(第10章)ジラの復活

(第10章)ジラの復活

再び小笠原怪獣ランドの地下研究所。
美雪は不安な表情のまま、隣を歩いているマークに
「一体この研究所で何をしているの??」
と尋ねた。
しかし彼は彼女の言う事を無視して
「まさか……君が私を差し置いて怪獣と人間との間に
一人娘をもうけていたとは……正直思ってもみなかった……」
美雪は
「あたしだって……彼が怪獣だったなんて正直思っても見なかったわ……」
マークは苦笑しながら
「そうか……お互い様だな……」
と答えると美雪を2階建ての巨大な研究室に案内した。
 研究所の2階のブリッジには北村とローランドが何か資料を
めくり話し合っていた。
 マークは2階にいる北村に
「例の怪獣は?」
と話しかけた。
すると北村は2階から大声で
「G血清を棺桶の穴から注射器で投与して数時間後に水槽の中で目覚めました!」
マークは
「よし!よし!」
と笑みを浮かべた。
美雪は混乱した表情で
「例の怪獣って?何なの?」
とつぶやいた。
マークが手を「パチッ」と鳴らすと、巨大なスクリーンにある録画映像が映された。
 録画映像にはいまここにある水槽の底に安置された棺桶が映された。
マークは
「この映像は君が来る1週間前に2階の方で撮影されたものだ!」
 水槽の底に安置されている棺桶の蓋の一部が開き四角い穴が現れた。
それから長い注射器が挿入され、血液らしきものが流し込まれた。
 長い注射器が水槽の水から上がり、天井に収納された直後、
棺桶の中で「グワアアッ!」と猛り狂う怪獣の咆哮と
「ガンガンガンガン!!」と棺桶の蓋を激しく叩く音が強化ガラスの水槽内の隅々まで響き渡った。
その大騒ぎは5時間以上も続き、ようやく怪獣は静かになった。
この録画映像の後、美雪は恐る恐るマークに
「ねえ?この棺桶の中にいる怪獣はどうなったの?」
と聞いた。
マークは巨大なスクリーンに映し出された録画映像を指差し
「見てれば!分かるよ!」
と答えた。
水槽の底に沈められた棺桶の蓋が再び「ガン!ゴン!」と騒がしい金属音を鳴らし、
激しく蓋が揺れ始めた。美雪は驚き思わずあとずさった。
 2階にいたローランドと北村も眉を潜ませその映像を見ていた。
 やがて棺桶の蓋はまるでベニヤ板の如く真っ二つに綺麗に切断された。
 それからもうもうと立ち込める水の泡の中、逆三角形の頭部
に、3列に並んだゴジラに類似した背びれ、イグアナに類似した身体と長い尾を持つ怪獣が現れた。
その姿を見た美雪は
「あっ!」
と声を上げ、
美雪は
「あれは!まさか?ジラ?」
マークは自信満々な表情で
「そうさ!あの怪獣はジラだ!1973年にニューヨークのマッハタンを襲った
個体の死体から採取した体細胞を遺伝子操作で改造したものだ!
ただ……ポリネシア諸島のフランスの核実験やニューヨークのマッハタン
を襲った記憶があるのか良く分からないがね!」
と答えた。

 地球防衛軍の本部に着いた凛が、自分の管轄の
『特殊生物犯罪調査部』の部屋に向かって廊下を歩いていると、
ワンセグ携帯で洋子のプロレスを見ていた山根蓮と出くわした。
 蓮は思わず興奮した顔で両手を上げ
「やった!勝ったぞ!」
と大声を上げた。凛も思わず小さい声で
「えっ?嘘?!本当??」
さらに蓮は人目もはばからず興奮した口調で
「やったぁ!極悪プロレスラーにひと泡吹かせたぞ!」
そこに尾崎中佐が歩いて来て蓮の横で大きく咳払いした。
蓮は大慌てで携帯をポケットに隠し
「あっ!尾崎さん……」
その様子を見ていた凛は蓮の危機を察知し
「あっ……マズイわね……」
とつぶやくとわざとらしい声で
「尾崎さん!御免なさい!遅れちゃって!」
と話しかけながら、すぐに仕事の話に切り換えようと、
青い幾つもの矢印が書かれた地図を取り出し
「実は……あのX星人が人工的に作った種族の『ノスフェラトゥ』達が
小笠原怪獣ランドに集まり始めています!」
尾崎中佐は
「実は……その事について……緊急会議が行われる所だ!
最近太平洋海域で大量のクロマグロが消失する事件が相次いでいる!
またX星人から戦争を煽るようなメッセージが届いたとの情報も入っている……」
蓮は信じられないという顔で
「まさか?X星人がそんなメッセージを今更……地球に送りつけるなんて……何故だ?」
尾崎中佐は
「……彼らは、自分の体内にあるM塩基を大量に破壊する兵器を、
地球人やX星人反乱グループのノスフェラトゥ達が隠し持っているのではと疑っているらしい……」
凛は納得した口調で
「彼らならそのM塩基の大量破壊兵器をどこかに隠している可能性は高いわね……」
それから尾崎は
「そのX星人から戦争を煽るようなメッセージについては
これから緊急会議で詳細が伝えられる予定だ!」
そのとき尾崎は何かを思いだした様子で鞄から
凛と同じく一枚の資料を取り出したので思わず2人は反射的に身構えていたが、
尾崎中佐は
「実は……マークについて新しい情報が入っていて……」
凛はその資料を蓮から受け取って読むとみるみる表情が変わり
「まさか……尾崎さん!」
蓮もその資料を読み
「えっ?」
という顔をして
「まさか?彼は薬物中毒で……錯乱して自殺した?どうなっているんだ??」
凛は
「まさか?彼もノスフェラトゥなの……」
とつぶやいた。
尾崎は
「恐らく……」
と言った。そして3人は会議室へ歩いて行った。

(第11章に続く)