(第9章)不安な噂

こんにちは久しぶりにゴジラの自作小説を載せます。

(第9章)不安な噂

東京ドーム内では大勢の観客が歓声を上げていた。
 その観客席の中にサングラスと黒い服に身を包んだ音無凛と
大きなカメラを構えた山岸雄介の姿もあった。
山岸は真剣な目つきで
「ねえ?この席さ!本当に大丈夫?」
凛は苦笑しながら
「大丈夫よ!」
「でも!知らなかったな!洋子ちゃんがプロレスに出るなんて……
最初は蓮君がプロレスラーになるのかと思っていた!」
「確かに……洋子の彼氏の山根蓮はラグビー選手みたいな
がっしりとした体格だったわね!」
とリングの上に上がって来る、鍛えられた筋肉と体格を持つ相手プロレスラーと、
細身の女性の洋子を見比べながら凛は密かに考えていた。
明らかに体格差があり、山岸と凛の心に不安が何度もよぎった。
やがてゴングが鳴り、相手プロレスラーの攻撃が始まった。
相手プロレスラーは
「ウガアアッ!」
と獣の咆哮を上げ、いきなり洋子の首を片腕で掴み、
グイグイ締め付け、持ち上げると勢いよく投げつけた。
彼女はリングの床を転がり、倒れた。
凛は思わず大きな声で
「洋子ちゃん!大丈夫!がんばって!立ち上がって!」
山岸は悲鳴に近い声で
「あわわ……駄目だ!危なっかしくて見てられないよ!」
それから洋子は怒りで牙を向き出し、すぐに立ち上がるとそのまま助走を付け、
真正面から相手プロレスラーの鳩尾を思いっきり蹴り飛ばし反撃した。
鳩尾を蹴られたプロレスラーは激しい痛みと呼吸困難のあまり両手で鳩尾を抑え、
リングの上で苦しそうにのた打ち回っていた。
観客席から
「おお~っ!」
と歓声が上がった。
凛は興奮した口調で
「凄いわ!洋子ちゃん!真正面からのキックなんて!!」
山岸は思わずため息をつき
「鳩尾……かなり痛そうだな~」
とつぶやいた。どうやら山岸は痛いのはあまり好きではないらしい。
 その時、凛の携帯に着信音が聞こえた。
 凛はすぐに携帯を取り
「はい!もしもし」
と電話に出た。
山岸は唖然とした顔で
「こんな何万の観客が騒いでいる中、良く僅かな着信音も聞こえたな……。」
しかも携帯からは怒鳴り声と共に
「おい!特生部の凛!一体?何処で油を売っているんだ!」
凛は声の主のあまりの剣幕に思わず耳から携帯電話を離した。
しばらく凛は電話の主と話し合った末、携帯を切り
「御免!もう!行かなきゃ!」
山岸は
「分かった!それじゃ!洋子ちゃんのマイクパフォーマンスも見られないね!」
凛は席から立ち上がり
「大丈夫よ!またテレビやゲオのレンタルDVDで見られるわよ!」
と答え、静かに席を立つ時、額に汗をにじませ必死に戦おうと
する洋子の勇ましい顔が見えたので、凛は笑顔で
「がんばってね……」
と小さい声で言うとその場にしゃがみ、観客の邪魔にならないように早足で歩いて行き、
東京ドームの外に出ると自分の赤い車の『ヴァンガード』に乗り、地球防衛軍の本部に向かった。

 美雪とマークは小笠原怪獣ランドの地下研究所の長い廊下を歩いていた。
 ふとマークは思い出した顔で
「そう言えば!まだ持っていたな?」
美雪は眉をひそめ
「何を?」
と尋ねた。
マークは密かに美雪の耳元で
「君と僕のコルト・ガバメント!」
美雪は険悪な顔のまま少し大きな声で
「まだ持っていたの?あたしはいらないわよ!」
美雪の顔を見たマークは苦笑しながら
「失礼!でも!あくまでも護身用だろ?」
美雪はふと『洞窟専門の関係者以外立ち入り厳禁』と書かれた
看板の前を歩いているマークの目の前で立ち止まり
「それより!どうして……今更あたしの前に現れたの?」
マークも立ち止まり
「偶然さ!いや!運命と言うべきかな?」
その時、美雪はその看板の隣の巨大なドアの窓越しに巨大な洞窟らしき穴と
60名以上の警備員らしき人物に気付きマークに
「この洞窟は何?」
と尋ねた。
マークは
「最近、我々の独自の調査で発見したここよりも
遥かに深くかなり複雑に入り組んだ未知の巨大洞窟だ!」
美雪は驚きのあまり上ずった声で
「そんな!洞窟がこの小笠原怪獣ランドに存在していたの??」
マークは嬉しそうな顔で
「まだ調査中だが……この洞窟の入口から数キロ先に
海水と淡水の入り混じった地底湖が無数に見つかっている!
またその地底湖付近からは微量の放射線も検出されている!もしかしたら?」
「もしかしたら?ゴジラが通る道?」
「その可能性は高い!いや!むしろ!ゴジラを始め
他の怪獣達しか知らない怪獣道なのかも知れない!だとしたら大発見だ!」
と興奮した口調で話していた。
美雪が反対方向に向き、一番右端のドアを見ると、そこには
「バイオセーフティレベル4」と書かれた研究ラボが見えた。
 その研究所のラボ内では黄色い目立つ宇宙服と
酸素マスクを着た大勢の研究員が試験管や医療器具を忙しそうに動かしていた。
 その研究所の壁に張られた巨大な強化ガラスの先には冷凍保存されたクロマグロが、
氷で敷き詰められたガラスの箱の中に陳列されていた。
黄色い宇宙服を着たローランドは英語で
「どうだ?G血清は?」
と隣で同じ服を着ていた北村に尋ねた。
北村は
「ああ……あのジラを使ったG血清の実験は今日の午前4時の予定だ!」
ローランドは嬉しそうな顔で
「いよいよG塩基を持つゴジラの細胞を移植させて巨大化させ
たアオシソウの液体を注出し、ジラの血液と混ぜたG血清の効果が試される時だ!」
北村は
「ああ!凄いね!でも……」
とふと声が小さくなり俯いてしまった。
ローランドは心配そうな顔で
「北村?どうした?」
北村は首を振り
「いや!なんでもない!」
「実は……私がマークから聞いた噂によれば!ジラの実験が成功すれば、
G塩基を持ち、M塩基を持つ生物を喰い尽す怪物と
して生まれ変わるとか何とか?」
「まさか?そんな事は有り得ない!単なる冗談さ!」
と冷静を装い答えた。2人は頭の中で必死に頭ごなしに否定しようとしていた。
 何故ならそれが実現すれば……X星人はおろかミュータント
が絶滅してしまう……そんな事はありえない……けっして……けっして……。

(第10章に続く)

もう2章だけ変更します。
さっき章を間違えた(汗)

では♪♪