(第63章)『R型暴走事件』から一ケ月後・・・。

(第63章)『R型暴走事件』から一ケ月後・・・。

 

そして翌朝。再び魔王ホラー・ベルゼビュート事、ジョン・C・シモンズは

魔道具を応用した監視カメラで水無月ルカを観察した。

彼女は昨日の出来事を思い出して妊娠検査で妊娠の有無を調べていた。

ジョンの思った通りなら彼女の子宮には魔獣ホラーと人間の混血児を

宿している筈だ。しかし残念ながら50%の確率で妊娠していなかった。

どうやら全身の細胞に賢者の石を寄生させられただけのようだ。

水無月ルカは「ほっと」したような残念そうな複雑な表情をした。

むしろがっかりなのは僕の方だが。とジョンは肩を落とした。

 

HCFセヴァストポリ研究所の魔女王ホラー・ルシファー襲撃事件から

4年後の2030年6月の初夏『R型計画』開始日。

アメリカ合衆国中部アークレイ山脈。

かつては自然豊かであり、かつては登山客でにぎわっていた。

しかし現在は多国籍企業アンブレラ社によるウィルス実験やBOW(生物兵器

研究開発を行う洋館やアークレイ研究所とTウイルス漏洩による企業城下町

ラクーンシティが壊滅した大きな悲劇的な事件によって

この山に登山に来る者は今となってはほとんどいない。

今はウィルスの影響を僅かに残しつつも相変わらず豊かな自然に囲まれていた。

その森の中をデコボコした岩に覆われた整備されていない道を

一台の4WDがエンジンを全開に走っていた。

4WDはラクーンシティよりも遥かに小さい田舎町ラーテルシティに辿り付いた。

続けて4WDからスーザンと言う名前の女性が降りて来た。

その街の保安官は彼女の取り乱した姿から『ただ事では無い』と感じて

BSAA北米支部『生物災害通報センター』に連絡した。

そして小さな田舎町のラーテルシティの保安官の通報を受けてBSAA北米支部から

クエント・ケッチャムと烈花、BSAA所属の医療チームが現場に向かった。

それからスーザンと名乗る女性から事情を聴き、ウィルス検査をしたところ抗体と

『Tエリクサーウィルス』が検出された。のちのクエントと烈花は事件が起こった

現場であるヴィクトリー湖の岸近くに建っているもう一つの洋館に突入した。

BSAAのエージェントの烈花とクエントが突入した洋館内では『R型』

の暴走によって新型T-エリクサー(仮)(E型特異菌有り)ウィルスのパンデミック

(感染爆発)により、大量の植物型ゾンビと二次感染によって突然変異した

無数の化け物となった虫や犬やカラス等がひしめく地獄の世界となっていた。

そしてこの事件起こした原因は『R型』に対するほんの些細な出来事だった。

それはー。現実でも必ずどこかの世界の家でも大人も子供も関係無く集団かあるいは

個人の余りにも酷い行為をする可能性がある。

それと同時に悪い心に加えてとてつもなく見勝手な心でやってしまうであろう。

そんなものである。

その現実でも必ずどこかの世界の家でも大人も子供も関係無く集団かあるいは

個人の余りにも酷い行為をする可能性がある状態を分かりやすく説明するとすれば

例えばSNSによる不特定多数の人間達が個人を袋叩きにして攻撃するいじめ。

また個人の子供の目の前で自分が大切にしていた全ての物を踏みつけて、

踏みにじって、壊して自分の言う事を聞かせようとする見勝手な大人達。

つまり。このー。この『R型暴走事件』は大人の正義と言う名の独善により。

『R型』の精神を追い詰めて破壊したのが引き金となり、全ての悲劇は始まり。

やがて彼女はウィルスの力に溺れ、世界の人々と社会を危険に晒す事になる。

そう、これが『バイオハザードブラッディローズ』。

復讐の薔薇の花の開花。こうしてHCF社とグローバルメディア企業と

民主党多数党内幹事による反メディア団体ケリヴァー壊滅作戦は開始したのである。

『R型』は全ての大人を殺す為に。

クエントと烈花は『R型の暴走』を止めるべく洋館内の仕掛けを解き。

『R型』を説得し、襲い掛かる植物型ゾンビや二次感染で変異してしまった

昆虫や犬やカラスと戦い、奔走して行くのである。

勿論現場にはHCFのスパイのあの女もいたし、秘密組織ファミリーから

ジル・バレンタインとかつてエヴリンからの攻撃と洗脳からイーサン夫妻に

助けられて生き延びたベイカー家のあの少女もいた。

勿論、この話はまた別の話である。

 

