(第29章)『リミッター』

おはようございます。畑内です。
久しぶりのゴジラの自作小説です。

(第29章)『リミッター』

 凛と友紀の病室で3人が偶然テレビを付けると、臨時ニュースをやっていた。
「番組の途中ですが!ここで臨時ニュースを伝えます!今日午
後未明!網走にゴジラが上陸しつつあるとの情報が届きました!
地球防衛軍の関係者の話では!ゴジラが上陸する可能性は極めて高く、
付近の住民に避難警報が発令されるとの事です!
臨時ニュースをお伝えしました!いや!また新しい情報です!
同じく今日未明!網走厚生病院付近に謎の生物が現れました!
あっ!今!現場の映像が届きました!」
 画面が変わり、ローソンの駐車場で、
地元の警察やインタポールが拳銃で、
何か良く分からないがゴジラによく似た青黒い影に向かって発砲していた。
 良く見ると巨大なヒグマの様な長い鉤爪がチラッと見えた。
それは巨大な太い腕で3台のパトカーを薙ぎ払い、パトカーは
ローソンの窓に直撃してはじき飛ばされた。
 その様子を3人がテレビで呆然と眺めていると、友紀が
「もしかして洋子と長野先生を襲ったって言う例の女かしら?」
山岸は「その可能性は十分あるね!」
ふと気が付くと凛がいつの間にか病室の窓を見ていた。
山岸は凛の方へ歩いて行くと
「どうしたの?またあの……」
と言い掛けた時、凛は
「あの人は……心を失って獣になったわ……」
と言った。
それから凛が病室から出ると、廊下では蓮と洋子が言い争いをしていた。
洋子は
「あなたのやる事は!間違っているわ!絶対に!」
蓮は
「君の気持ちは分かる……けれど……やらなくちゃ!」
洋子は
「何を無茶なこと考えているの?あたしと
長野先生を襲ったあの女を殺すなんて?
あたしたち高校生よ!急にどうしたの?」
蓮は
「あいつは危険だ!放っておけば!たくさんの人達が犠牲になるんだ!それにさっき病室で話したろ?
『すべてを支配する力はあり得ない』って?」
と大声で言い返した時、そこに凛が現れた。
蓮は憎々しげな表情で
「何の用だ?!」
とキツイ調子で言った。
凛は静かに
「洋子ちゃんと長野先生を襲ったサンドラって人……残念だけど……獣になったわ……」
洋子は「どう言う事?」
蓮は
「つまり!身も心もゴジラになってしまったって事か?」
と歯ぎしりしながら答えた。
凛は
「今からはっきりと警告して置く!悪い事は言わないわ……」
と言い掛けた時、蓮はさらに大声で
「今!彼女を抹殺しないと地球全体のサイクルが崩壊する事になる!」
しかし洋子は
「二人とも何の話?怪獣退治なんて考える必要はないわ!やるのは地球防衛軍の仕事よ!」
凛ははっきりと
「例え……地球防衛軍が彼女を殺しても!何の解決にもならないわ!」
その言葉に洋子は少し黙った。
さらに凛は以前小美人に言われた事を思い出しながら
「あたしは怪獣という『神』と人類を繋げる巫女の様な存在…
…そしてあたしとあなたが持っている力はあくまでも
地球に住む生物の生命のサイクルを維持する為の『リミッター』に過ぎないの!
『ミュータント』や『カイザー』みたいに戦って世界を支配する為の力じゃ無い!……
あたし達の持っている『リミッター』の力は科学で全て解明されていないし……
利用されてもいけない!もし貴方がその力で彼女とあたしを殺すと言うのなら!
あたしはその力を使って彼女とあなたの命を助けてみせるわ!……」
蓮は馬鹿にした口調で
「俺は悪魔でお前が天使か?甘いね……俺は必ずその力を使い!
お前とゴジラを殺し!父の恨みを晴らしてみせる!
そして今まで崩壊しかけた自然のサイクルを元通りに……」
と言い掛けた。
洋子はこの会話を聞いて
「一体何の話をしているの?」
と不審に思った。
そこに原田先生が通りかかり大声で
「コラ!ここで大声を張り上げるな!患者達に迷惑だぞ!」
と怒られた。
 蓮はそのまま原田先生と凛を睨みつけるとその場を歩き去った。

 怪獣が民家の近くのローソンの駐車場に出現する1時間前。
サンドラはスーツケースからノートパソコンを取り出し、
インターネットでゴジラに関するネット新聞の記事の詳細をマウスでクリックした。
「11月22日オホーツク海沖でラドンが謎の消滅!?」
と大きい見出しで書かれていた。さらに本文を読むと
オホーツク海の沖合の海底で休眠中のラドンが青い粒子となって
消失する様子を国連の調査隊が撮影した。」
と書かれていた。サンドラが動画をクリックすると、
青い粒子と共にラドンが徐々に消失する様子が現れた。
それから別の記事を読むと「オホーツク海で眠っていたラドンは、
目撃情報や小笠原怪獣ランドの情報により、つがいだったことが分かっている。
ラドンが生物学的に死亡したのかどうかは不明だが、
恐らく普通の生物の死に方とは全く異なる様である。」
その記事を読んでいたサンドラは
ラドンは死んだのね……」
とロシア語で小さくつぶやいた。
 その時、再び全身に激痛が走った。さらに民家の外に多くの
パトカーのサイレンや赤いランプが窓から見えた。
 しかしそれさえ気にする余裕もない程、これまでで一番激しい激痛だった。
そしてまたサンドラの全身が青緑色の鱗に覆われ、両腕が太くなり、
ヒグマのような巨大な爪に変わり、背中からゴジラの背びれが生え、
さらに腹からも6本の触手が生え始めていた。
 そして国際警察や地元の警察が催眠ガスを窓から投入し、
しばらくして突入した機動隊が聞いたのはゴジラに似た咆哮だった。

(第30章に続く)

では♪♪