(第1章)大戸島。

ゴジラ・アフター・ザ・ファイナルウォーズ・シーズンファイナル

(第1章)大戸島

 駿河湾の南方に位置する大戸島。
この島は1954年、人類の前に姿を現したゴジラが最初に目撃された場所である。
生物学者の山根恭平博士をリーダーとした調査団がその最初の目撃者であった。
島に上陸したゴジラは村を襲い、後に山根恭平博士の養子になる大戸島の青年新吉の、
実の両親が家ごとゴジラに潰され、殺された。
 他にも家屋17軒、死者、新吉の両親を含め、9名、牛12頭、豚8頭の被害を受けた。
 ここはすべてのゴジラ事件の原点であり、悲劇の始まりだった。

 そこでドキュメンタリー番組として全国テレビで放送される予定の
『緊急ドキュメンタリースペシャル!新人MBI(怪獣捜査局)捜査官!
大戸島発掘隊失踪事件の謎を追え!』
の取材の為、日東テレビは大戸島の博物館を訪れていた。
そこにいたのは、今年フリーのカメラマンから、
採用試験に受かり採用された新人カメラマンで、丸いメガネに丸顔の冴えない青年、山岸雄介。
それともう一人、同じTV局に契約したばかりで、
母親がスペイン人、父親が日本人だと言う新人レポーターだった。
また番組ゲストとして山岸雄介の恋人である音無凛が同行することになっていた。

 朝日が半分まで昇り、ようやく空が明るくなった午前6時頃。
新人レポーターは、銀色の文字で「大戸島自然博物館」
と書かれた看板が掛けられた大きな白塗りの洋館風の博物館の前にいた。
面長のイケメンの青年は右手にマイクを持ち、左手で軽く前髪を斜めに降ろし、
くりくりと可愛い黒い瞳でカメラの画面に視線を合わせると、ニッコリ笑いレポートを始めた。
「みなさん!おはようございます!日東TVレポーターの真鍋ヴェラスコです!
今回の『緊急ドキュメンタリースペシャル!新人MBI(怪獣捜査局)捜査官!
大戸島発掘隊失踪事件の謎を追え!』では、
洞窟で発掘調査の指揮を執っていた大戸島自然博物館の研究員が、
血痕さえ残さず発掘現場付近のキャンプから失踪を遂げた事件の謎を追って参ります!
今回初仕事の私達TVクルーは、地球防衛軍のMBI(怪獣捜査局)
の新人捜査官2人を密着取材いたします!
今回初めて人目に触れる彼らの捜査の様子や食事の様子などをご紹介します!
さらに今回の事件解決のキーワードとなる、大戸島に古くから伝わる
呉爾羅伝説の謎も皆様にご紹介します。
では『日東テレビ緊急ドキュメンタリースペシャル、
MBI捜査官大戸島発掘隊失踪事件の謎を追え!』をご覧ください!」

 銀色の文字で「大戸島自然博物館」と書かれた白い門をくぐって
一台のレンタカーが駐車場に到着した。
白いドアが開き、2人の捜査官らしき男と一人の女性が出て来た。
 一人は美しいブロンドの髪で、年齢は40歳位の男。
MBI(怪獣捜査局)のサングラスを掛け、
ピッタリとした黒いスーツを着ていた。
この男の名前は覇王圭介。
彼の正体は、人間に変身した宇宙怪獣「ケーニッヒギドラ」と言う、
ギドラ族とバガンゴジラ族のハーフである。
彼は人間に変身した時、25歳と若かった分子生物学者の音無美雪に恋し、
一人娘の音無凛を儲けた。
美雪と覇王の間に生まれた彼女こそ、最初の無症候性モンスターキャリアであり、
人間と怪獣の混血の女の子の『ダンピ―ラ』第1号であった。
 もう一人のMBI捜査官の男は黒髪で、
外国のフットボール選手の様なガッチリとした体格だった。
この男の名前は山根蓮。
彼はJBSのテレビレポーター山根優香の一人息子で、山根瑠璃と言う名前の妹がいる。
地球防衛軍特殊生物犯罪調査部に所属し、顔はハンサムで同じ職場の女子達から人気がある。
彼の正体も実は、かつて東京を襲ったデストロイアと言う怪獣と山根優香との間に生まれた
2人目の無症候性モンスターキャリアであった。
人間と怪獣の混血の男の子の『ダンピール』第1号である。
 母親の山根優香は、1995年のデストロイアの事件後に結婚した山根ゆかりの娘である。
「山岸!久しぶりだな!」
「しばらくぶりだね!」
と山岸はカメラのレンズを蓮に向けた。
 そして運転席からは覇王と同じブロンドの女性が出て来た。
この女性が音無凛。
ブロンドの男の覇王圭介の実の娘である。
彼女は高校を卒業後、アメリカの『ブランドル大学』に留学し、
そこからFBI連邦捜査局)やアメリカの地球防衛軍内で
対テロ戦術CQC(クロース・クオーター・コンバット)の訓練を重ね、習得した後、日本へ帰国した。そして国家公務員の資格を取る為、寝る間も惜しまず勉強を続け、
ついに日本の地球防衛軍のMBI(怪獣捜査局。
また転じて黒服の男を指すMBI=メン・イン・ブラックとも呼ばれた。)
に勤務し、柔道や剣道を学びつつ順調にキャリアを重ねた。
現在、彼女は、SBI(特殊生物情報局)の諜報員となり、
世界の為に働いている。
 ちなみにこの2つの部署は改名後の名前である。改名前はそれぞれ
「特殊生物犯罪調査部」と「特殊生物情報部」と呼ばれていた。
 最初に真鍋は音無凛にマイクを向けた。
 凛は少し緊張した表情で右腕を上げた。
胸元まで伸びたブロンドの髪を優しく撫でた時、山岸が構えている
TVカメラのレンズに、黄金色の鱗の形をした刺青(タトゥー)がチラッと映った。
彼女はふっくらとした顔をカメラのレンズに向け、茶色の瞳でカメラのレンズを眺めると
「おはようございます!音無凛です。大戸島の洞窟で発見された人骨や
呉爾羅伝説にも興味があったので!そのゴジラの起源を知る機会に恵まれて大変嬉しく思います!」
続いて真鍋はマイクを2人に向け、
「初めまして!真鍋ヴェラスコです!」
「こちらこそ初めまして山根蓮です!」
「これは俺達みんなの初仕事だな」
と山岸はつぶやいた。
 大戸島の自然博物館の階段を昇り始めた頃、真鍋は
「これから、長年この大戸島自然博物館の館長を務めている田中健二さんに話を聞きたいと思います!」
と博物館の自動ドアを通り、5人は博物館の中へ入って行った。
 新人日東カメラマンの山岸は持っていたビデオカメラで2階建ての博物館の庭を録画していた。
大戸島自然博物館の中に入って行った5人は広い博物館の展示物を見た。
「ここは面白い場所だな!太古の昔に存在していたものを人間達が集めのか?
よくこんなに集められたもんだな!」
と覇王は心を躍らせ、周りの展示物のガラスケースをまじまじと観察した。

(第2章に続く)