(第9章)夜襲
のぴがヌーンレイスを討伐して報酬を貰って地団太を踏んでいた同時刻。
ニューヨーク市内の夜9時21分。
チェルシー地区にあるとある事故によってホームレスの幽霊が出ると言う
曰くつきの2階建ての門付きの豪華な洋館の近くの丘の上に
老人と思わしき人物の人影が立っていた。
そして老人と思われる人影は右腕を天空に掲げて球体状の模様に覆われた
長四角の棺の形をした銀色に輝くコールドスリープ(冷凍冬眠)
カプセルを左掌に載せていた。
しかもコールドスリープ(冷凍冬眠)カプセルの中にはー。
お団子に金髪の長い髪を束ねて。
右側から顔まで長い金髪の前髪を伸ばしていて。
大きな丸い銀色の緑の大きな眼鏡の奥の瞳は閉じられていた。
彼女は『ダゴン秘密教団』に囚われていたブロッサムと言うロシア人女性だった。
そして老人は銀色に輝くコールドスリープ(冷凍冬眠)カプセルを緑の芝生に
ゆっくりと置いた。そしてスイッチを押した。
するとコールドスリープ(冷凍冬眠)カプセルは蓋がブーンと上へと開いた。
老人は魔導衣のポケットから透明な瓶を取り出した。
透明な瓶の中身には白く輝く液体が入っていた。
彼は軽く口を開けさせてのどに詰まらせないように慎重に細心の注意を払い。
白く輝く液体をブロッサムに飲ませた。
それはブロッサムの体内に入ると無意識に大量に鼻や口から吸いこんでいた
暗黒の霧状の物質と体内に入った白く輝く液体が交じり合い。
暗黒の霧状の物質は瞬時に完全に浄化されたのだった。
白く輝く液体に含まれる物質が残留した。
「ふぉっふぉっふぉっ。これで良し!
暗黒の液体の霧状の物質のアスモデウスの夜霧は魔戒の森の魔戒白蟹の蟹味噌と
魔戒チグリスマスの肝臓と心臓を燻って配合して錬金術で作り出した
『ラファエルの涙』は『アスモデウスの夜霧』
を浄化させる作用がある事が証明されたのう。
これである程度の対策は可能じゃな。ふぉっふぉっふぉっふぉっ」
老人の魔戒法師は満足した表情で両腕を背中に組んで胸を張り、笑い続けた。
それからブロッサムが目覚める前にスイッチを押してコールドスリープ(冷凍冬眠)
カプセルの蓋を閉じて再び彼女を冷凍冬眠状態にした。
一方、2階建ての門付きの豪華な洋館の部屋では
またしても大変なトラブルに巻き込まれた不幸な男がいた。
その男は短い金髪に短い眉の黄色のTシャツの成人男性。
名前は坂本竜司である。
彼はおいしい食べ物を購入してその家にきょろきょろと見回りながらも
こっそりと門を通って洋館に入って行った。
それはほんの数日前に道端で雨でずぶ濡れとなったあの『菊鹿ゆい』だった。
何も知らずに風邪をひき、しかも何日も食べておらず。
今にも飢え死にしそうな表情を見るなり放置できず彼女を助けた。
そして事情の一部を聞き。(自分が殺人鬼で死刑囚なのは隠した)
すぐに彼はゆいを匿い、助けた。
「ゆーいちゃん❤うまそうなホットドック見つけちゃった・・・
んっ!?!!!!!!」
竜司は意気揚々と玄関から入り、居間の広い部屋を見た瞬間。
みるみると青ざめて行き、とんでもない大声でついうっかり叫んでしまった。
「うおおおおおおおおおっ!なんじゃここりゃああああああっ!!」
そこにはあっちこっち何かが暴れたかのようにめちゃくちゃに破壊されていた。
今の壁はコンクリートごとぶちぬかれて幾つもの穴が開いていた。
天井も大量の何かが刺し貫いたような無数の小さな穴があった。
テーブルは真っ二つに破壊されており、椅子も粉々になっていた。
更に追っ手と思われる『ダゴン秘密教団』に所属する深き者ども(ディープワン)
がガタン!と物音を立てて壊れかけたテーブルの隅から現れた。
「君があの心の怪盗団ザ・レミリアスカーレットの元メンバーだね」
見た目通りまだ20代の未来のある若者のようだが。君は気の毒だが」
さらにもう1匹の深き者ども(ディープワン)が違う居間の天井から
ドスン!と大きな音を立てて床に降りてきた。
「死んで貰うよ!今隠れている菊鹿ゆいさんは我々の実験材料だ!」
「うおおおっ!なんかすげええっ!魚?人間?この!マジでやんのか?コラ!」
坂本は流石、心の怪盗団ザ・レミリアスカーレットの元メンバーの
切り込み隊長だけあって近くに落ちていた長い角材を手に持ち、がんを飛ばした。
深き者ども(ディープワン)は坂本を殺すべく堂々と黒い服の裾から
青い無数の鱗に覆われた両手を出すと10対の鋭利な長い爪を伸ばした。
しかし一人が持っていた無線から6人目の深き者ども(ディープワン)の声がした。
「何をしているギョ!早く!そこから逃げるギョ!
