(第49章)ベルベットルーム

(第49章)ベルベットルーム


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霧島マナと最後の別れを告げた後に彼女が身体から発した

とても暖かな黄金の光によって『柳星張の宇宙』から脱出した

ゆいにゃ、りあら、ちゃき。そして十六夜咲夜(いざよいさくや)は

また見知らぬ場所へ飛ばされていた。

また別の空間を移動して遅れてのぴも到着していた。

のぴは瞼を開けた。

彼女の周囲に顔馴染みのゆいにゃ。りあら。ちゃきがいた。

そこもまたしても見知らぬ場所で今度は立派な広い事務室のようだった。

事務室には大きな長四角のテーブルがあり、中央に椅子が置かれていた。

また部屋の天井からはゆっくりと左右に大きな振り子が揺れ続けていた。

どうやら元々はヱヴァンゲリヲンの世界に

存在していた日本の首相官邸第3執務室らしい。

その金色の丸い時計の振り子は左右に大きく振り続けていた。

椅子には小さな男が座っていた。

目の前にはのぴとゆいにゃとちゃき、十六夜咲夜

(いざよいさくや)が床の上に立っていた。

その椅子に座っていたその小さな男の特徴はー。

ひょろっとした姿にピノキオのように長い鼻。

キリッとした黒い眉毛。

黒い服を着て白い手袋を履いていた。

更に左右に青い服を着たニーナとヨナが立っていた。

その不思議な黒い服の男が言うには彼と彼女は力を司る者らしい。

やがて黒い服を着た男はゆっくりと喋り始めた。

「やれやれ人を迎え入れるなど惣流・アスカ・ラングレ様と霧島マナ様。

渚カオル様。綾波レイ様。アヤ・ブレア様。イヴ・ブレア様。

そしてあの『ニュクスの宇宙』へ行かれたキタロー様。アイギス様。

他にも大勢を客人として迎え入れましたが。これもまた何年振りか・・・・。」

「あんた?誰や?ベルべットルームってなんや?」とちゃき。

すると黒い服の男はゆっくりと自己紹介した。

「申し遅れました。わたくしはイゴールと申します。

このベルベットルームの主人です。」

「あのーイゴールさん」とりあらは前に出て何事も無かったように質問をした。

「私達は現実世界に帰れるんですよね?」

イゴールは穏やかにこうゆっくりと返した。

「勿論、帰れますとも。でも貴方達はある答えに辿り着いてしまった。

改めてようこそ我がベルベットルームへ。

『命の答え』に辿り付いた人間達。

いや淑女(しゅくじょ)の皆様。そしてのぴ様。

見事貴方様は『ワイルド』にお目ざめになったようだ。」

のぴは訳が分からず「ワイルド?私野性的に見える?」と周りの人達に意見を求めた。

「それと十六夜咲夜(いざよいさくや)様も「ワイルド』にお目覚めになった。

その影響を受けて『おこさまぷれーと』の

歌姫の方々もここへ来た訳ですな。面白い。」

アイギス様以来の奇妙な運命の力ですな」と勝手に一人で納得していた。

「いやいやいやいや!良く分かんなんだけど!」

ちゃきは状況を飲み込めず他のメンバーよりも頭の中が混乱していた。

イゴールはしばらく混乱しているちゃきや他のメンバー達が

困惑している彼女らの反応をしばらく楽しんだ。

それからコホン!と咳払いした。

命の答え。それはユニバース(宇宙)へ辿り付いた者が知る全ての生と死の真理。

貴方達は『イリスオブジェクトと柳星張の宇宙』にて全ての太陽神によって

課せられた試練をエア・マドセン様。魔人フランドール様。

冴島鋼牙様よりも一足早く見事果たされた。

