(第31章)終わらない一日

(第31章)終わらない一日

 

惣流・アスカ・ラングレは自らの強い意志で解放させた『未完成の量産型イリス』

の強大な力を利用して自らの全身の表面に同質のATフィールドを展開させた。

『未完成の量産型イリス』の霊体を増幅させて自己のATフィールドを強化させた。

徐々に増幅させたATフィールドで確実にゆっくりと花弁状に広がった銀色の塔の

先端から黒い穴にまるで蓋するように展開させた相手のATフィールドを

中和させて行った。やがて大きくATフィールド同士は干渉し合い。

中和されてパキパキと音を立てて穴が広がって行った。

オレンジ色の分厚い壁のATフィールドに開いた穴はどんどん底

向かって深くなって行った。数十分後。アスカの悪戦苦闘の末に。

とうとう銀色の塔の穴を塞いでいたATフィールドをドリルのように穴を開け。

深く抉り出し、一気に黒い穴の中の

『柳星張の宇宙』に続くゲート(門)の中に侵入した。

そして光速のスピードであっと言う間に消え去った。

「ほおー大した子じゃな!」と阿門法師は感心した。

「少女とは言えここまでの事が出来るとはなかなかやるな」と大河。

ピアーズとスティーブンそしてハガネの騎士達はただ圧倒されて茫然としていた。

彼らはただ凄いとしか思う事が出来なかった。

 

イリスオブジェクトの本体が安置されている『柳星張の宇宙』の

ドラキュラ伯爵は虚空の床にうつ伏せに伏せたままこれはまた呑気に

自ら新しく買ったばかりであろうピカピカのスマートフォンを取り出して。

あろう事かパシャッ!パシャツ!と写真を撮影し始めると

自分のアカウントのツイッターにその写真をアップして。

指でメッセージまで書き始めた。

「おい!こんな非常事態になにやってんだ??バカかあんた?」

クリスは思わず怒鳴ってしまった。

「慌てたってあれが来なきゃ仕方が無いさ。俺達の役目は終わったよ。ほぼね」

「ああ、そうかい!のぴと言う一般女性を

あんな危険人物のいるこんな場所に連れてか?」

「あくまでも私達は『のぴ』をトラブルから助けてここに導く事だ」

流石にドラキュラ伯爵の答えにクリスは呆れながらもドラキュラ伯爵の

スマートフォンツイッターの画面を覗き込んだ。

ツイッター画面にはさっき撮影した『柳星張の宇宙』の風景と儀式の中の

イリスオブジェクトの写真が8枚ほど画像に載せられていた。

さらに下のメッセージには「君達の身に起こった事について」と題されていた。

「恐らくこのメッセージを見ている頃には元の日常の世界に戻っているだろう。

君達のスマートフォンは防水だろうから壊れる事はあるまい。見たら驚くだろう。

ついでに特撮かアニメかCGだと思ってみんな信じないかバカにするだろう。

この一連の怪異事件の元凶は反メディア団体ケリヴァーの男だが。

彼はあくまでも小さなきっかけのトリガー(引き金)のひとつに過ぎない。

全ての根本的な原因は全て大勢の人間達にある。

君達はキリスト教新興宗教が言う新約聖書の最後の

ヨハネの黙示録』を一部の信者達のように自ら望んで現実(リアル)

世界からの解放と滅びを潜在的に望んでいる。

そして・・・『自ら望む滅亡』の想いと深く望む精神力が

『静かなる丘・サイレントヒル』の異世界を度々呼び込んでいた。

そして今日・・・それがピークに達した。」と文章は途切れた。

クリスは呑気にツイッターに文章を書いているのにとうとう我慢が出来なくなった。

クリスは注意してやろうとドラキュラ伯爵を見た。しかしー。

ドラキュラ伯爵からはあの今までのおちゃらけ

呑気なムードが跡形もなく消えていた。

彼の表情はさっきまでとは別人のように真剣かつ

真摯な目でスマホ画面を見つめて文章を書き続けた。

クリスはドラキュラ伯爵が悪ふざけで描いて

投稿している訳では無いと言うのを直ぐに悟った。

彼はそれ以上の何も言わず注意もしなかった。

彼は真剣に何かを不特定多数の人間に伝えようとしている。一体?何を??