『ヨスガ派の仁藤夢乃氏のCOLABO(コラボ)の連中が
ニューヨークのこの建物を認知世界に閉じ込めて・・・ザーザザザガガガーガーガピーッ!ピーピーピーッ!DOOP(ドォープ)のプロトタイプ・・・を投入した!
仲間は全員殺されたギョ!あの・・・・」と言う所で無線は切れてしまった。
続けてズドオオオオオン!と大きな音と共に
建物全体が地震のように上下に激しく揺れた。
バゴオオオン!と天井突き破るような大きな音がした。
それと同時に居間の和室から菊鹿ゆいの声が聞こえてきた。
「ペルソナ!エリス・ビオランテ!嫌っ!こっちに来んなあああっ!
『コキュートスの氷河』があああああっ!まさか?死なないの?」
バキイイイン!パキイイイン!パリイイイン!
何かが激しく凍り付くような大きな物音とまるで
個の男性でもなく女性でもなく複数の男女の混じった
絶叫にも似た叫び声が部屋中に響き渡った。
バゴン!ガシャン!と壁を激しく叩く音とガラスが割れる音がした。
「おいおい・・・何が起こって・・・・うおおおおっ!なんだ?!は??
怪盗服?誰に警戒されてんだ?んっ?うわああああああああっ!」
気が付くと坂本竜司は怪盗服の銀色の髑髏の仮面とパイレーツアーマに
青い炎に全身を包まれたと同時に変身していた。
コードネームは『スカル』である。
更に彼の理解が追いつく間も無く急に天井の板が壊れると
緑ではなく黒と白の星模様と縞模様を合わせたような色をした
細長い植物の蔦が伸びるとスカルの身体に巻き付いた。
「なっ?ちょっ?えっ?わああああああああっ!
えっ?『命を刈り取るもの』と同じ?」
彼の身体は一瞬で天井に引き上げられ、バコン!と天井を貫いて連れ去ってしまった。
そしてその場に残された深き者ども(ディープワン)は悔しそうに声を上げた。
「くそ!逃げられたか!!」
「とにかく!今は我々も認知世界では命がヤバい!脱出を!!」
「くそ!仁藤夢乃め!愚かな人間め!あと一歩だったのに!!」
「とにかく脱出を!畜生!ギルマンめ!もうとっくに脱出してやがる!!」
「なんだギョ?この物音は??遠くから聞こえてくるぎょぎょぎょ!!」
5人が話し合っていた正にその時だった。
ズズズズズズズッ!ズザザザザザザザザザザザザオオン!!
大きな何か擦れるような音が近くの壁から聞こえてきた。
「なんだギョ?」
「何?何の音だギョ??」
「嫌な音だギョ!」
「やばい!やばいギョ!」
更にその擦れるような大きな音は徐々にこちらへ近づいてきた。
「くそ!やばいギョ!きっとあのDOOP(ドォープ)がすぐ近くに!」
1人の深き者(ディープワン)が慌てた表情ですぐに残りの
4人を玄関から急いで逃げるように促した。
「くそ!早く玄関に!」
「嫌だギョ!死にたく無いギョオオオッ!」
「うわっ!来たああっ!」
「早く早く早く逃げるぎょおおおっ!」
「ぐあああああっ!」
「ぐああぐっ!」「あごごごっ!があああっ!」
間も無くしてDOOP(ドォープ)プロトタイプⅡに惨殺された
深き者ども(ディープワン)5人分の真っ赤な血が認知世界の
2階建ての門付き家の1階はたちまち大量の肉片と共に
周囲の壁、天井、床や家具を真っ赤に染めた。
全員一匹残らず誰も逃すことなく上下半身が金属の壁や天井の金属と融合した
血塗れの惨殺死体となり、5人全員の死亡が確認されたのだった。
DOOP(ドォープ)プロトタイプⅡは何故か理由は不明だが菊鹿ゆいに執着しており。
その彼女を逃した事で八つ当たりに5人の深き者ども(ディープワン)
をカッとなって惨殺した後に。
竜司とゆいが隠れていた民家内部で役目?
