(第28章)暗黒の力

(第28章)暗黒の力

 山岸は咳払いをして
「要は!形の無い物に形を与えるのさ!その物質をゴジラ細胞内から最初に発見したのは……
篠田雄一って人で……オルガナイザーG1は肉体の再生能力も持っているんだ!
だからゴジラをいくら攻撃してもすぐにその物質の力で再生してしまう……」
友紀は
「へぇ……凄いわね……」
すると静かに凛は
「でも……ゴジラ以外の生物にはあの強大な力は制御出来ないわ!
普通の人間や宇宙人が体内に取り込めば!制御出来ずに精神も肉体もその物質に蝕まれ!
闇に堕ちるわ!」
山岸と友紀は凛の言葉に絶句した。

 美雪のところに、東京練馬区の「特殊生物研究所」から、
中国の遺跡付近で採取された黄金と漆黒と暁色が混じった破片の
分析調査報告書が届いていた。
 美雪と神宮寺博士は調査資料を熱心に読み始めた。
それは驚くべき内容だった。
「破片を分析した結果、北海道の伊達市警察署に拘束中の宇宙人のレイが供述していた
『デスバガンバクテリア』と言う変異した暁アメーバの破片の一部だと判明した。
その物的証拠として凛さんのG塩基も検出された。
さらにオルガナイザーG1に類似した物質も同時に検出された。」
もう1枚の調査資料には
「M塩基とオルガナイザーG1、
この2つの物質を比較した結果、多くの類似点が見つかった。
また過去に発見された暁色のクリスタル状の寄生生物から検出された
ゴジラにそっくりのDNAを詳しく分析調査したところ、
PS45の他にオルガナイザーG1に類似した物質が検出された。」
 神宮寺博士は隣で無言となっている美雪の方を見て
「それでサンドラの事だが……彼女も恐らく……変異したオルガナイザーG1を制御する為に、
美雪さんのG塩基と凛さんのG塩基を持って変異した暁色のバクテリアのDNAを組み込ん
だんだと思う……しかしそれでも制御出来ずに暴走してしまっている!」
しかし深刻な顔をした美雪の顔を見た時
「美雪さんどうしたのかね?気分が悪いのかね?」
と尋ねた。
 美雪は両拳を固く握りしめ、やりきれない怒りを必死に堪えていた。
 彼女は震える口調で
「どうして?宇宙人達や人間達は……ゴジラの力を求めたがるんでしょうか?」
と小さくつぶやいた。
 神宮寺博士は心配そうな顔で、怒りを堪え全身が震えている
美雪の方を黙って見ていた。
 美雪は再び神宮寺博士の方を向いて静かに口を開くと
ゴジラの力は……生まれつき障害がある子供達や難病や大事故による大怪我を負った
人々を治療する事は出来ます!
でも!サンドラ達は!……ゴジラの力を道具の様に扱って!
あたし……どうしても許せないんです……
ゴジラの力を自分勝手に利用したのが……どうしても!どうしても!
許せないんです!怒りで!怒りで!頭がいっぱいなんです!」
神宮寺博士は
「その君のゴジラを愛する気持ちは解る!しかし……もう少し
冷静にならないと!君らしくありませんよ!」
しかし美雪は
「だって!彼女は……あのままじゃ!サンドラは!
精神も肉体も制御出来無くなって!いずれ彼女は……
デスギドラやデストロイアバガンと同じ様に……『死』と『破壊』と『欲望』に
染まった!暗黒の力を手に入れてしまう……かも知れません……」
 神宮寺博士と美雪は無言となり研究所内は長い間、重いムードに包まれた。
それから神宮寺博士は重い口を開き
「暗黒の力……か?確かに君の言う事は説得力がある!
それを我々が何としてもそれを阻止しなくては!
なんとかそのウィルスを根絶するワクチンを開発しなければ!」
と言いながら、研究所内を行ったり来たりして考えた。
美雪も
「はい……でも!間に合うんでしょうか?」
神宮寺博士は
「大丈夫ですよ!きっと間に合います!
間に合えば彼女の命も救えるかも知れません!」
と不安な表情の美雪を励ました。
美雪は少し元気が出た様子で
「ええ!必ず!……間に合わせましょう!」
と少し明るい声で答えた。

 網走の病院では、絶句した2人を見た凛があわてて
「あっ!いや……どうしよう……怖がらせて御免なさい!
お母さんがそう言っていたのを聞いたのよ!」
とあわてて取り繕った。
 凛はふとため息をついた。
友紀は
「どうしたの?」
凛は
「いや……関係無いけど……
自分が書いている小説について何だけど……」
友紀はまた笑顔になり
「あの例の小説ね!」
山岸は
「ブログで前半の途中まで見たよ!」
しかし凛は
「まだあたし小説なんて書くのは初めてだからさ!
一般向けの作品にしたつもりなのに……
なんかあたしが書くとマニアックな人向けになっちゃうのよね……そこが悩みなの!」
とため息をついた。
山岸は
「多分……前半が長過ぎるからじゃない?
それに僕達みたいな一般に読者にはかなり難しい用語が出てくるし!」
凛は
「前半の多くの謎は小説の後半でようやく明らかになるけど…
…なんだか自己満足だけに終わっちゃったわね……
前半が長過ぎてあれじゃ読者の方が疲れるわ!
あと別々だった3つの作品を全部混ぜちゃったから
主人公が誰だか分らなくなっちゃったわね!」
と近くにあった新聞を取り出し
「法律がどう成立されるのかについても!もっと勉強しなきゃ!
最近新聞やニュースも熱心に見ていないし……」
と言うとしばらく新聞を読み始めた。
山岸は
「それなら一流の小説家の本を読んだらいいよ!SFじゃなくても
SFに出来るアイディアはいくらでもあるよ!」
と3冊の小説の本をカバンから取り出し熱心に進めた。

(第29章に続く)