2022年の新年最初。1月9日(日曜日)小説の投稿 (第29章)かえるのうた

2022年の新年最初。1月9日(日曜日)小説の投稿

(第29章)かえるのうた

 

のぴがイリスオブジェクトの真っ赤なコア(核)に侵入してから1時間後。

彼女の目の前の視界は真っ暗だった。

やがてゆっくりと瞼を開けた。

すると目の前に日本の異様な光景が広がっていた。

それは日本の2階建ての日本家屋があった。

しかもかなり豪邸らしく広かった。

またかなりの年季が入っていた。

どうやらのぴがいるのは大木と草地の中に大きな水溜まりがあった。

なにこれ?池?それとも水溜まりかしら?

のぴは不思議と首を傾げた。

既に夜遅く腕時計には『午後11時』とあった。

何が始まるの??一体?まだ何か続きがあるの?

のぴは徐々に顔が青くなった。

するとのぴの脳裏に若村の言葉が聞こえた。

行事を見ないと行けない。

行事を見ないといけない。

行事を見ないといけない。

外を見ろ!

外を見ろ!外を見ろ!

何がっても最後まで見ろ!最後まで見ろ!

外を見ろ!外を見ろ!外を見ろ!外を見ろ!外を見ろ!外を見ろ!

なに?なに?こわい。こわい。一体?何が始まるの?えっ?えっ?ちょっと!

クリス!ドラキュラ!あっ!うわあっ!ああ・・・・ああああ・・・あ・・あ・あ。

のぴは恐ろしさの余り、目をつぶろうとしたが若村の言葉を思い出して思い留まった。

声をかけるな!黙って耳を塞がず最後まで聞け!

