(第73章)悪魔払い

こんばんわ畑内です。
ゴジラの自作小説を送ります。

(第73章)悪魔払い

手術室に入ってから数時間後、病室のベッドで
うっすらとジェレルは意識を取り戻し、目を開けた。
そしてベッドの布団をめくり、腹にある巨大なガーゼを見た。
しばらくして3人の医師達が入って来るなり、
ジェレルは大慌てでベッドから起き上がり
「手術室前で突然、意識を失って……卵は?
まさか子供が生まれたんですか?」
医師は
「生まれていません!卵は最初から存在しませんでした!」
ジェレルは一瞬安心した表情になり、次の医師の言葉を聞いて、口をポカンと開け、
「それはどう言う事ですか?」
医師は
「その説明は美雪さんから!」
と言い美雪を呼び出した。
医師に呼び出された美雪は
「最初は『卵を産みつけて繁殖する』を前提で、
卵が植えつけられていないか検査しました。その結果!
卵は最初から存在せず代わりにデストロイア型の微小細胞が確認されました。
あたしは、あの宇宙人達がわざわざ卵を産みつける為に人間に変身
する必要は無いんじゃないかとずっと疑問に思っていました!
今回のDNA検査でその謎が解けました!」
するとジェレルは
「ちょっと…待ってくれ。それじゃ俺にあいつは何をしたんだ?」
隣にいた神宮寺博士は
「女性型の宇宙人達は、襲いかかった男性の衣服を8本の触手で引き裂いて裸にした後。
8本の触手とは別の太い触手の袋状に発達した先端を男性の急所を包みこみ
そのまま何度も締め上げて精子を奪い、自分の体内で受精させて混血児を生み出ます!
しかしその際、デストロイア型の微小細胞が感染。
それと同時に大量の冷凍液を急所に注入される為、
最終的に症状として体内の全ての内臓が凍り、やがて凍死に至ります!
ちなみに男性型の宇宙人の太い触手の先端に小さな穴を持つようです。」
ジェレルは恐る恐る
デストロイア型の微小細胞は?」
神宮寺博士は
「ほとんどの個体は治療をしなくても湯たんぽや熱いタオルで
全身を覆って体温を上げただけで死滅しました!
僅かの個体がまだ生きていますが……心配はありません!
その内、体温が平温になれば自然に死滅します!
またデストロイア型の微小細胞が人体に感染しても命に関わる症状は起こさない事が分かりました。」
と説明され、
ジェレルは暖かい毛布に潜り、ようやく安心した表情で「ホッ!」とため息を付いた。

青緑色のクリスタルの中に閉じ込められていたサンドラは涙を流し
「もう……ゴジラの不死身の力もウィルスのサンプルも……
あたしは望まないわ!あたしはあまりにも多くの人達を殺した…
それにあなたの友達まで殺そうとした……あたしは凶悪犯よ!」
蓮と凛、ガーニャはサンドラの懺悔にじっと耳を傾けていた。
サンドラは怪獣化した自分の姿を見て
「このままじゃ……ウィルスで凶暴化して怪獣化した自分自身
の肉体のサンプルが、WMW社からテロリストの手に渡って
紛争に利用されるかも知れない……
私自身でもある、あの網走の怪獣を完全に消滅させるのは
もう体力も限界に近いゴジラには不可能かもしれない……
でもなんとかして!あの怪獣を葬らないと!」
凛は静かに
「なるほど……でも……バガン族の血縁の
ゴジラはそんなやわな怪獣じゃないわ!」
サンドラは動揺し
「でも!ゴジラはもう長い闘いで身も体力も限界なのよ!」
凛は
「大丈夫!ゴジラは必ずあなたの邪心を消し去るわ!」
サンドラは
「あたしの邪心を?どういうこと?それとあの怪獣とに関係が……本当にそんなことが可能なの?」
凛は
「大丈夫よ!」
彼女の言葉は自信に満ちていた。
その響きにはさすがの蓮も反論しようが無かった。
再びサンドラの体がドクンと波打った。まるで体を引き裂かれるような激痛が彼女の体を襲った。
ガーニャはあわてて
「どうしたんだ!サンドラ!しっかりしろ!サンドラ!」
と何度も呼びかけた。
蓮は
「離れろ!何か出てくるぞ!」
凛も
「離れて!」
と言いガーニャをサンドラから遠ざけた。
しかしガーニャは彼女が閉じ込められている青緑色のクリスタルから決して離れようとはしなかった。
サンドラの眼が白眼になり、獣のように唸った。肉体も精神も
引き裂かれるような感覚が身体中を駆け巡った。
そして彼女の背中から紫色の何か巨大な物体が抜け出した。
まるで細胞分裂をしたかの様に。
ガーニャは彼女の背中から抜け出した紫色の生物を見て絶句
した。それはあの怪獣化したサンドラと同じ紫色で、肉芽種が
変化した硬い蟹のような甲羅と腹から、それぞれ8本の触手が
生え、顔はラドンに類似しているが肉芽種により醜い顔になっていた。
さらに下顎が裂け、天に向かって咆哮を上げると、背中と腹
の16本の触手で青緑色のクリスタルをすり抜け、
空へ舞い上がり、怪獣化したサンドラの方めがけて飛び去った。
サンドラは拘束具を抜かれたかのように体と精神が軽くなった。
やがて安心感と共に疲れがどっと襲ってくるのを感じた。
そしてガーニャの顔を見た。
静かに蓮は
「あんたが今まで犯して来た罪は残虐非道で一生許せる物じゃ無いぞ!」
と言った。実際、この少年の言う通りだと彼女は思った。
果たしてどう罪を償えばいいか彼女には想像がつかなかった。
ガーニャは
「一体彼女の身に何が?」
凛は
「あれは!彼女の体にウィルスを通じて寄生して一体化する事
によって現実世界に定着していたけど…本気で悔い改める心があったから!
体を支配するのをあきらめたのよ…」
蓮は
「つまり彼女は絶望や恐怖で体が動かなくても心の底では抵抗をやめていなかった!
善が実際に悪を追い出した・・・・今回は俺の負けの様だな……」
とつぶやいた。

(第74章に続く)