こうして貴方達の未来の歯車の旅路は終わりと相成りました。

しかし今はお別れではありません。さよならはまた会う為のおまじない。

それは・・・・生きると言う事になります。

貴方達が起こした奇妙な力が数多(あまた)の人々が呼び続けていたからです。

これはユーチューバーである貴方達とメディアの映画やアニメ。小説。

人々の想像と並行世界(パラレルワールド)が空想と現実を結び。

大きな絆の力を育み産み出した。

彼らは貴方達の力となり、大きな変化をもたらした。

それは人類滅亡を救う希望の光となった。

貴方が作り出した最後のカードヱヴァンゲリヲン・ヴィシュヌ』

は全ての始まりと終わりをを司る力。『ユニバース・宇宙』でございます。

のぴ様は運命に導かれて『死神・デス』を宿し。

同時に『ワイルド』の力を得たのです。

ワイルド?ユニバースあれが・・・」とのぴは呟いた。

「私も『ワイルド』『正義』『ユニバース』つまり・・・宇宙を」と咲夜。

イゴールは他の『おこさまぷれーと』のちゃき、りあら、ゆいにゃを見た。

「さて。のぴさんと咲夜さん。マナさんのご友人様。

今回の貴方達の活躍は絆の力により、新たな福音書を創造しました!」

イゴールは机の上に2冊の分厚い本をテーブルに置いた。

ちゃきは右側の真っ赤な本を手に取った。

ゆいにゃは左側の分厚い青い本を手に取った。

分厚い青い本には『サイレンヒルズ・ミカエルの福音書とタイトルがあった。

分厚い赤い本には『シン・サイレントヒル福音書とタイトルがあった。

2人がそれぞれの分厚い赤い本青い本をそれぞれ開き、読んだ。

その2つの分厚い赤い本青い本にはこれまで

一日で起こった全ての物語が記されていた。

しかも事細かくである。

そして彼女達は全ての真実を知る事になった。

するとまたイゴールが説明した。

「それら2つの本は今までの神話の物語が記されております。

青い分厚い本の『サイレントヒルズ・ミカエルの福音書』が

旧約聖書と相成るでしょう。

赤い分厚い本の『シン・サイレントヒル』の福音書新約聖書と相成るでしょう。

そして記された物語は人の魂の有り様と命の答えを探し続けている

太陽神テスカトリポカと若村様。反メディア団体ケリヴァーの人々。

そして巻き込まれた大勢の人々や並行世界(パラレルワールド)の

不特定多数の名も無き人々の群像劇でもあります。

最後に得たのは・・・・真理にたどり着いた結末はもうご存じの筈です。」

イゴールは笑いながらのぴ達を全員一人見渡した。

イゴールはようやく『命のこたえ』成るものについて静かに語り始めた。

「そしてワイルドの力を以てヱヴァンゲリヲン・ヴィシュヌ』となり。

『命のこたえ』を見つけました。

貴方達にとっての命のこたえとは『未来の歯車』です。」

未来の歯車ってミライギアの事かな?」とりあら。

「そうです。貴方達の歌った『ミライギア』は命のこたえそのものでございます。」

命のこたえそのもの?どういう意味ですか?イゴールさん」とりあら。

「私達が歌った歌が命のこたえそのものって?」とちゃき。

2人の疑問に答えるようにイゴールはまた続きを話した。

未来の歯車とは全ての命を絆で結ぶ事で回転する営みの事でございます。

かつて人間達は有機物を生命のある存在。

無機物を生命の無い存在と大きく2つに分けて考えていました。

勿論、この考えが間違いではございません。そういう考え方もございましょう。

しかし貴方達が得た命のこたえはもうお判りでしょう?

