(第81章)ジェレルの悪夢

おはようございます。
畑内です。
ゴジラの自作小説を載せます。

(第81章)ジェレルの悪夢

洋子は長野先生の話を聞いてしばらく呆然としていたが、
ふと我に返って休憩室のドアの方を見ると、
いつの間にかガーニャとジーナとサミー、
MIBの仲間、洋子の両親、元FBI捜査官の男女、蓮と凛が立っていた。
 長野先生の話を聞いて驚きの余り、全員が洋子と同じく目を丸くし、
長野先生の少し深刻な顔でうつむいている顔を見ていた。
 しばらく休憩所内はこれまでに無かった重い空気に包まれていた。
宇宙人の正体が『ノスフェラトゥ』と言うX星人が作った人工の種族だと
今日初めて知った洋子は自分を受け入れられるのか?
洋子の両親や元FBI捜査官の男女と同じく心配でたまらないという
表情でうつむいている洋子の顔を誰もが見ていた。
長野先生も心配そうな顔で心の中では
「本当は知らなかった方が彼女にとって幸せじゃないかしら?
やっぱり話すべきでは無かったかも知れない……」
と後悔していた。
洋子は両親の顔を見ると
「パパ…ママ…」
とつぶやいた。
それから洋子は長野先生の方を見て精一杯の明るい声で
「ありがとう……宇宙人について真実を話してくれて…本当にありがとう!」
と感謝の言葉を述べた。
 ようやく全員緊張が解けて重い空気が無くなり、洋子は楽しげな声で
「そういえば?ノスフェラトゥって?そのヴァンパイアつまり吸血鬼の総称だっけ?」
長野先生は
「ええ……ノスフェラトゥはドラキュラ伯爵の別名よ!」
洋子は
ノスフェラトゥって確か元々は古代スロヴァキアの
言葉でギリシャ語では『病気を含んだ』って意味よね!」
すると横から元FBI捜査官の男性が
「ちなみにその元の方のドラキュラはルーマニア語
『ドラゴンの子供』や『悪魔の子』という意味。
実在するヴラド・ツェペッシュがモデルだったな?」
と笑いながら言った。
洋子は
「吸血鬼の伝説とは全く関係無いのにいつの間にか吸血鬼のドラキュラにされていた人よね?」
その洋子の楽しそうに話しているのを見て両親はうれしさと安心感で思わず涙ぐんでいた。
 それから洋子は一度蓮のいる病室に戻り、リモコンでテレビを付けニュースを見た。
ニュースで日東テレビのレポーターの
音無杏奈が
「ようやく怪獣避難警報は解除されました!」
と報道していた。
 その後、担任の原田先生が凛のクラスの生徒達を集め
「修学旅行は中止。生徒はこのまま網走市の病院から保護者と共に東京の家へ帰ること」
と説明した。
 凛達クラス一行は退院の準備の為、荷物をお互い協力し合いまとめた。
 そこに一足早く病院に着いていた山岸、洋子、ユキの両親、
続いて凛の母親の美雪、姉の杏奈、蓮の母の優香が駆けつけ、
無事だった事を喜び合い抱いて泣きあった。
蓮は母親に向かって
「ゴメン……いつも逃げてばかりいて……」
優香は息子の意外な言葉に驚き、蓮の顔を見た。
まさか息子からそう言われるとは予想もしなかったからである。
さらに蓮は
「これからは……父の過去に真剣に向き合っていきたいんだ!」
優香は不意に両手で口を塞ぎ、嬉し泣きで嗚咽を漏らし、蓮の体を強く抱いた。
蓮も同じく泣き出し、強く優香の体を抱いた。
妊娠して膨らんだお腹が優しく体に触れた。

 網走市厚生病院の個室でジェレルはうたた寝をしていた。
その時、ぼんやりとアヤノらしき影が見えた。
ジェレルはぼんやりと
「アヤノ?」
とつぶやいた。
それからアヤノは
「お見舞いに来たの?」
と言った。ジェレルが安心してアヤノの目を見た直後、
背筋が凍りついた。
アヤノの眼は青色で、瞳孔は蛇の形に変化していた。
ジェレルの
「やめろ!」
と言う大きな声は「バーン」と言う銃声のような音にかき消された。
そしてアヤノの腹から8本の触手が……
ジェレルは
「やめろ!ぎゃあああああああっ!」
と絶叫してガバッとベッドから目覚めた。
 周りを見るとアヤノの姿は完全に消え、
静かなストーブの稼働音がただ聞こえていた。
 そのジェレルの悲鳴を聞き付けた、
宇宙人ではなく正真正銘のミュータントのアヤノと看護婦やカウンセラー、
精神科医や担当医師が慌てふためいた様子でジェレルの個室へ入ってきた。
アヤノは
「どうしたの??何があったの??」
するとベッドの上でジェレルが
「大丈夫だ!少し悪い夢を見たんだ……」
とかなり取り乱した様子で言った。
 アヤノはすぐにコップ一杯の水を汲んでくるとジェレルに渡した。
 彼は渡された水を一気にゴクゴク飲み干し、それを再びアヤノに渡した。
アヤノは恐る恐る
「何を見たの?」
しかしジェレルは額に冷や汗を流し何も答えなかった。
精神科医
「このようなことはしばらく続くかも知れません」
と説明した上で睡眠薬精神安定剤をジェレルに処方した。
それから精神科医はアヤノに向かって
「精神が安定するまで、東京の地球防衛軍の『特殊生物病院』の精神科に入院になります!」
と説明した。アヤノは心配そうな表情で、精神安定剤睡眠薬で安らかに眠っているジェレルを見た。
担当医師はアヤノを別室に連れて行き
「実は……ジェレルさんの体内からPS45
よりは極めて毒性の低いPS44が検出されました!
恐らく宇宙人達は男性の精子を触手で奪う際に、
デストロイア型の微小細胞を感染させ、それと同時にPS44も排出するようです!
少なくとも命に関る程の猛毒ではありませんし……
しばらくすればデストロイア型の微小細胞と同じく自然に消滅するので安心して下さい!」
アヤノは半信半疑のまま
「それじゃ?さっき彼が見た悪夢の原因は?」
と質問した。
医師は頷き
「はい!このPS44が原因だと思われます!
ガーニャさんと同じケースです!ただ……彼の体内から
PS44が完全に消滅しても……宇宙人に襲われたトラウマ
はまだ残っていますので今後はカウンセラーのケアが必要でしょう!」
アヤノは真剣な表情でその医師の説明を聞いていたが、
やがて医師の説明が終わると、
箱に閉じ込められたレイとサンドラを北海道の網走厚生病院から
ロシアの輸送船に極秘に移送させる為、
ガーニャ達やミュータント兵のいる港へ車で移動した。

(第82章に続く)