を終えてその場に休眠状態になった後に回収されたのだった。
ちなみにその回収部隊のヨスガ派の天使達が来る頃には。
DOOP(ドォープ)は切り刻んで惨殺した深き者ども(ディープワン)の切断した
両腕と胴体や両脚の体の一部をまるで積み木のように積み上げて遊んでいた。
まるで3歳児が積み木で遊んでいるかのように。
すると『ヨスガ派の天使達』は「やれやれ」と何匹かため息をついた。
強力な結界式を認知世界の民家からDOOP(ドォープ)の本体のみを
巨大な球体で包んで別次元の隠れ場に移動させたのだった。
その様子を遠くから1人のさっきの『ダゴン秘密教団』に囚われていた
ブロッサムと言うロシア人女性を収容していた銀色に輝くコールドスリープ
(冬眠カプセル)を左掌に載せて運んでいた魔導衣を着た白髪と長い白髭を蓄えた
老人の魔戒法師の男が背中で両腕を組んで胸を張って立っていた。
「ふぉっふぉっふぉっふぉっ!DOOP(ドォープ)とやらはまだ子供じゃったか?」
そう言うと老人の魔戒法師は「やれやれ」とため息をついた。
「天使共もせっかちじゃのう。」と残念そうに老人の魔戒法師は肩を落とした。
老人の魔戒法師は阿門法師の愛弟子の邪美法師と面識があった。
そして彼はその邪美法師の一番弟子の烈花法師と
元老院の依頼でこちら側(バイオ)の世界へ来ていた。
命令にいつの間にか変わっていて仕事で来ていたようだ。
この老人の魔戒法師の男の名前は『ファウスト法師』。
彼もまた元老院付の魔戒法師だった。
更に密命を受けてファウスト法師は様々な役職に自由自在に化けて侵入したあの
『ネプチューン社』の負の遺産のDOOP(ドォープ)について調べていた。
「ふーむこのDOOP(ドォープ)とやらが色欲の陰我のオブジェとなり。
あの子から復活したクトゥルフの神話生物のクティーラが欲しがるかも知れぬ。
そう同胞の魔戒法師の布道シグマが彼が建造したイデアにメシアの牙のギャノンが
憑依して暴れ回った事例を予想していて。
あのDOOP(ドォープ)が可能性が高いのだとある程度予測しておる。
言うロシア人の若娘もクティーラの憑依候補じゃな。
どちらもあり得たかもしれん。
ファウスト法師は両腕を組んで点を見上げて黙って考え込んでいた。
「さてとまだまだ情報は足りないのう。もう少し調べてみるかの。」
ファウスト法師の頭の中では色々考え続けていた。
「さーてと。丁度、アサヒナ探偵事務所の住所を手に入れたので。
行くとするかのう。黄金騎士ガロの称号を持つ冴島鋼牙に会いたいのう。
それと最近話題になっておる『心の怪盗団ザ・レミリアスカーレット』
太陽針テスカトリポカとも会わなければのう。
そして破滅したロザス王国廃墟跡地!あそこが本来の最終決戦地となろうのう。」
収容したコールドスリープ(冷凍冬眠)カプセルを乗せながら強靭な脚力を
持って目にも映らぬ速さで初速からいきなり最高の速さに
達する足の運びの技術『縮地』を使い、
眼にも止まらぬではなく目にも映らぬ速さでその場を去って行ったのだった。
その動きはまるで仙術の類(たぐい)を使い、地脈を縮めて距離を短くして瞬間移動
したかの如く常人の眼には映ったはずであろう。
ちなみに彼は多数並べられていたコールドスリープ(冷凍冬眠)
カプセルの中身を遠くから見るだけでカプセルの中に男性か女性がいるのか
透視能力で判断できた。ちなみに彼はたとえ若い男性や女性の裸体を
上着や下着のどんな分厚い衣服や壁を
隔離した空間であっても貫通して透視できるらしい。
他にも一目で人間の体内に暗黒の赤い匂いと香りを放ち。
体内に溜まり過ぎるとホラー化する危険がある
アスモデウスの夜霧がどれだけ体内に溜まっているのかが分かるらしい。
(第10章に続く)