言う通りにしろ!と声が聞こえ続けた。

そして何かを見るように強要するその若村秀和の声は耳から聞いたと言うよりも

直接、無理矢理、頭の中に語り掛けて来るように思えてのぴはゾッとした。

やがて時刻は11時・・・・。

何かが聞こえた。

のぴは何かが聞こえた方を見た。

しかも大きな水溜まりの周囲に大勢の人達がいた。

全員、不自然な程にびしょ濡れだった。

しかも大勢の人達は水溜まりの方を見ながら歌っていた。

それはのぴは黙って最後まで聞き続けた。

「かえれぬこはどこか・・・・。

かえれぬこはいけのなか・・・・。

かえれぬこはだれか・・・・・。

かえれぬこは・・・・。かえるのこはどこか・・・・。

かえるこのこはいけのそと・・・・。

かえれぬこはだれか・・・・・。

かえるのこは。」

もしかして?あたし?いや違うわ。

別の女の子の名前よ。巻き込まれている。

「かえるのこはさくや。

かえれぬこはどうしてる。

かえれぬこはどうしている。

かえれぬこはないている。」とそこでピッタリと歌が止まった。

しかも大勢の人達に混じって若村もさっきの不気味な歌を歌っていた。

やがて気が付くと水溜まりの端に若村秀和は体育座りしていた。

それからまた目の前が真っ暗闇になった。

しばらく虚空の暗黒が包みこんだ。

しばらくしてまた同じ水溜まりにのぴは立っていた。

目の前に若村秀和が立っていた。

のぴは恐怖で何も言えず反論も出来ずにただ黙って若村を見ていた。

やがてどこからかザッザッザッと砂を踏みしめて歩く音が聞こえた。

のぴは最初はアスカがガイウスの槍を持って現れたかと思った。

しかし全然違った。

多分、歌の中でさくやと呼ばれていた女の子だと思った。

さくやと言う名前の女の子は銀色のボブカットにもみあげ辺りから

三つ編みのツインテールの髪の先に緑色のリボンが付いていた。

10代の少女。青い瞳は虚ろで何処か人形のようにぎこちなくふらふら歩いていた。

彼女の正体は『天魔ゼルエル』であり。

名前は本来は『十六夜咲夜(いざよいさくや)』である。

彼女こそが『24の秘跡』の最後の生贄の『母体』だった。

しかも彼女の胎内には失われていた筈のあの虹の女神イーリスの

欠けた心の胎児が宿っていた。そして若村秀和はまた大きく息を吸い込んだ。

続けてまた大声で歌い出した。しかも内容は少し違っていた。

歌を歌い続ける若村秀和の表情は無表情だった。

「かえれぬこはどこか・・・・。

かえれぬこは池の中・・・。

かえれぬこはだれか・・・。

かえれぬこは若村。

かえるのこはどこか・・・。

かえるのこは池の外・・・。

かえれぬこはだれか・・・・。

かえれぬこはさくや・・・・。

かえるのこはどうしている。

かえれぬこは泣いている。

かえるのこはどうしている・・・・。

かえるのこは鳴いている。」

これで終わりかと思いきやまた更に同じ歌が続いた。

しかも名前の部分が変わっていた。

「かえれぬこはどこか・・・・。

かえれぬこはいけのなか・・・。

かえれぬこはだれか・・・・。

かえれぬこは若村・・・・。

かえるのこはどこか・・・。

かえるのこはいけのそと・・・・。

かえるのこはだれか・・・・。

かえるのこはのぴ・・・・

かえれぬこはどうしている・・・・。

かえれぬこはないている。

かえれぬこはないている。

かえるのこはどうしている。

かえるのこはないている。」

彼女は思わず一気に全身が激しく大きく震え上がった。

間違いなく自分の名前だった。

若村は立ち上がると十六夜咲夜の背後に回った。

続けてにっこりと笑った。

ドン!と両手で若村が背中を押すと彼女の身体はポン!と宙へ飛んだ。

そしてボチャン!と水の音がした。十六夜咲夜の身体は

胎内にいる虹の女神イーリスの胎児諸共、ため池の中に水柱を上げて沈んで行った。

若村はにっこりとまるで少年のような笑顔をした。

「君だよ!21の秘跡はこれでいいんだ・・・・」

それから若村はじりじりとのぴの方に歩いて行った。

のぴは恐怖の余り、全身が硬直してその場から動けなくなった。

ヤバいっ!あの池に突き落とされる!そうなったら・・・・!

儀式は完了してしまう!どうすれば???

「君は21番目の『知恵』とネガブドネザルの鍵を持つ者の生贄。

そしてさっき突き落としたあの子はね。20番目の『母体』はね。

十六夜咲夜虹の女神イーリスの欠けた心を持つ者の生贄。

あとは君だけさ。11番目の私『解放』の

アダムの者が生贄になれば楽園が創造できる。

いや、正確にはイリスオブジェクトのコア(核)に創造の生命が吹きこまれるのだ。」

のぴは脳裏に若村が残したメモの中に『アダムと虹の女神イーリスの融合』と言う

くだりを思い出した。恐らく虹の女神イーリスと○○〇の部分は

私の名前じゃなくてあの咲夜と言う名前の女の子だったんだ。

マズイ!なんとかしないと!

ネガブドネザルの鍵を私が起動したまま生贄になり。

そしてあいつは私を利用して取り込み。捨てられて!!

あの咲夜と若村が融合する。

嫌だっ!それじゃいやだっ!!何を言っているのだろう?

でも!こんなんじゃ!駄目!いけないッ!

なんとかしないと!なんとかしないと!!

それから若村秀和はあっさりとのぴの目の前に接近した。

そして一切の迷いも無く両手を素早く伸ばした。

続けて彼は両肩を掴むと身体を左回転させたのちに背中をドン!と突き飛ばした。

ボチョン!と音を立てて水柱を上げて溜め池のそこにゆっくりと沈んで行った。

なんとか水の底から這い上がろうとしたがどうしても身体が動かなかった。

『知恵』の私と『母体』の咲夜って女の子が生贄。

あっ!御免!クリス!ドラキュラ伯爵!

おこぷれのみんな。私駄目だった。

御免なさい!御免なさい!んっ?これは?この力は?

あっ!あっ!思い出した。

私はここで生贄として終わっちゃ駄目なんだ!

なんとかしないと!あの!アスカがガイウスの槍を持ってくるまで私が頑張らなきゃ!

動け!動け!今動かないとみんな死んじゃう!みんなの世界が無くなっちゃう!

お願い!うっ!ぐっあっ!ごほっ!ごほっ!

動・・・・いて意識が・・・ダ・・・メ・・。

のぴは徐々に意識が薄れて行き、目の前がぼやけていった。

次第に暗闇が・・・。

しかし彼女は意を決して生きる事を諦めなかった。

のぴは瞼を閉じてもう一度開いた。

「こんちくしょう!私は『知恵』の生贄じゃないっ!

ただの人間だああっ!こんちくしょおおおおっ!」

彼女は気合を入れ直し、渾身の限り、腹の底から力強い声で叫んだ。

次の瞬間にのぴの胸部が一気に暑くなるのを感じた。

あついっ!これは?ネガブドネザルの鍵???反応している???

