(第12章)謎の老人

こんにちは畑内です。
ゴジラの自作小説変更します。
前半はかなり物凄いショッキングなので
お子様が読む際はご注意下さい。

(第12章)謎の老人

 美雪がジラの水槽の前に現れた大きな箱を見ていると、突然
「グオオオオオオッ!」
と唸り声が聞こえ、美雪は思わずギョッとした。
 それから大きな箱はジラの水槽の中に徐々に沈められた。
そしてその箱が開けられた途端、箱の中から長い暁色の触手が何本も飛び出し、
続いて暁とオレンジのアメーバに覆われた内臓によく似た形の怪獣が飛び出した。
生きながら腐食しているようだった。
「黒マグロさ」
とマークが言った。
その時、「バシャーン」と水しぶきを上げ、
逆三角形の頭が見えたかと思うとジラが大口を上げ、
その怪獣の腸に食らいついた。
怪獣は悲鳴を上げ、触手を振り回し、暴れまわった。
 しかしジラは容赦無く怪獣の腸を食いちぎり、おびただしい量の膿と血が水槽に広がり始めた。
 美雪は思わず背筋が凍りつき、マークの隣で棒立ちになった。
水槽の中の水は血で染められ、ビールの様に泡立ち、津波のように左右に激しく揺れた。
 その間にも「ガブッ!パリパリパリ!バリュウ!バリュウ
ゴキッ!」と肉を食いちぎる音と骨を砕く音が同時に聞こえた。
 食いちぎられた怪獣の腸から流れた膿と血が、
まるでやかんに入れたお湯の様に沸騰し始めたと同時に、
マグロ怪獣の全身がまるで風船のように膨張した。
熱さと膨張した全身の痛みに耐えられず、黒マグロ怪獣は苦しそうにのた打ち回った。

マークは狂気の笑みを浮かべ
「あいつも俺と同じ、世間はおろかX星人にまで裏切られたんだ……」
美雪は一瞬だけ垣間見せたそのマークの狂気の笑みを見て
徐々に頭が真っ白になって行くのを感じた。
 また真近で見ていた他の研究員は、その様子に耐えられず思わずジラの水槽から顔をそむける者、
吐き気を覚え、あわててトイレに駆け込んで行く者、
嫌悪感を募らせながら水槽を睨みつけている者等、反応は様々だった。
 黒マグロは触手をジラの首に巻きつけ必死に抵抗した末
「グァァァァァァァァァッ!」
と断末魔の声を上げ、全身は風船のように爆裂し、どす黒い塵となった。
水槽には綺麗に切断されたジラの右手らしき物がプカプカ浮いていた。
しかしジラはそれを拾って元通りにくっつけた。
 とうとうジラの水槽の中の惨劇に耐え切れなくなった
美雪はパニックになり、両手で頭を強く抱え、大きく空気を吸い込むと
「グエエエェェッ!」
と水槽の中のジラが大きく吠えたとほぼ同時に、
「イヤアアアアアァァァッ!」
と凄まじい悲鳴を上げ、やがて全身の力を失い、
隣に立っていたマークの胸に倒れ込み完全に失神した。

東京浦安市役所のすぐ傍にある自宅で山岸は凛から借りたDVDを見ていた。
 ちなみにそのDVDが1954年に東宝が制作した記念すべき第一作
ゴジラ』である事は言うまでもないだろう。
 魚達が優雅に泳いでいる水槽が突然、真っ白に泡立ち、
水槽の中の魚達がもがき苦しみ、
やがて骨になり、最後は跡形も無く消滅した。
 それを見た山根恵美子と言う女性は両手で目を覆い
「ギャアアッ!」
と悲鳴を上げ、全身の力を失い身体を支えきれず
隣に立っていた若き天才科学者の芹沢大助博士の胸に倒れ込み完全に失神してしまった。
そのショッキングなシーンを見た山岸は
「うわっ!……怖っ!これが……あの、若き天才科学者の芹沢大助博士が
作り出してしまったオキシジェンデストロイアの威力か……
しかも戦後のモノクロだから余計怖いな……」
とつぶやいた。
山岸はふと途中でDVDを一時停止して、おもむろにテレビの前の椅子から立ち上がると、
パソコンのあるデスクに座り、パソコンの電源を付けた。

 地球防衛軍『スピーシーバック』所属の尾崎真一中佐は、
醍醐直太郎に代わる新しい国連事務総長の護衛を任されていた。
階段を降りようとした時、尾崎が一番下の階の辺りにただならぬ気配を感じ、
「待って下さい!」
と言って階段を降りようとした国連事務総長と数人のSPを引き止めた。
「なんだね?尾崎君!」
尾崎は一番下の階を慎重に観察した。
 すると大きな傘帽子を被り、大きな黄色の袋らしきものを首にかけ、
袖の長い黒い服装をして鹿の髑髏を先端に付けた長い杖を持っている怪しい男を見つけた。
 その姿はどこかの寺の住職を思わせた。
尾崎は慎重に下の階に降りると怪しい男に
「あなたは何者ですか?どうしてこんな所に?」
すると顔を上げ、坊主頭に長い顎鬚をたくわえた老人が静かに
「おぬしが尾崎真一だな……」
尾崎は不意の一言に動揺した顔で
「どうして俺の事を?」
その怪しい男は自分が何者かを明かした。
「伝えたい事があってな……私は火星と木星の間にある
ステロイドベルトに位置する小惑星676162ヘブンバーズから来た宇宙人ゲンヴ族と言う者だ!」
尾崎は
小惑星676162って……まさかあのCCIが探査船を向かわせた小惑星??」
老人は静かに
「いかにも……」
と答えた。
 「676162」とはCCIの探査船が新しく見つけた
小惑星の事で、調査船が遠くから最新の技術を使い調べた結果、
この小惑星の大部分は亜寒帯湿潤気候に覆われている。
その小惑星の周りを回る赤い月ヘルバーズには
宇宙空間を移動するバガンキングギドラが繁殖の為に大群となって訪れると言う。
 その小惑星には、高度なテクノロジーを持たず、
代わりに原始的な文明を持ち、キングギドラバガンを神として
信仰して祭る種族の存在が明らかになっている。
 どうやら「ゲンヴ族」と名乗る老人はその種族の中の一人の様だと尾崎は思った。
しかし上の階でグレンやニックはヒソヒソ声で
「だれだ?あの爺さん?」
「さあ……知り合いじゃないか?」
「でも……尾崎は知らない顔をしているな……」
国連事務総長
「何をしているんだ!早くしてくれ!スケジュールが詰まっているんだ!」
と苛立ちを露わにしたので周りのSPは彼をなだめるのに必死になった。
ゲンヴ族と名乗る老人は
「そのヘブンバーズは自然豊かでとても平和な小惑星じゃった……
赤い月のヘルバーズを眺め、その赤い月に住む、
バガンキングギドラに祈りの儀式を行いとても平和だった……
しかしX星人が現れてからと言うものの、我々の故郷の平和は乱れ、
祈りの儀式も行えず……彼らとの紛争に明け暮れている!」
とため息をついた。

(第13章に続く)

では♪♪