クリスはとうとう好奇心抑えられなくなり、

ドラキュラ伯爵のスマートフォンを覗いた。

ドラキュラ伯爵のツイッター画面にはさっき撮影した『柳星張の宇宙』と

『イリスオブジェクト』の写真と長い文章が添えられていた。

彼の文章はつぶやきでは収まりきらないのであろう。

(つづき)のあとに幾つかの文章が分割されて投稿されていた。

ここで要約すると以下の通りである。「これは余りにも壮大な神話物語である。

故にツイッターSNSだけでは全ては語り尽くせまい。

だから今、私が目視して聞いている物語の一部をここに書き記そう。

イリスオブジェクトは『柳星張の宇宙』に封印されていた。

しかしある欲深い人物が。

人為的に創造した『量産型イリス』8体と

『虚無』『暗黒』『憂鬱』『絶望』『誘惑』。

『起源』『監視』『混沌』の槍を赤いコア(核)に突き刺し、儀式を起こした。

イリスオブジェクトの頭上の天使の輪が真っ赤に輝いた。

続けて高温の円形の衝撃波は現世のこちら側(バイオ)の現実(リアル)世界に

住む人々に直撃した。現世のこちら側(バイオ)の世界の現実(リアル)の

人々はオレンジ色の液体の生命のスープとなり『死』を迎えた。

魂はイリスオブジェクトへ。選ばれなかった魂は黒き月へと落ちて行ったのだ。

こうして目覚めた生命と創造を司る虚空の女王イリスは太古の昔に無数の並行世界

パラレルワールド)の宇宙の地球に住む生命に『死』を与えた父親の銀色の

卵の死神ニュクスの美しき一人娘は父親の代わりに生命を終わらせる。

そして新たな生命を創造して、世界を創造し、ガフの扉を開くのものである。

『神殺し』はある人間の男の手に渡ったがその男は神になれない。」

「まて!若村が神になれないとは?さっきの太陽神は?若村が有利なのでは?」

「そうさ。今までの流れで行くとね。

しかし太陽神テスカトリポカにはまだ切り札がある。

君はそう考えてみた事は?最初は若村が有利かと考えたが。違う事に気付いた。

「死神ホラー・タナトスと『ネガブドネザルの鍵』の人間の女性と

天魔ヴァルティエルに洗礼を受けたハンターα(アルファ)達が

機能停止して儀式は出来ない。しかし太陽神テスカトリポカには混血児。

つまりダンピーラの血を持っている。人間の血が切り札だ!」

ドラキュラ伯爵の言葉にクリスはピーンと来た。

「そうか!ジル・バレンタインの前世のジャンヌダルクとドラキュラ伯爵の

遺児の魔人フランドール!聖母の娘だから人間の聖人の血が宿っている。

『神殺し』か・・・・・・・・・・・・・・」

「若村秀和が悪魔なら太陽神テスカトリポカは自分の身体に流れる聖人の血で殺せる。

それが可能なら太陽神テスカトリポカがイリスオブジェクトと儀式を奪い取れる。

だから太陽神テスカトリポカがこの

『柳星張の宇宙』に現れたらますます大変な事になる。」

「だからこそ!秘密処理で俺達が何とかしないといけない訳か」

クリスは素直に納得するとドラキュラ伯爵は心配そうな表情になった。

「そう言う事。だから早くアスカ君が駆け付けてくれるといいが。」

「仮に太陽神テスカトリポカが聖人の血で若村を毒殺出来たとしたら?もしもだが。」

クリスの質問にため息をつき「そうだな」とつぶやくとツイッター

そうなった場合の続きを描きながらドラキュラ伯爵は説明した。
「仮に『解放』の若村を排除した場合は太陽神テスカトリポカは自ら望む楽園に

相応しくない反メディア団体ケリヴァーの若村も仲間達の多数の魂も

全て自らの聖人の血で毒殺して汚れた邪悪な魂を一つ残らず浄化させた後。

太陽神テスカトリポカと虹色の女神イーリスと『虚無』『暗黒』。

『憂鬱』『絶望』『誘惑』『起源』『監視』『混沌』の生贄の

魂を取り込んで融合させてコア(核)を乗っ取る事になる。

十の心臓も若い女性も彼女と融合して全て自分のものになる。

太陽神テスカトリポカと君達なら聞いた事も知っているであろう。

十六夜咲夜(いざよいさくや)』の肉体を生命のスープに還元して

欠けたイリスの心である母体の生贄と融合。他の選ばれた女性達の

魂と融合してコア(核)化するだろう。

最後の儀式の依り代となるのぴの『ネガブドネザルの鍵』を起動させてー。

他の『おこぷれ』メンバーと共に彼女の魂太陽神テスカトリポカに取り込まれる。

『知識』ののぴと『母体』の十六夜咲夜を取り込み、儀式は完全となる。

やがて生と死の境界から三途の川にある門(ゲート)を通って

現世のこちら側(バイオ)の世界にイリスオブジェクトは来訪する。約束の地からな。

イリスオブジェクトと太陽神テスカトリポカは合一を果たし。

『黒き月』を空へと飛ばし、若村によって肉体を生命のスープに

還元された世界中の人々は元の人間の姿形に戻るであろう。

ただし虐待や性的暴行や暴言などで他の女性に危害を

加える男達の魂は浄化されて完全に消滅させられる。

全ての旧人類と人間社会を滅ぼして世界は書き換えられるであろう。

強い母親になった彼女の選ばれたごく一部の若い女性達と

SHB(サイレントヒルベイビー)と多数の神々と天使と天魔を従えて

次の世代に進んだ混沌の楽園が創造されるだろう。

そしてガフの部屋も一部の汚れた魂は浄化されて排除される。

しかし彼女に選ばれた若い女性達の魂に新たな肉体が与えられ。

天魔と交わり、次の世代の子供を宿すであろう。」

「まあ―大筋はこんなところか?

あくまでも可能性の並行世界(パラレルワールド)の話だがね。

でも実現してしまっては我々も困る訳だから何とかしないといけない。

運命を変えないと!」

「のぴやおこプレメンバー達はまさか?魂のまま彼女に??」

「もしかしたら?全員新たな肉体を与えられて復活するか?

