(第11章)アキラとフラン

(第11章)アキラとフラン

 

急に大きな扉が閉まったので驚いた二人は扉の方を見た。

それからアルミケラ病院の扉を開けてみようとした。

しかしカチャッ!と音がして鍵が掛けられている事に気づいた。

どうやら何者かが外へ出してくれないらしい。

「あれ?鍵が!」とエアは不思議そうに首を傾げた。

「早速!いわゆる霊障ってやつかしらね」とエイダ。

「まさか!ちょっと!怖い話をしないで下さい!苦手なんですから!」

2人が見るとどうやらここは病院受付のようだった。

まず横に赤い机が長四角に置かれていてその先には四角いドアがあった。

またドアの横には赤文字の救急マークが付いていた。

そして反対側の奥には待ち時間用の赤い椅子が何個か並んでいた。

壁には灰皿が置かれた机に囲まれて椅子が並んでいた。

また奥は廊下になっていて。直ぐ近くの廊下の右側には木の扉があった。

エイダが上の方を見た。上の方には緑色の看板が吊るされ、白い文字で

『EXAM ROOM(診察室)』とあった。2人はドアを開けて中へ入った。

診察室は角にまたあの大きな机が置いてあった。後ボロボロの椅子も。

黒電話も置いてあった。ボロボロの分厚い本が置いてあった。

特に何もなさそうだ。他にもレントゲンをつける装置や洗面台。

あと誰もいないベッドが2台。

さらにエアとエイダは入り口と反対側の木製の扉を開けた。

そこは大量の古い薬の入った大きな棚が左右にあった。さらに先へ進むと。

木の机があり、書類棚と電気スタンドがあった。そして木製の机にはメモがあった。

エアは拾い上げてメモのタイトルを呼んだ。タイトルは。

サイレントヒルに古くから伝わる神々とその呼称と表現に関する考察』

とかなり長いタイトルだった。メモの内容は以下の通り。

「どんな宗教でも同じようにこの宗教もまた今に至るまで変化する

事無く昔の姿を留めていたと言う事は無い。特に主観が入植者の手に渡った時点で

彼らの元々の宗教であるキリスト教の影響を色濃く受け継いでいる。

例えばその教義や伝承の中に現れる神の使いにはキリスト教における天使の名前や

容姿と言った共通点・類似点が見られる。中には主神である『楽園の創造者』あるいは

『蛇と葦の王』に悪魔の名前が冠された珍しい例も見つかっている。

(このケースの場合、無論、そう呼ぶのは信者ではなく敵対者の方だろう)」

成程ね。元々はキリスト教由来の神様じゃなかった。

いや、かつては全く違う神様だったけど。

あとから入った人達の手によって神の存在は歪められたして、変えられた。

だとしたら?本来の神様はどんな神様だったのかしら?

エイダはその元々の神様を想像してみたが

皆目見当もつかず頭の中でもやもやが残った。

エアは「じゃ!この受付の木の机にあったメモは?」と言った。

エアはエイダに『太陽の聖環』と書かれたメモを見せた。

「『太陽の聖環』と呼ばれる神を表す紋章のひとつで教団の象徴として用いられる。

外側の2つの円は慈悲と再誕。内側の3つの円は現在、過去、未来を意味している。

通常は赤で描かれる。黒などの赤い以外の色で描く事もあるが青で描く事は

その意味を逆転し、神への呪いとなるので禁じられている。」

「つまり、元々はエジプトのラーやあの

『NYK48』の山田真帆さんの家に押し入った

悪質グループのジョーカーを襲撃してシェリー・バーキンと交戦したアテスカの

ケッアルカトルも太陽神だったわね。本当にアテスカ神話の??」

「調べてみるとここはネイティブアメリカンらしいですよ」

エアの情報を知り、エイダは両腕を組んだ。

「うーん、謎は深まるばかりね」

エイダとエアは薬棚が並んだ部屋『MEDICNEROOM』の茶色のドアから出た。

そこには下の方角に裏口のドアに続く廊下があって横にL字型の廊下があった。

しかしエアは急に頭部に激痛を感じた。

「うっ!わっ!なんだ???」

エアはたまらずその場で両手で頭をかけてうずくまった。

エイダは慌ててエアの隣にしゃがみ込んだ。

「ちょっと!エア!大丈夫??エア!エア!しっかりして!!」

彼女はエアに呼びかけたが何故か無反応だった。

しばらくして脳裏に前世だったアキラがあの中世の時代で魔女である魔人フランドール

と付き合った罪で火刑にされた。彼は全身で体験していた。僕は泣き叫び。

全身が火傷による激痛で長い間、苦しみ続けた。

やがて自分の体が焼け焦げた酷い匂いが鼻を付き、恐怖が襲った。

魔人フランドールの事を思い浮かべ、どうにか正気を保った。

彼女は顔をくしゃくしゃにして泣き叫んで僕の所へ行こうとしていた。

しかしお姉さまの魔神レミリア・スカーレット

彼女の小さな身体を万力で掴んで止めた。

そうだ。行かないでくれ!君まで犠牲になってしまう!

