が家に押しかけてくるなんて。
しかも娘のアリスが狙われていたなんて……」
「やれやれだ。魔王ホラー・ベルゼビュート、いやジョン・C・シモンズが送った
あのMSS(魔人警察)のおかげで何事も一般人も死者が出ずに済んだが。
つくづく君達は運のよい人達だ!」
「ええ、そうね……彼らがいなかったら今頃……」
ジルと鋼牙の話にダーマとモトキは顔を真っ青にして聞いていた。
やがて鋼牙はアリスの前に屈むとある質問をした。
「魔人フランドールに会って話はしたのかい?」
アリスは元気よく頷きこう答えた。
「うん!でも!友達になってくれなくて。
あたしとあの子の賢者の石が共鳴して。潜在能力が出たの!凄いでしょ?」
「何?やはりか?確かに賢者の石は同じものだな」
鋼牙ととても難しい顔をして考え込んだ。
ジルもどうしてなのか分からず鋼牙の顔を覗き込んでいた。
そして鋼牙はある真実話すべきだと思った。しかしー。
残念ながら一般人のモトキとダーマのいるところでは話す訳にはいかなかった。
これは闇の中の光がある場所にさらしていけない黒歴史なのだから。
そこで話すのは明日の朝のどこか人気のない場所で
ジルをそこに呼び出して話すとしよう。
勿論、アリスにはダーマとモトキと遊んで貰って興味を逸らす様にしよう。
鋼牙は明日の予定と作戦を10分でまとめた。
それからジルが時計を見ると既に針は8時を指していた。
「あら!もう遅いわ!みんな寝ないと!」
「あっ!もう8時寝る時間だね!」
ジルとアリス親子の会話にダーマもモトキも同意した。もちろん鋼牙も同意した。
それからアリスとモトキは洗面台で一緒に歯磨きをして寝る準備を始めた。
そしてモトキとダーマは持ってきたパジャマを着た。
アリスもお気に入りにパジャマを着た。
アリスは「2人と一緒に寝たい」とせがんだ。
ジルは二人に「迷惑ではないのなら」と思いつつも頼んでみたら快く了承してくれた。
アリスとダーマとモトキはアリスの子供部屋で眠った。
ちなみにベッドは3人眠れるほどの大きなサイズである。
それから大体、一時間後の午後9時頃。
ジルと鋼牙はこっそりとアリスの寝室のドアを開けて中を覗いた。
ジルは思わず「フフフッ」と笑った。
鋼牙はいつもの不愛想な表情が緩み、「フッ!」と笑った。
子供部屋のアリスの四角いベッドの右側にダーマが眼鏡を木の机に置き、眠っていた。
また右側にはモトキはすやすやとつぶらな瞳と閉じ、眠っていた。
アリスはモトキとダーマの間に挟まれるように中央で目を瞑り、これ以上の。
いや、人生最大の最も貴重で大切な思い出になる事実を噛みしめるように。
とてもとても嬉しそうな幸福に満ちた表情で「すーすーすー」
と小さな寝息を立てて眠っていた。しかも口元から僅かに涎が垂れていた。
更に時々、「エヘヘへ」と笑っていた。
「あらあら」とジル。
「凄く嬉しそうだ!」と鋼牙。
「きっと!他の幼稚園のお友達も凄く羨ましがでしょう」
それから鋼牙とジルはこっそりと3人を起こさないよう。
何より人生最大の幸福を邪魔しないように音も立てずに
そっと子供部屋の入り口のドアを閉じた。
さらに3人に見つからぬようにこっそりとスマホで撮影した。
写真をジルは見ながらいつまでもニヤニヤ笑っていた。
鋼牙はそれはやや呆れ顔で見ていた。
 
秘密組織ファミリーの本部に当たるジョン・C・シモンズの大きな屋敷のとある場所。
ジョンはある女と話していた。そこは昔いわゆる地下墓地つまりカタコンベ
だったところで今は全く使われていないがそこは何世紀もの間、
ファミリーの組織を裏切った者。
あるいはファミリーやシモンズ家の意向に逆らった構成員やその家族。
更にファミリーやシモンズ家の評判を落とした者。
ファミリーやシモンズ家を攻撃を繰り返した別の組織の構成員やボス。
そして最近は秘密組織ファミリーとシモンズ家の評判を落とし、
個人のストーカー行為のせいでファミリーの組織全体と
アメリカ、中国、イドニア共和国でCウィルスによるバイオテロを起こし、
