(第1章)真なる創造主の若村秀和。

(第1章)真なる創造主の若村秀和。

 

若村秀和の声はのぴの脳内にこう優しく力強く勇気付けるように語り掛けていた。

「君は全ての10代から20代から30代の世界中の女性達と

神の使いである我が神の戦士ケリヴァーミショナリーのよって神託を与えられた。

お前は神と神の代理人にして最後は原天使となる若村秀和の美しき精霊は

全ての天人合一の為に必要な全ての基礎となる大金柱となり!

君は私と神と10代から20代から30代の美しい若い世界中の女性達の生命と魂を

ひとつに集め!右手に知恵の実を。左手に生命の実を君は手にするだろう!!

さあ!私のところへ!付いてくるがいい!」

それから『のぴ』は若村らしき声に導かれるようにまるで操り人形のように

メンバー達から離れて行き、白い濃霧の中に姿を消したと言う。

メンバー達は『のぴ』をあの手この手で止めようとしたが無理だったようだ。

ちゃきは沈んだ表情でしばらく閉じたシャッターを見つめ続けた。

のぴ・・・・無事でいてな・・・みんなあんたの帰りを待っとるで!!

一方、作戦成功を受けて現場に駆け付けた魔女王ホラー・ルシファーは

さっきの『ちゃき』を話を聞くなり、苦虫を噛んだ表情になった。

「若村秀和。反メディア団体ケリヴァーめ!今度は『おこぷれ』

メンバーの『のぴ』を依り代にするつもりだな。」

「依り代?なんなのそれ?」とちゃきは質問した。

魔女王ホラー・ルシファーは分かりやすくこう答えた。

「つまり君のメンバーの『のぴ』の肉体と魂は連中の計画通りに。

うまく行けばの話しだが。賢者の石と始祖ウィルスの力により。

生命の実と知恵の実は融合し、彼女の胎内に生命の胎芽を宿し。

それはセフィロト(生命の樹)となる。

彼が選んだ人間の女の魂を集めて合一し、神と若村と

反メディア団体ケリヴァーは楽園と呼ぶにふさわしい

メディアや文明社会の穢れを持たず!罪深き牢獄の時代は終わりを迎える。

全ての人々はメディアがもたらす実害による苦しみから解放される。

くだらぬ。それはメディア社会の現実から目を背けて自ら殻に引き籠るだけじゃ。

何も出来ない無力な赤ん坊でしかない。母親のお腹に帰りたがるなど。」

魔女王ホラー・ルシファーは自らのお腹を優しく抑えて撫でた。

その場にいた『おこぷれ』メンバーを始め。鬼島もアサヒナもアシュリーも

他の看護師や看護婦も引いた表情でただ押し黙っていた。

長い間、気まずい沈黙が続いた。

続けて魔女王ホラー・ルシファーはこうも付け加えた。

「メディアに支配された人間の群体の中から選ばれた人間の女と

彼らが仮に合一して単体生物全知全能の存在になったとしよう。

それで群体同士で戦争も差別も人を失う苦しみも悲しみも無くなるだろうな。

それは?果たして本当に楽園で在り。幸福と言えるのだろうか?」と。

勿論、その場にいた人々は誰一人答えられなかった。

鬼島と他の医師達はアシュリー・グラハム看護婦の指示に従って気絶している

2人の男達をとりあえず温かい毛布を被せてタンカーに乗せて全員運び出した。

ちゃきはアサヒナと駆け付けた他のメンバー達(しゅがー、りあら、ゆいにゃ)の

協力によって食糧倉庫から外へ連れ出された。

彼女は襲われた金髪の看護婦を救えなかった罪悪感と未だに失踪したままの『のぴ』

や他の日本の中学校でアキュラスと言う異形の怪物を操って暴れさせて異形の怪物の

茶色いエプロンの男(天魔ヴァルティエル)に連れ去られて失踪した佐代子(さよこ)

って女の子。もう一人は名前は忘れてしもうたがアメリカ人と日本人のハーフで

『青い瞳』の子が『静かなる丘』のモーテルに出かけたっきり、失踪してしまった。

あかん!あかん!心配で眠れへんぞ!ううっ!白い濃霧は絶対晴れる筈や!

きっと!あの10代の女の子も20代の女の子も30代の女の子も濃霧が消えて。

正気に戻ればのぴと一緒にあの金髪の看護婦さんも帰って来る筈や!

言葉が通じて唯一安心出来たあの日本人の金髪の看護婦さん。きっと!