やがて僕は焼き尽くされ、炭化して死んだ。

更にアキラの火刑になって死んでしまう更に過去へと

自分の脳裏の中の意識は飛んで行った。

彼は目の前が真っ白になり、誰かの声が聞こえたのでゆっくりと瞼を開けた。

目の前にはドアノブキャップと赤いリボンに金髪のサイドテール。

真っ赤な服の女の子が真っ赤な宝石のような美しい瞳で多分。

前世の僕(アキラ)をじっと見ていた。

その女の子は間違いなく魔人フランドール・スカーレットだ。

彼女は静かに口を開いた。

「ねえ。アキラ!アキラったら!!もう!いつまで寝てんのよ!!」

やがてアキラと呼ばれた僕がゆっくりと口を開いた。

「ううっ!すまん、すまん、ちょっとうとうとしちゃってさ!」

「今日は何日か分かる?もーつ!!難しい数学をしっかりと勉強して

『将来は立派な学者になって困っている人々を助けたい!

貧しい人に学びを与えて生活を助けたい!』って言っていたのは???」

「すまない。つい難しすぎて今日はえーと!えーと!ああっ!」

僕は慌てて魔人フランドールが手作りしたノートをペラペラペラと

世話しなく見続けた。すると呆れた魔人フランドールが答えを言った。

「今日はグリゴリー暦1692年。ここはアメリカ・マサチューセッツ州

「お姉さんはまだヨーロッパに?フランスって国だっけ?」

「ええ、でも、魔法でワープして良く会っているわよ。遠くないわ」

「僕にも紹介してくれない?いつか・・・・その・・・・」

すると魔人フランドールは顔を真っ赤にした。

「ちょ!えーとそれは・・・そのまずはお姉さまと友人に相談しな・・・・。

ああっ!もう!早いのよ!まだもっと勉強して!!」

魔人フランドールの声に「はーい」と蚊の鳴く声で答えた。

しばらくエアは長い間、うずくまり、動かなかった。

あの考える像のあれに似ていた。意識は今は無い。

間も無くしてエアの前世の記憶から意識が戻った。

それからエアは戸惑うエイダに『平気だ』とだけ伝えた。

エアとエイダは気を取り直してアルミケラ病院の

斜め下の廊下の方角をまっすぐ歩いた。

続けて目の前の茶色の扉に立った。エアはそのまま木製のドアを開けた。

2人は中へ入った。そこはまた四角い部屋で中央には円型の大きな丸いテーブル。

右側には壁に大きな戸棚とL字型の木の机。

上の方には2人分の白いマグカップが吊るされていた。

そして不意に気配を感じて2人が振り向いた。

すると本棚近くの黄色のソファーにふてぶてしく寝そべっていた

金髪に耳に銀色のピアス。丸顔のキリっとした茶色の眉毛。

体形は小太りの日本人の男が茶色も瞳でエアとエイダを見た。

「おっ!人か?なんだ?あんた達もなんかから逃げて来たん??」

「違います。用事があってここへ来ただけです。あなたは?」

「俺は宮田文夫!ちょっと事故って!アミコと離れ離れに・・・」

「宮田フーズの社長の息子さんだな・・・」

エアは警戒してエイダをいつでも守れるように傍に立った。

「おいおいおい!そんな警戒すんなよ!俺は事故っただけで何にもしてねーんだぜ!

ニューヨーク市内の高速道路を走っててな。それがさー。

とんだクソ野郎でさ!俺の事を煽ってきやがった。」

「それで事故を起こしたのか?なんで警察に行かないんだ?」

エイダが机の上に置いてあったポケットテレビの

画面からニュースが流れているのが見えた。それによるとー。

「今日未明。ニューヨーク市内の高速道路でたまたま運転していた

会社員の男性の車の進行を阻み、煽り運転で停止させた後。

『殺すぞ!』と怒鳴りながら窓を開けた会社員の男を数回殴った。

宮田容疑者は会社員の男に対して車間距離を詰めたり、急減速する

煽り運転を数キロに渡って続けた。現在ニューヨーク市警は道路交通法

車間距離維持義務違反や急ブレーキ禁止の違反容疑で追跡。しかしその後、

行方をくらませて現在捜索中」との事らしい。「また宮田容疑者と同乗していた

日本人がスマートフォンで被害にあった会社員を撮影していた事が発覚した。」

宮田は舌打ちした後に「ああスイッチを切るのを忘れたっ!」とつぶやいた。

 

(第12章に続く)