アメリカ大統領のアダム・ベンフォードとアメリカ国民をCウィルスで殺し、
国そのものを危機に追いやったあの出来損ないのディレック・C・シモンズの
遺骨もここに乱雑と放り込んである。
勿論、墓石など必要無いし、死者であっても。
もはや我々が羨むべきものでも無ければ弔う価値すらない
そんな奴らが何百、何万、何億と壁と床、天井に所狭しと並んでいるのだ。
もはや死者になっても秘密組織ファミリー・
シモンズ家アメリカ全体に利益にすらならない。
当然、今、目の前の木の机に置かれている金城慆星の生首もだ。
さっき丁度、魔人ホラー・マザーハーロットが持ってきてくれたのだ。
僕の命令通り、魔人ホラー・マザーハーロットはあの魔導ホラーのボスの生首を持ってきて他の魔導ホラー達を仲間の魔人ホラー達が一匹残らず皆殺しにした。
だからもうアメリカ政府もファミリーもシモンズ家も安全だ。
これで集中して自分自身の計画も進められる。まずはー。
唯一絶対神YHVAを抹殺し、
僕とジル・バレンタインで新宇宙を創世させる復讐計画。
我らが魔獣ホラー・メシア一族の同胞の種としての強化と同胞を増やす計画だな。
その時、ジョンの携帯の着信が鳴った。
「おっ!これはこれは元老院付きの烈花法師殿!公衆電話からわざわざ何の用かな?」
元老院の神官と見張りの魔戒法師達から報告を受けた。
あんた!こちら側(バイオ)の世界のニューヨークの人間達。
特に若い女性達のの肉体と精神を利用して何を企んでいる?」
「一応、見張りの魔戒法師の報告を聞いたならー。
その目的は何となく分かっている筈だ!」
「・・・・・・・」烈花法師はしばらく黙っていた。
「我々メシア一族は過去に君達、魔戒法師の中の反乱分子である
布道シグマとそのお仲間が建造した最強の魔導兵器『イデア』が放った
あのたった一発の光線によって我々メシア一族の同胞達は
ゲート(門)ごと多数が完全に消滅してしまった。君達の責任だ!
故に我々メシア一族は個体数が大きく減ってしまった。
そのおかげで我々メシア一族は種の限界を知った。
我々メシア一族は種としての強化と人間と我々メシア一族のホラーの混血児を
産み出し、君達人間、いや魔戒騎士と魔戒法師よりも優位な立場に立って見せる!」
「だから一年前!BSAAと元老院にTーエリクサーのワクチンを
提供して御月製薬が製造したM-BOW(魔獣生物兵器)やTーエリクサーが
ブラックマーケット(闇市場)に売り出され、御月カオリが
スペンサーの野望を受け継いで千年王国を建設する野望を
阻止する見返りにジル・バレンタインの身体をメシア一族の大君主の
あんたに提供する無茶な取引をしたのか?あんたって奴は!」
「そうだ!君達の不祥事だよ!
君達はあの最強の魔道具の『イデア』の起動を阻止出来ず。
我々魔獣ホラーの生命を脅かした!
我々は失った同胞達の個体数を今から取り戻させて貰う!
こちら側(バイオ)の世界でね!」
「確かのあのイデアの光線の一撃は無数の
ホラーをゲート(門)ごと消滅させてしまった。
確かに俺達魔戒法師の不祥事だ……それと……」
「話は以上だ!そろそろ電話は切らせて貰うよ!」
「まて!まだ話すべき事は沢山あるんだぞ!」
「悪いが僕は今、多忙だ!また暇な時に聞いてやる!
今はとてもとても多忙なんだ!色々話し合いがあるしな!」
ジョンは烈花の答えを聞く間も無く電話をあっさりと切った。
彼は広場の地下墓地(カタコンベ)を出た。
そして外の空気を吸い、大きく口を開けて背伸びした。
ジョンは黒いスーツの懐から青緑色に輝くプレステーション
ポータブル型の魔道具を取り出した。そして電源を入れた。
するとゲーム画面にこちら側(バイオ)の世界とは
全く異なる世界のニューヨークの光景が映し出された。
ジョンはゲーム画面を見ながら自分が救い出した一人の少年のブランクと
助けるべきヒロインのイヴ・ブレアとその仲間達が新たな世界を求めて
ツイスデッドと高次種族(ハイ・ワンズ)と闘い続けている
様子を見ながら密かに応援していた。
 
(第48楽章に続く)