(第36章)デストロイアの弱点!!

(第36章)デストロイアの弱点!!

 

デストロイア対策の研究ラボには、個室に隔離されていた
優香と優香から生まれたデストロイアの子供の入った保育器が再び運ばれた。
その場にいた女性FBI捜査官は保育器で眠っている山根優香から
生まれたデストロイアの子供を眺めながら
「まさか……あの凶暴なデストロイアから発生したって言うの?」
男性FBI捜査官は
「この生物は君の概念をはるかに超えた……なんて言っていいのか分からないけど!とにかく凄い……」
と驚きを隠せない様子だった。
その2人の隣で美雪は全身麻酔で眠っている優香と子供のデストロイアの血液を採取して、
微小デストロイアの毒性に対する抗体を持っていないか徹底的に調べ上げたが、
微小デストロイアは彼等から全く検出されなかった。
大勢の医学者達と神宮寺博士は、Gメ―サー治療室前の廊下にいる大勢の患者の
血液から採取した微小デストロイアを実験用の特殊なケースの中に入れ、
薬剤耐性実験を何度も行った。
その実験の結果、大勢の患者の血液から採取された微小デストロイアは、
抗生物質であるバイコマイシンやペニシリンを始め、
ほとんどの薬剤に強い耐性を示したので通称
『多剤耐性型微小デストロイア』と呼ばれた。
さらに耐性実験は続けられ、超高温や超低温の環境はおろか
Gメ―サーに耐性を持っている事も分かった。
その実験結果を見た神宮寺博士はたちまち顔面蒼白になり、
「まさか……ここまで変異していたとは……」
とつぶやいた。また赤いデストロイア電子顕微鏡でじっくりと観察すると、
頭部は小さなカニの様な 姿をしていて、
尻尾は長い紐の様に丸くなったり絡まったりしていた。
尻尾の先端には小さなハサミらしきものが見えた。
その姿形はまさにエボラウィルスにそっくりだった。
美雪と健吉が微小デストロイアの人間への感染方法を細かく調べている間、
神宮寺博士は絶望的な声で
「『超高低温Gメ―サー多剤耐性型微小デストロイア』か……
我々人類が一番恐れていた事態が現実となってしまった……」
とつぶやいた。
女性FBI捜査官が、顔面蒼白の神宮寺博士を見て心配そうに
「大丈夫ですか?」
と尋ねたが何も答えなかった。
女性FBI捜査官は微小デストロイアの耐性実験の結果を読んで愕然とした。
さらに男性FBI捜査官も同じ様に愕然としながら
「そんな……これじゃ……」
更に美雪も
「手も足も出ないわ……このままじゃ!確実に犠牲者は増え続けるわ!」
と言った。

 

東京八重洲では3体のゴジラデストロイアの戦いが続いていた。
デストロイアが突然、深紅のウニの様に丸まったかと思うと、
猛スピードで回転しながらまるでナイフの様に長い触手が変化し、
真っ直ぐゴジラに襲いかかった。
ゴジラは横飛びでかわしたが、意志を持つ、ウニ型の
デストロイアは方向を変えて、回転しながら今度は10体に分裂して、消失した。
ゴジラは再び酸素不足により酷い息苦しさを押さえつつ、
周りを睨みつけながらもう1体のデストロイアに放射熱線を放とうとしていた。
しかし後ろから巨大化した棘状のボールが現れ、
ジュニアの右目を切り裂き、続いてミニラの肩を切り裂き、
跳ね飛ばしてゴジラの肩も切り裂いた。
さらにボールはUターンしてブーメランの様にゴジラに襲いかかった。
ジュニアと同化していた凛は傷ついた右目を押さえながら
「ジュニア!ゴジラを助けて!」
と大声を上げた。

 

ジュニアとミニラがすぐに立ち上がると放射熱線を吐き、
ゴジラの目の前でそれは爆発してウニ状のデストロイアは粉々に粉砕された。
別のデストロイアの群体は怒った様に吠え、身体から口の様な
ものが生えて来た。ゴジラは驚き目を丸くした。
ジュニアがジャンプしてデストロイアに襲いかかろうとした時、
デストロイアは身体中に生えた口からミクロオキシゲンを一斉に乱射した。
凛が
「逃げて!」
と大声を上げた。その時、凛の脳裏に
ジュニアと初代ゴジラが重なって見えた。
凛は
「あなたの前世は……そうだったの……だから……」
この瞬間、凛は心身とも完全にジュニアと一体化していた。
凛は思わずミニラとゴジラの方へ身体を乗り出した。
東京八重洲の街は水蒸気爆発を起こし、周りのビルや建物や運河を巻き込み液状化させた。
轟天号内では
「なんて奴だ……ゴジラは??」
ジェレルは
「3体のゴジラは大雪と水蒸気で確認できません!生死不明!」
アヤノは
「さらにミクロオキシゲンを辺りにまき散らした為……
酸素濃度の低下スピードが何倍にも速まりました!
このままじゃ!ゴジラが!」
ジェレルは「ドン!」と両手を叩きつけ、
「クソ!火器攻撃も駄目!冷凍攻撃も駄目!どうしたらいいんだ!」

 

すると地球防衛軍本部から通信が入った。
「聞こえますか?」
と若い男性の声が聞こえた。
ゴードン大佐は
「聞こえるぞ!通信用のモニターは?」
とジェレルに聞いた。
ジェレルは
「通信用モニターは故障しています!」
アヤノは
「原因は不明です!何者かに破壊された模様!」
若い男性は
地球防衛軍本部『デストロイア対策室』の山根健太郎です!
先程デストロイアの脳と心臓の役割をすると思われる器官を
詳しく分析したところ、それらは個体ごとに独立しているのでは無く、
どこかからの遠隔操作を受けていることが分かりました。
やはり急所はその緑色の本体のデストロイアです!」
と伝えた。

 

(第37章に続く)