私を怨んどるかも知れんな。くそっ!あの時助けられたら!勇気があらへんかった。」

ちゃきはさっき見た異様な光景にショックを受け、頭を両手で抱えて唸り続けた。

彼女は聖ミカエル病院の玄関前の広いフードの中にあった鉄パイプの椅子に

体育座りして外のドアのガラスから白い濃霧を見続けていた。

やがて外の白い濃霧の中からあの金髪の看護婦と女の子らしき声が聞こえた。

「恐れる事はありません!異世界の支配者の天魔ヴァルティエル様は今回は

弱い立場にある女性やいじめっ子の味方ですよ!何も心配はいりません!」

やがて白い濃霧から胸元まで伸びた艶のあるロングヘア。

眉毛は艶屋やかな前髪に隠れていた。ややつり上がった茶色の宝石のように美しい瞳。

丸っこい低い鼻。ややふっくらとした両頬は紅潮していた。そして形の整った小顔。

彼女は真っ赤な服とスカートを履いていた。佐代子(さよこ)はこう話を続けた。

「貴方は選ばれました!これ以上!男に怯えて恐怖する必要はありません!」

ちゃきは聖ミカエル病院の玄関前のガラスを見た。

すると前屈みの体勢の金髪の看護婦の姿が見えた。しかも様子がおかしい。

彼女は胸元まで伸びたウェーブのかかった長い染めた金髪。

また右側の茶色の水平のやや太く長い水平の眉毛は

長いウェーブのかかった金髪に隠れて見えないが。

右側には茶色のやや太い水平の眉毛。ぱっちりとした茶色の瞳。

丸っこい低い鼻。ピンク色の唇。ふっくらとした両頬。

細くしなやかな細長い両腕はしなやかに伸びて両手は灰色のコンクリート

床に着いていた。白い肌の臍のあるくびれの胴体を右斜めに傾けていた。

更にその彼女の姿はまるで糸の切れた操り人形のように両膝を

真横に曲げるとコンクリートの床に両脚と両足を投げ出していた。

彼女は座り込んだままちゃきの知らない白い濃霧の中で出会った

あの真っ赤に輝く節のある触手群の持ち主の正体とその異形の怪物の四つ足で歩く

超巨大な生物が自分や他の多数の逃げ遅れた

若い女性達にした行為が信じられなかった。

彼女はただ茫然とした表情で両頬と深い胸の谷間を紅潮させていた。

更に彼女は激しくハアハアと荒々しく息を吐き続けていた。

ちゃがその金髪の看護婦を見ていると既に看護婦の白い服やスカートは

多分、聖ミカエル病院の食糧倉庫から狂信者の女の子と

女性達によって連れ出された時に。もういらないだろう。

と言わんばかりに一時的に気絶している内に。

全て脱がされて何処かに捨てられたらしく張りのある

大きな丸い両胸はピンク色のブラジャーとピンク色のパンツを履いた

下着姿だった事にちゃきは気づいてしまった。

彼女は自分の名を佐代子に尋ねられたので『工藤愛美』と答えた。

佐代子は旧人類に対する敵意とも取れる怒りと憎しみの表情を一瞬だけ浮かべた。

更にすぐにとても寂しそうに悲しそうに目ま苦しく表情を変えた。

「既に貴方は旧人類の中に潜む新人類です。

つまり異端者です!いいですか?異端者の取り扱いは今も昔も変わりません!

旧人類は人間が忘れ去ってしまった『生命の輝き』を

すぐにイジメて追い詰めて自殺に追い込もうとする!!

旧人類は汚らわしい存在!途轍もなく醜い!戻ったところで!

これが解決してもですね!周りの人間達に集団で言葉や素手で暴力を振るい!

傷付けられるだけです!貴方は生きている限り!

中傷されて!辱められ!貶められ!苦しみ続ける!」

「でも・・・・私は無理矢理私を連れ去るように差し向けた貴方を信用出来ません!」

最初は迷っている素振りだったが後にはっきりと自分の意志で否定した。

「彼ら貴方の父となった異形の怪物の天魔エグリゴリは旧人類には殺せません!

何故なら『死』は『再生』の始まりに過ぎませんから。父親が誰かは・・・」

佐代子が言いかけた時、工藤は直ぐにこう即答した。

「分かっています!でも!私が現代の世界でこの子を育てますッ!」

彼女は立ち上がり、目の前にある聖ミカエル病院の玄関の扉のガラスを両手で叩いた。

「お願いします!入れて下さいッ!」と大声で言った。

ちゃきは工藤の呼びかけに素早く鉄パイプの椅子から立ち上がった。

ちゃきはさっき助けられなかった負い目からか?