取り込まれたままかは?分からん。だからこそ運命を変えなければならない。

進んだ針は元に戻せない。だが自らの手で進める事は出来る!」

クリスにドラキュラ伯爵はとても真面目に返した。正にその時!ー。

天空の『柳星張の宇宙』の虚空の空がパキパキと音を立て大きくヒビが入った。

それからパリイイン!と言うガラスが割れる音と共に暗黒の虚空の空が割れた。

やがてギザギザの鋭い割れた虚空の空の大きな白い光の指す穴から。

例のガイウスの槍を持った惣流・アスカ・ラングレが現れた。

スーツとアスカはクリスとドラキュラ伯爵の隣の虚空の床に着地した。

「ようやくここまで辿り付いたか・・・・。」

と不意にドラキュラ伯爵はそうつぶやいた。

「ああ。えっ?うっ!痛っ!頭がッ!」とクリスは呟いた。

直後に強烈なめまいと頭痛に襲われた。彼は片手で頭を押さえた。

クリスの脳裏に次々とドラキュラ伯爵が自分のアカウントの

ツイッターに書いていた文章の内容通りのー。

あのイリスオブジェクトと核(コア)を乗っ取る為に

太陽神テスカトリポカが様々な沢山のシチュエーションで若村達を毒殺した。

その度に乗っ取り。そして太陽神テスカトリポカは若村の儀式を行い。

旧人類と人間社会を滅亡させて世界を書き換える結末をー。

それはまるで回り続けるバルブか車輪のように何度も何度も同じ場所。

何度も何度も同じ光景。何度も何度も同じ結末が繰り返された。

そのたびに自分は何度も何度も同じ『静かなる丘・サイレントヒル』の

一連の怪異事件が発生する直前の休日を使ってハワイの

ホテルでのんびりとしていた場所に戻され続けるのだ。

独りで楽しくバガンスと決めていたのにも関わらずである。

俺はその度に苛立ってベッドから起き上がり、部屋のドアを開ける。

そして見知らぬ砂漠か何処かの地下の洞窟にいた。

最初はそうだ!と独りで訳も分からず洞窟を進み続けて。

のぴと言う女の子に会った。2人でイリスオブジェクトを見つけた。

初めてあのバッドエンドになった。

続けてまたハワイのホテルのベッドで目覚めた時。

今度はドラキュラ伯爵が俺の部屋をノックして来た。

悪夢のようだった。

ドラキュラ伯爵から大体の事情は知る事が出来た。

それでも謎が多く分からなかった。

しかも数歩も行かない内に若村秀和の24の秘跡

インパクトの儀式が始まってしまい。

結局はまた若村達は太陽神テスカトリポカによって毒殺されてしまった。

再び若村の儀式を利用して旧人類と人間社会を消し去った。

世界は書き換えられてしまい。のぴもおこさまぷれーとも消滅してしまった。

クリスは目の前が真っ白になった後にまたしてもハワイのホテルのベッドで目覚めた。

またドラキュラ伯爵がホテルのドアをノックして扉を開けた。

そして再び若村秀和の儀式を利用した太陽神テスカトリポカの

インパクトを阻止すべく行動を開始した。

のぴと出会い。さらに洞窟を進んで行く内に。

若村の第1研究所を発見し、そして『イリス』または『柳星張』の実験体を発見した。

調べていて2人が目を離した隙に『13番目の無人機イリス』に

のぴは連れ去られてしまった。ドラキュラ伯爵とクリスは追跡するものの

間に合わず太陽神テスカトリポカは若村秀和の儀式を乗っ取った。

結果。儀式は行われてしまい旧人類と人間社会は消し去られた。

