(第51章)宇宙レトロウィルスとM塩基

(第51章)宇宙レトロウィルスとM塩基

美雪と神宮寺博士は、中国の遺跡跡地で回収した
暁、深紅、茶、黒、赤色、また新たに緑色の謎の破片のサンプルを分析していた。
ひょっとしたらこの破片のサンプルに何かワクチンの材料になる物質があるかも知れないからである。
 美雪は腕組みをしながら、過去に発見された暁のアメーバ
『デスバガンバクテリア』とその変異体、『デストロイアウィルス』ついて必死に考え込んでいた。
神宮寺博士は一枚の資料を取り出し
「それで……何か手掛かりが無いかと……M塩基についてもう一度調べ直して見た!」
FBI捜査官の女は神宮寺博士から受け取った資料を読み始めた。

その資料にはこう書かれていた。
「超小型受信機のMウィルスと生物兵器用の暁色のMウィルスは、
地球に生息するバクテリオファージの様に、
『デスバガンバクテリア』に感染して変異していた
『宇宙レトロウィルス』の遺伝子を元に開発されたものだと判明した」
 美雪はいくら考えても何も思い浮かばず、落ち着かない様子で、
何気なく電子顕微鏡で、何らかの原因で崩れて塵と砂になった色とりどりの破片を見た時、
「神宮寺博士!これを!」
と思わず大声を上げた。
神宮寺博士は
「どうしたのかね?美雪さん!」
FBIの女も
「どうしたんですか??美雪さん!!」
と言って順番に2人は電子顕微鏡を覗きこんだ。
緑、暁、深紅、茶、黒、赤色の破片の中に
微小の卵の様な物が発見された。
その卵の様な物を拡大して良く見ると宇宙植物の花粉だった。
またその宇宙植物の花粉をDNA調査で調べてみると、
M塩基に類似した物質を始め、緑色のデストロイアや中国の地下で凛達に
襲いかかったあの暁のアメーバに類似したDNA、
ゴジラキングギドラそっくりのDNA等が多数検出された。
他に『PS45』と呼ばれる幻覚剤も検出された。
美雪は
「やっぱり……本来は宇宙植物の花粉の様な物だったのね……」
神宮寺博士は
「その宇宙植物の花粉に感染する宇宙レトロウィルスが存在して……」
美雪は
キングギドラバガンラドンゴジラに寄生して、複製を作り上げて肉体を乗っ取り!
いえ……キングギドラは寄生されるとデスギドラに変異するのかも知れないわ!
バガンラドンは、あの暁色の、舌の長くて鋭い爪と牙を持つ凶暴な怪物に!!」
神宮寺博士は
「さらに、宇宙植物が媒介した宇宙レトロウィルスのような様々な宇宙病原菌が、
25億年前の微小生物に感染してデストロイアになったか。
あるいは現在の人間が感染する様々なウィルスや細菌をこの地球に媒介したか。
これはあくまでも想像の話だが……もしそうだとすれば!!
これは世紀の大発見かも知れない!」
FBI捜査官の女は「ゴホン!!」と大きく咳払いをすると
「世紀の大発見に水を差す様で申し訳ありませんが……
それよりも早くこの宇宙植物が媒介したウィルスを駆除するワクチンの開発に集中すべきでは?
それにその世記の大発見には疑問点があまりにも多すぎます!!」
神宮寺博士はしばらく無言になり
「いや……申し訳ない。科学者としてついつい興奮してしまい……
そうだね!美雪さんすぐにこの破片の花粉のサンプルを調べるんだ!」
美雪は少し赤くなり
「はい……」
と答えるとすぐに手袋をつけてサンプルのシャーレを持ち、分析室へ向かった。

 ゴジラは放射熱線を放った。
 サンドラは青白く光る熱線を見るなり、素早く漆黒の翼を広げ、ジャンプしてかわした。
その時、ゴジラの脳裏に
「綺麗な青い炎ね!」
と声が聞こえた。
 ゴジラは天を見上げ、漆黒の翼で飛び上がったサンドラを鋭い眼で睨みつけた。
更にゴジラの脳裏に
「でも!その青白い炎は大勢の人間や怪獣や町を焼き尽くし、放射線を撒き散らす!邪悪な炎ね!」
とサンドラの嘲笑う声が聞こえた。
ゴジラはサンドラに向かって激しい咆哮を上げた。
サンドラはそのまま上空からゴジラに向かって超音速で急降下し、
ヒグマの様な太い左腕を振り回し、ゴジラに殴りかかった。

ゴジラは両手でその左腕を掴むとそのまま振り回し、投げ飛ばした。
しかしその瞬間、両腕に激痛を感じた。
ゴジラが見ると両腕が凍りつき凍傷になっていた。
サンドラはビルに叩きつけられ、両足を踏ん張り、
止まるとまた空高く舞い上がった。右腕を振り回してゴジラを弾き飛ばし、
真っ白な雪が降り積もった公園に叩きつけた。

 蓮と凛の脳裏にまた映像が流れた。
(外国。青い車……まだ雪が降り積もっていない通学路の道路)
(赤いリュックサックを持った金髪の女子高校生)
(迫る青い車
(キキキキッ!とブレーキの音)
(ドーンと何かがぶつかった大きな音)
(その赤いリュックサックを持った高校生は青い車に撥ねられ、
ガードレールを越えて崖から転がり落ちた。)
「これは?一体?」
と凛。
「赤いリュックサックの高校生??まさか?サンドラか?」
と蓮。
FBI捜査官の男は興味深々な表情で
「何??サンドラの映像??」
凛は
「ええ!間違いないわ!サンドラが青い車に撥ねられる映像が脳裏に浮かんだの……」
ガーニャは
「なんだって??」
と思わず大声を上げた。
凛は
「きっと!怪獣化しても!意識と記憶だけはどこかに残っていて!
『助けて!』って訴えているわ!
どうやったら彼女を救えるかしら??」
と腕組みし、洋子の顔をみた。
洋子はメイスンやシャランがサンドラに殺される様子を目の当たりにして、
両手に顔をうずめながら
「何も……殺すことなんかないのに……どうして復讐をしたがるの??彼女たちだって罪を償って……」
とただショックですすり泣いていた。
 レベッカも美人のロシア人の姿に戻り、先程目の前で起こった
惨劇にただショックで呆然とその場で棒立ちになっていた。

(第52章に続く)