その答えとは一度人間の職人達の手で産み出されたものは

無機物も有機物も一切関係なく知らずに魂が宿り、心が宿り。命が宿るのです。

創造物でも自然の手でも。人間の手でも造られて産み出されたものは

全て等しく平等に心と魂。そして命が宿るのです。

空想の存在であっても現実(リアル)の存在であっても。

人間や動物や植物や鉱物でも。キャラクターや人物や天使や

悪魔や異教の神々でも全て同じ原理で命が宿るでしょう。

何かが生まれれば必ず平等に宿るもの。当たり前の事なのだと。

人間や自然。誰でも物に命を吹き込めば生命を作り出せるのです。

今まで会った現実(リアル)の世界に存在しない筈の空想の人物も全て

元々に人間が息を吹き込んで生命が宿ったものなのです。

「深いなあ・・・」とちゃきは感想を漏らした。

「じゃおこぷれはうすのゆうじろう人形にも命が宿っているかもね」とゆいにゃ。

イゴールはここから急に真剣な表情となった。

それ故に多くの人間は物や無機物を処分しようとしていらっしゃる。

処分する理由は人個人それぞれでしょうが。それはー

物や無機物にとっての生命の終わり。『死』を意味します。

『生命』は産まれ。育まれ。そして『死』を経験する。

貴方達はその事実をどう受け止めるかは個人それぞれの判断に委ねましょう。

生命とはー。いや。人間達は声を大にして『生命を大事に』。『生命を無駄にしない』

と言葉だけで言うのは誰でも簡単にできます。口や文字で手元の口を開くか。

文字をノートに書くかキーボードで書くかで色々出来るでしょう。

勿論軽い気持ちで書く者もいれば。しっかりと心を込めて自らの想いを込めて書く者。

口でしっかりと伝える者。軽い気持ちで口で伝える者もいるでしょう。

正義を振りかざして自らの正しさを押し付けようとする連中もおられよう。

ですが『命のこたえ』など一部の者にしか知る事はありません。

『命のこたえ』はひとつではありません。人の数だけ無限に答えが存在します。

私(わたくしめ)は異なる多くの『命のこたえ』を見て来ました。

貴方達の『命のこたえ』も個人達で正に唯一無二の

『命の答え』なのです。どうか大事になさるように。」

咲夜は幻想郷でよく見かける付喪神の妖怪達を次々と思い出した。

あれも人の想いや心が宿って生命が生まれて傘や提灯が妖怪、いや生き物なんだ。

咲夜は自分と彼女らが出した『命のこたえ』が理にかなっていると思い感心した。

のぴはふとイゴールの左右にいるニーナとヨナの方に目を向けた。

しばらくしてのぴはイゴールに疑問に思った事を口にした。

「それじゃ私の魂のニーナさんとヨナさんは何だったの?」

ニーナとヨナは子供らしい無邪気な笑顔でこう返した。

「私達は貴方の魂に宿った小さな子供の純粋な希望」とニーナ。

「空想の人物の異世界の生物も種族と現実(リアル)の

人達と動物や神々や自然や魔物達もお互い分かり合えるかも知れない。

そんな小さな希望なの。

あの惣流・アスカ・ラングレさんの包帯もそんな希望の象徴だったの」

そう言われて一瞬だけ自らの体内に若村秀和の心が宿った量産型イリスを

受け入れる直前にアスカの姿が包帯に巻かれた姿になった事をすぐに思い出した。

そうか・・・そうなんだ・・・希望・・・・。

のぴは次第に明るくなって行った。明日への希望は心の奥底から沸き上がった。

『おこぷれ』やリスナーさんやチャンネル登録者さんや協力してくれる

大勢の人達と不特定多数の人々と厳しくて辛い現実(リアル)でも

自分の人生を最後まで生きて行こう!

のぴは改めて目の前にいるイゴールや仲間と友達に誓い。

それを誰よりも強く願った。

イゴールとヨナとニーアはそんなのぴの想いと希望を強く感じ、満足げに笑った。

しかし一方でのぴは思考を巡らせていた。それはー。

あのインパクトの後、元のこちら側(バイオ)の世界に人々と

都市も人間社会も文明を残した上で全て復活させたけど。

あの若村秀和や反メディア団体ケリヴァーのあの大勢の男や女の人達も無事に

現世。現実(リアル)のこちら側(バイオ)の世界へ帰れたのだろうか?

いや?彼女も彼らも未だにメディア社会に対して憎悪と敵意を

抱き続けているのだろうか?あるいは・・・・・。

もしも未だに明日の平和の同調の未来を持たずに

社会的価値に負ぶさった評価を受けず。

成長できぬまま現実(リアル)の世界を生きていないだろうか?

のぴは心配の余り、気分が落ちたのと変な気持ちを我慢して強引に笑顔を見せてみた。

イゴールは何かを悟ったようにゆっくりと穏やかな口調でしゃべり始めた。

「若村秀和様と反メディア団体ケリヴァーの男女メンバーの方々は結局貴方達と同じ。

『命のこたえ』に辿り着けませんでした。

しかしのぴ様が最初に若村秀和様に強く願った誰かの目の前にいる人々を救いたい。

そんな彼女の純粋な願いによって本来は自らの呪い返しによる自滅と自ら個人や人格。

若村秀和様や反メディア団体ケリヴァーの『教団』に関する悪い教えもあらゆる

霊や魂も他人を呪い、自分も呪いを受けて自滅して絶対的な『死』を巡るはずだった

運命さえも『人を呪わば穴二つ』の法則さえも書き換えてしまいました。

故に若村秀和様も反メディア団体ケリヴァーのメンバーの方々も魂を浄化されて

自ら犯した全ての争いの元凶と個人個人の

それぞれの過ちの罪の記憶を背負いつつもちゃんと

現世のこちら側(バイオ)の世界へと帰って行きました。あとはー。

ヘンリック・ターナ様と同じく人間社会の法律と

裁判によって現実的な方法できちんと裁きを受けるでしょう。

そして罪を償う為に抗いの生活が始まるでしょう。

成長して改心するか?しないかは個人個人と若村様次第でしょう。」

それからイゴールはパンパン!と手を叩き、その場の空気を明るく変えた。

 

(第50章に続く)