クリスはまたしても目の前が真っ白になったあとに

ハワイのホテルのベッドで目覚めた。

自ら部屋の外に出てドラキュラ伯爵と合流し、のぴの護衛と安全を優先させた。

そして若村の第2研究所を発見するもクリスとドラキュラ伯爵は固まって行動した。

予想通り、13体目のイリスの無人機が襲撃してきた。

しかしドラキュラ伯爵とクリスは協力し合い。捕獲用の繭を破壊して機能停止させる。

のぴは『柳星張の宇宙』まで来れた。しかしアスカとガイウスの槍の

存在を知らなかった為にドラキュラ伯爵とクリスはまた同じループの結末を辿った。

そしてまた若村の儀式を乗っ取り、太陽神テスカトリポカによって旧人類と

人間社会が自分の目の前で滅亡して書き換えられる出来事が繰り返され続けるのに

クリスは怒り、悔しさを爆発させて何度も何度もドラキュラに当たり散らし続けた。

何度も何度も繰り返しても解決しない事にクリスは頭を悩ませて

イライラしつつも考え続けた。

さらにあの『ヴィレッジ事件』でマザーミランダが使用していた

『特異菌』の資料を見つけて量産型イリス8体がBOW(生物兵器))して

バイオテロに利用される可能性を危惧した。

更にまたしても儀式は阻止できず。

またリスタートしてしまった。

クリスもドラキュラ伯爵も何度も何度もループを繰り返して行く内に

記憶と知識を手に入れて情報を集め続けた。

その結果、色々分かった。今、それをクリスは思い出した。

「そうだ・・・・・俺は・・・・思い出したぞ!ようやくここまで来たんだ!!

ここで!失敗は出来ない!必ず成功させるんだ!妹のクレアと仲間達の為に!」

ドラキュラ伯爵もクリスの記憶復活に呼応して自身もループの記憶を思い出していた。

ドラキュラ伯爵は太陽神テスカトリポカを追いかけてイリスオブジェクトの

コア(核)に侵入した。そこで彼は酷い光景を見た。

反メディア団体ケリヴァーの生き残りメンバーと若村秀和の魂は

太陽神テスカトリポカが自らの聖域

(イリスオブジェクトのコア)に現れた事で激怒した。

その事により悪霊化して大量の魂が融合し、巨大な芋虫と

赤ちゃんを組み合わせた怪物になった。

しかし太陽神テスカトリポカは自らの血液で製造したサバイバルナイフを

無数に発射させてその悪霊化した若村秀和と

反メディア団体ケリヴァーの悪霊の融合体を串刺しにした。

やがて彼女の血液の中に含まれる聖人ジャンヌ・ダルクの血液によって

体内で破魔(はま)の効果を力を発揮した。

同時に悪霊となった若村秀和と反メディア団体ケリヴァーの融合体は

その場で絶叫してのたうち苦しみ回り。罵り。

複数の男性の絶叫がコア(核)の内部に響き渡った。

それを聞いていた十六夜咲夜(いざよいさくや)。

おこぷれメンバー4人、ちゃき、ゆいにや、りあら、のぴ。

他の多数の若い女性達も怯え切った表情でそれをお互い抱き合い、見ていた。

太陽神テスカトリポカはニヤリと笑った。

「我を復活させる為に多くの子供の自由や

大切な物を奪った大人の罪はお前たちが背負う。

他人の命と感情を殺して自己欲の為に悪戯に命と感情を奪い続けた。」

「二度と思い上がらぬように罰を受けるがいい。

フッ!やはりお前達は予想通り悪霊となったか。

もはや太陽神と悪霊の集合体とでは理(ことわり)が違う。」

 

(第32章に続く)