そして『ミカエル』の物語の舞台は『R型暴走事件』が発生してから

約一ケ月後のニューヨーク市内のチェルシー地区へ戻る事になる。

それからチェルシー地区のジルの自宅近くの公園も地面にジルと

エア・マドセンは体育座りでずっと聞いていた。

やがてエアはHCFの組織として隠すべき情報は話さず。

うまくある程度の身の上話から魔人フランドールとの戦い。

魔女王ホラー・ルシファーとの戦い。

そして自分の恋人のストークスと自分を守る為に母親が魔女王ホラー・ルシファー

に魂と肉体を差し出して憑依された事。またのちに自然神となって

母親が目に見えない存在でありながら自分をこちら側(バイオ)の世界の天空で

ずっと見守っている事を大体、全てジルに話して聞かせた。

やがてエアの長い話は終わり、ようやく口を閉じた。

ジルは黙って長い間、エアの話を聞いていた。

それからエアが話し終わると長い間、ジルは沈黙した。

やがてジルは静かに口を開き、こう言った。

「成程ね。貴方の家族と魔女王ホラー・ルシファーに何があったのか?

ようやく分かったわ。だから。復讐のために私を狙ったのね。ようやく納得したわ。」

エアは茶色の瞳でジルの顔をじっと見ていた。

しばらくジルもエアの顔を青い瞳でじっと見ていた。

間も無くしてジルは再び口を開いた。

「でも。復讐なんかしちゃ駄目よ。いい!よく聞きなさい!」

ジルの諭し方はとても分かりやすくシンプルだった。

「『怒りや復讐心から真の強さは生まれ無い』何をどうやってもね。

賢者の石の力は貴方の場合は魔女王ホラー・ルシファーの力。

つまり悪魔の力。ちゃんと人間らしく善い方向に正しく。

しっかり、慎重に扱わなければならないのよ。」

その賢者の石の強大な力はいずれはアルバート・ウェスカー

アレクシア・アッシュフォード、ウィリアム・バーキン

ジェームズ・マーカスのようにいずれその力は

我が身を滅ぼす結果になってしまうでしょう。」

それをエアは黙ってジルの言葉を聞いていた。

「いい!エア・マドセン!本当に強い人はね!

守るべき者の顔がしっかり見えている事なの!

それと彼らの為に生きる意志を強く持つ事。それが本当の強さなの。

ただ他人を言葉で縛り付けるだけで何も行動しない怠け者の人間の力なんて!

たかが知れているの!!そんな奴は大体大した事無いのよ!

もっと強い意志を持ちなさい!その場の感情に流される事無く。

自らの守るべき物の顔を思い浮かべなさい!自分の力はどうあるべきか自分個人で

答え無き答えを探し続けなさい。それが出来て初めて一人前の責任のある大人なの。

きっと貴方の母親も恋人もきっと貴方の復讐よりも貴方が破滅する事無く

幸せに家族を持って暮らす事を望んでいる筈。」

エアの脳裏に母親の最後の笑顔と好きな『2B。ヨルハ2号B型』の

コスプレの服を買って笑顔になったエアの恋人のストークスの顔。

他にもリー・マーラ、エイダ・ウォン、保安部長で父親のブレス。

友人で隊員のマッド、グーフィ、ウース、他の隊員達のイタズラに成功して

腹を抱えて笑い転げる姿が次々と脳裏に思い浮かんだ。

ああ。俺!本当になんて馬鹿な事をしようとしたのだろう?

エアはこの場で自分がしようとしていた行為が馬鹿馬鹿しく思えた。

こんな事をしたってきっと誰一人喜びやしないんだ!俺には!

俺には恋人のストークスと親父のブレス・マドセン、マッドやウース他の隊員達。

エイダ・ウォンさんにリー・マーラさん。こんなに沢山の人達に囲まれて幸せなのに。

これ一人の子供じみた復讐心のせいで危うくそれを壊してしまうところだった。

「分かりました。復讐は諦めます。御免なさい。」

エアは立ち上がり、ジルに頭を下げて今まで非礼を詫びた。

ジルはちょっと驚きつつも穏やかにこう返した。

「ふう!どうやらちゃんと分かってくれたようね。」

ジルはエアはきっと根はエイダ・ウォンと同じで悪い人じゃないだと思った。

この子は一時の怒りの感情に支配されていただけ。

それから解放されれば素直で良い子だと思った。

するとそこに東洋人の女性が現れた。

サングラスにトレンチコートを着た美女。

最初はエアは誰だか分らなかったが美女の声を聴いた時。

直ぐに声の主がHCFの産業スパイのエイダ・ウォンだと分かった。

「やっと!見つけたわ!エア・マドセン!もう!

ニューヨークのあっちこっち長い間、探しまくったのよ!おかげで汗だくよ!」

 

(第64章に続く)