続けて胸部からオレンジ色の光の壁のようなものが展開されて全身を包んだ。

のぴの身体は急に軽くなった。同時に『メルキセデク』に変身した。

若村を探して『メルキセデク』となった

のぴは溜め池の中をまるで潜水艦の様に進んだ。

「くそっ!あいつはどこだ?とっちめてやる!!」

と言いながら下へ下へと潜り続けた。

のぴはどんどん下へ下へと潜って行く内にイリスオブジェクトのコア(核)

に向かって泳いでいる若村を発見した。

「若村ッ!やらせんぞ!待てーコラー!」大声で怒鳴り散らしながら

さらに力強く泳ぎ若村に近づいて行った。


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やがてのぴの目の前に超巨大な真っ赤に輝くコア(核)が現れた。

若村はその真っ赤に輝くコア(核)の上に着地した。

のぴも真っ赤に輝くコア(核)の上に着地した。

一方、先に沈んで行った十六夜咲夜は虹色の女神イーリスの欠けた

心の胎児を胎内に抱えたまま真っ赤に輝くコア(核)に到達していた。

咲夜は「みんなが呼んでいる」と独り言のようにつぶやいた。

彼女の身体はそのままコア(核)の穴の中に一気に吸い込まれるように。

身体を完全に取り込まれて姿を消していた。

あとはのぴと若村が真っ赤に輝くコア(核)に

取り込まれて内部でアダムである若村と虹の女神イーリスの

欠けた心を持つ咲夜が融合し。

続けて『虚無』『暗黒』『憂鬱』『絶望』『誘惑』。

『起源』『監視』『混沌』『十の心臓』の生贄の魂全てと。

彼によって無作為に選ばれた美しい若い女性の魂と

ケリヴァー同志達の男女の全ての大量の魂と融合して

『ネガブドネザルの鍵』をのぴに起動させて強大な神殺しの力を宿らせて

出来損ないの人類は群体から神殺しの強大な力を持つひとつの超個体。

人工的な単体生命体に進化するだけである。

あともう少しだ。

「私と下の大勢の魂と共に結び付こう。そしてひとつになるんだ。」

「嫌だ!気持ち悪い!私は個人でいい!自我があった方がいい!」

はっきりとした口調で若村の誘惑を拒絶した。

「拒んでも無理なんだよ!もう二度と単体生命体には戻れないんだよ!」

「嘘ね!ただ魂がひとつになっているだけ。私が願えば元通りに出来る!」

「・・・・・・・・・」とのぴの自信満々な返答に若村は沈黙した。

「嘘だ!嘘をつくな!」と若村はヒステリックに叫び始めた。

のぴは冷静に瞼を閉じ、首を左右に振るとこう話を続けた。

「嘘じゃないわ。私の力なら止めさせられる!もう一度人生をやり直させられる!」

「いやだっ!私はこの方がいいのだあっ!このコア(核)の中の方がいいんだ!」

「駄目よ!自分の殻の閉じこもっていちゃ!人として駄目なのよ!」

「私は人を捨てて神になり!楽園を創造するんだ!みんな幸せなんだよ!

苦しみや悲しみも寂しさも誰かにいじめられる事も虐待される事も無いんだよ!」

「ふざけんなよ!苦しみも悲しみも寂しさも全部なあ!

私達人間が生きた証なんだよ!!

それを奪い取る権利なんかあんたには無いよ!

あんたはただひたすら現実(リアル)

から逃げているだけだッ!人が怖くて!

死ぬのも怖い!

他人に暴言を吐かれて力を振るわれるのが怖い!

大人が怖い!

ただそれだけだよ!

あんたはただの引きこもりだ!

自分の殻に閉じこもって幸せになれると思い込んでいるだけだっ!」

のぴの言葉は若村の胸にまるでガラスの破片のように何度も突き刺さった。

「うわあああっ!」と叫び、若村はその場で頭を抱えてしゃがみこんだ。

どうやら彼の自我がこれ以上持たないようだった。

更に続けてのぴはこう言った。
「貴方は他人を恐怖する余り。

自分の存在を認めてくれそうな仲間と女性と結びつこうとしている。

ただ怖くて顔見知りの自分を守ってくれそうな人達と一緒にいたいだけ。

潜在的な他人の恐怖が今まで貴方が

犯してきた大きな罪を重ねた根本的な原因なのよ。」

若村はまた体育座りとなりブツブツとしゃべり続けた。

「俺は両親やあの母親代わりの女に殴られて蹴られたんだ!!
好きだったテレビもあの女が俺の目の前でバッドで叩き壊して破壊したんだ!!