一切迷う事無く扉を開けて工藤を病院内に招き入れた。

ちゃきは両腕でしっかりと病院の中に入った工藤を抱きしめると両手に涙を溜めた。

「ごめん。ごめんなー。さっきまで助けれへんでよ!!よかったわーつ!」

ちゃきの言葉に工藤も彼女の胸元に顔をうずめて泣きながらこう言った。

「いいんです!ちゃんと無事だったので!帰って来れてよかったですッ!」

聖ミカエル病院の玄関のドアの前に立っていた佐代子は悔しさから

苦々しい表情をした。そして彼女の姿は白い濃霧の中に歩き去った。

 

『静かなる丘』の教会最深部。

エアとエイダ、鳴葉、魔人フランドール、鋼牙は辿りついた。

最後の儀式が行われる場所に。

そこは裏世界だったー。

そこは最初と同じ礼拝堂だった。

周囲の壁はコンクリートの柱が幾つかあった。

しかし礼拝堂の正面左右は金網に覆われて中央の太陽の聖環が

書かれた壁の四角いブロックがあった。

また下部には礼拝祭壇があった。

また楽園の絵が飾ってあった。

左右には長椅子が一列左右にきっちりと並んでいた。

礼拝堂中央に一人の日本人男性がいた。

この事件を引き起こした元凶であり。

『静かなる丘』の一連の怪異事件を引き起こしたその男は。

黒髪のオールバックに筋肉隆々の体格をしていた。

鋼牙はその日本人の男を見ると厳しい口調でこう言った。

「若村秀和!『R型暴走事件』を起こしておきながら。

また世界を破壊して人々を危険に晒す気か?!」

すると若村と呼ばれた日本人の男は口を開いた。

「俺の考えも!俺の思想は何も間違っちゃいないんだ!!

俺の考えは常に正しいんだ!メディア社会で暮らしている!!

あんた達が間違っているんだ!俺は正しい事をしている!!」

「残念だが!俺はあんたのやり方が正しいとは思わない!」

「では?一応尋ねるがあんたの正しいやり方の楽園とはなんだ?」

その鋼牙の冷静な質問に若村は意気揚々と答えた。

「それはなー!!完全な『静かなる丘』の神を復活させた後。

俺は『静かなる丘』の神と同化し、人間を超えて神となる。

そしてメディアに支配された人々を解放させる為に。

まずは邪魔な男と子供や女は一人残らず神の力を持って肉体を消し去り!

メディアに関わり執拗に縋りつく弱気人間共は全員殺し尽くし!

その先はあのリサ・ガーランドの聖なる神を堕とし!貶める!文章は信じるな!

アレッサは人を迷わす悪魔の子だ!彼女を絶対に信じるな!

あの楽園の未来はクリーチャーを使って処刑する未来は全て偽りである。

真実はこうだ!私と神は『真なる創造主』となり!『楽園』を作る!

しかし群体ではまたメディアが生まれ、自然が汚される!

それでは同じ間違いを繰り返すだけ!個々の価値観は決められて

どんどん悪意と害悪が生まれる!メディアの世界は破壊されるべきなんだ!

人間は愚かさを忘れて同じ間違いを繰り返す!

そう、だから!俺と神が選んだ20代から30代の美しい世界中の若い女達は

メディアに汚されて悪魔の毒に侵された肉体から性的興奮の絶頂と共に解放され。

肉の器から出た生命と魂は俺と神の生命の実と知恵の身を持つ人間生命溢れる

若い女性達と合一し、永遠に神に等しき男と

女の力を持つ太陽神は全て救われるんだ!」

若村は自分のやり方でメディア社会の毒に侵された人々を救済出来ると熱心に説いた。

「何億もの人の女達は私と神と一つになり。完全な存在となるのだ!」

冴島鋼牙はそれこそが太陽神の救いの道だと説く若村に厳しい表情でこう詰問した。

「その為にアキュラスや自分そっくりの魔戒人形を作ったのか?

ついでにあのケリヴァー・ミショナリー達も全ては融合の為に!」

「そうだ!アキュラスには裏切られ!SCP財団に俺そっくりの人形も

回収されてしまった。しかし沢山の洗脳したケリヴァー・ミショナリー達がいる!

人間の若い女性達は俺そっくりの魔戒人形と裏切られたアキュラスに代わり!

ケリヴァーミショナリーと交尾した後に同化し。

最後は合一して人間は完全な存在になるんだ!計画は実行される!」

 

(第2章に続く)