好きな番組だったんだよ!それをあいつが!

あの女が!許せねえ!許せねええっ!!

俺は同じ事を『R型』の前でした。

やっぱり自分と同じだった。暴走して仲間は死んだ!!

もう俺には何も出来やしないんだよ!こうするしか!俺は止められないんだ!

みんな!みんな!俺を!俺の知らないい所で笑っているんだ!

俺と同じように他人の作品のキャラクターを否定した。やっぱり同じだった。

でも俺すら無視する奴もいた!なんでだ?何で無視するんだ!!

クソっ!クソっ!あいつも!あいつらも俺が描いたロボットアニメの

エヴァ初号機の絵を馬鹿にしたんだ!!クソっ!!この!あいつらは!

『命の無い物を絵にしても価値の無いもの』とか。

『テレビやゲームは子供に悪影響』だとか言う

『希望の家』の俺を虐待した『教団』の大人共!社会に出た時の周りの大人!

あいつら!!クソっ!クソっ!許せねええっ!

反省すらしていねえのではないか??俺はッ!」

「きっともしかしたら本当は心の底から反省しているかも知れない。

本当に心から申し訳無いって思っていたら?貴方は許せれると思う??

教えて若村さんの心の奥底から・・・・・・・・・・・・・・・・。」

「許せないさ!許せないんだよ!もう人々が俺を拒絶していて!!

復讐してやるんだ!ここで!ここでなら!果たせるんだ!

もう俺には現実が良く分からなくなったがな。」

若村の返答に対してのぴは静かにこう答えた。

「他人と現実(リアル)と自分の真実との溝が正確に把握できないのね」

「夢の中でした幸せを見いだせないのね。」

「そうだ・・・俺は!俺はッ!」と若村は苦々しい表情になった。

のぴはそんな若村にこう話を続けた。

「結局は都合の良い作り事で現実(リアル)に復讐していたのね」

「虚構に逃げて真実を誤魔化していたのね。」とのぴ。

「じゃ!俺が夢を見ちゃいけないのか?」

「それは夢じゃないわ。」とのぴは首を左右に振り、否定した。

続けてのぴはこう言葉を続けた。

「それは現実の続きなの」と。

若村は悲しそうな表情で「俺の・・・俺の夢は・・・どこだ?」とつぶやいた。

「それは夢の終わりよ。若村さん。」とのぴは静かに口を開いて言った。

若村はのぴが何を伝えたいのか知り、絶望した。そう知ってしまったのだ。

つまり今まで理想の楽園としていたものが

『偽の夢』だと気づいてしまった結果だった。

そして自分がそれを断ち切らない限り、『現実』へ続く『真実』には辿り付けないと。

自分の夢は『楽園』は単なる現実逃避する為の手段に過ぎなかったのか??

私の楽園は現実逃避の手段でしかないと??そんなの認めないッ!認めるものかッ!

「認めるべきよ!!貴方は現実を忘れる為だけに

『楽園』を創造しようとしているなら!

貴方はただ現実世界(こちら側・バイオの世界)を拒絶し続けているだけなのよ。

「貴方の自我はほとんど喪失しかけているわ!もう後戻り出来なくなるわよ!」

「もはや!他人の関りなど必要無いッ!選ばれた者と一つとなり!神となる!

君も同じ運命なんだ!」と若村は立ち上がり、両手をのぴに向けて接近した。

しかしのぴは拒むように後退した。

そしてキッパリとした口調で断り、こう宣言した。

大きな声で。

「断るわ!悪いけど!私はおこさまぷれーとやファンやリスナーの人達。

これから入ってくる新メンバーやツイッターやユーチューブの

チャンネル登録者さん達の大勢の人々の関りを拒否して!

断ち切ってまで!『神様』と『黙示録』と『楽園』。

『世界の終末』を単なる現実の代用品のように扱うような生き方は

自分が現実(リアル)に求めている生き方じゃないッ!」と。

若村は激しく動揺した。

のぴにはっきりと拒絶されどうやらかなり精神的に戸惑い、混乱している様子だった。

「なぜ・・・だ?ひとつになる事が・・・こんなに安心できるのに・・・・。」

若村は苦悩した苦しい表情を見せた。

 

(第30章に続く)