(第13章)小笠原諸島の異変

こんにちは畑内です。
ゴジラの自作小説を載せます。

(第13章)小笠原諸島の異変

 小笠原怪獣諸島中心の海域に異変が起こった。
 CCIの海底調査により、惨殺された怪獣の死体が20体以上も引き揚げられたのである。
しかも怪獣の惨殺死体はどれもまるで体内で爆発したかのように
腹から背中まで巨大な風穴が開いていた。
 他にも、ある怪獣は肩から腹にかけて、
また別の怪獣は右手がバッサリと綺麗に切断されていた。
どれも凄まじい殺傷能力だった。

 そこに現れた国連の分子生物学者の神宮寺博士は
「これは一体?」
怪獣の惨殺死体が倒れている海底の岩に、
体内で何かが爆発した時に付着したと思われる
僅かな肉片の鑑定が行われ、その結果、謎の毒素が検出された。
 その謎の毒素はM塩基が作り出した特殊なタンパク質を分解する働きがある事が分かった。
さらに詳しく調べるとその毒素からG塩基が検出された。
一人の若いヨーロッパ人の研究員が
「まさか?M塩基破壊兵器?」
神宮寺博士は青ざめた表情で
「だとしたら……もうその兵器が動き出したのか?」
と静かにつぶやいた。

 小笠原怪獣ランドの地下研究所『アルカドラン』。
 ジラがいた水槽のある研究所で気絶していた美雪は、
まぶたの裏で蛍光灯の光を感じ、うっすらと目を開けた。
「気が付いたかい?」
とマークの声が聞こえた。
しかし彼女はショックの
あまりしばらく無表情でマークの顔をただ見ていた。
「すまない……君には酷い物を見せてしまった……許してくれ……」
とマークは謝罪した。
「ねえ……あのジラって怪獣……
生物兵器として利用するつもり?」
マークは少し俯き
「ああ……仕方無いさ!やらなきゃ!こっちがやられる!」
「どうやって?生物兵器として利用するの?」
「まず遺伝子操作のクローンでジラを造り、
そこにM塩基の原形であるアカツキシソウを組み込む……」
美雪は真剣な顔で
「それから?どうするの?」
「先程、君が映像で見た新製品のG血清を投与する事で
ジラの体内にアカツキシソウの抗体が出来き、
あとは本能的に獲物であるM塩基を持つ生物を捕食させるように仕向ける……」
それからマークは再びため息を付き
「だが……あのもう少しの所で問題が起きてしまった!
ジラの視力を検査した結果……遺伝子的欠陥が原因なのか分からないが……
完全にジラは盲目だと分かった……」
美雪は驚きと悲しみに満ちた瞳で
「盲目って?ジラは全く目が見えないの?!
それで?……それで?M塩基を組み込んだ黒マグロの怪獣を襲わせていたの?!」
と早口で尋ねたがマークはジラの話をするのか辛くなって来たのか?すぐに黙り込んでしまった。

 再び山岸の自宅。
 山岸のパソコンの画面には、サングラスを掛け、
オールバックの金髪と黒い服を着たキャラクターの壁紙が表示された。
 それからマウスを動かし、YAHOOのサイトに
アクセスするとキーボードで「保怪獣者」と検索した。
 その結果、13件のサイトがヒットした。
 山岸はマウスで13件のサイトの内、
「保怪獣者?そんな生物が本当に存在するのか?」
と題された非公式のサイトを開いた。
そのサイトのトップの文章を読むと
「保怪獣者とは?通称『モンスター・キャリア』と呼ばれ、
怪獣の血を持ちながら体内に怪獣化を抑制する未知の抗体物質を持っている
人間と怪獣の間の子供の事を指す新たな医学用語である。」
と書かれていた。
 さらに「保怪獣者」は実在するのか?」
について存在否定派と存在賛成派の議論と考察が長々と記載されていたが、
あまり読む気になれず、その非公式のサイトを閉じた。
それから山岸はふと我に返り首を傾げ
「それじゃ国連ではどう考えているのかな?」
と思い、すぐに国連の遺伝子や医療関係のサイトを検索した。
 しかし検索結果は僅か2件だけだった。
どちらのサイトにも「怪獣にはG塩基の免疫機能を
持っているゴジラモスラ、ケーニッヒギドラ等が実在するが、
人間にG塩基の免疫機能があるという『保怪獣者』のような存在は、
理論的に存在するかも知れないが物的証拠は今の所見つかっていない」
という内容の文章しか見つからなかった。
つまり実在するかどうかは国連でも分からない訳である。

 地球防衛軍本部内で宇宙人ゲンヴ族と
名乗る謎の老人と尾崎が話していた。
その老人はため息をついてから再び口を開き
「君の体内に流れている『カイザー』の血についてだが……」
尾崎は思わず強い口調で
「どうかしたんですか?」
老人は尾崎を厳しい目で睨みつけると
「君が今まで持っていた……X星人と人間を凌駕する
身体能力や念動力は一時的なものに過ぎない……」
すると尾崎の顔がイライラから動揺した顔に変わりで
「それじゃ?俺はどうなるんですか?」
老人は
「その『カイザー』の力は所詮呪いの力に過ぎない……
その呪いの力はやがて君の肉体や精神を侵し、
やがて原因不明の病気で苦しむだろう……」
尾崎の顔はたちまち真っ青になり
「そんな筈は無い!」
老人はまるで医師が末期癌を宣告するかの様な
口調でしごくあっさりと
「その原因不明の病気に苦しみやがて……死ぬだろう……」
と答えた。
 あまりの衝撃的発言に尾崎は口を半開きにしてたった今
老人に言われた事を理解しようと必死に頭を働かせた。
それから老人は
「仕事の邪魔をしてすまない……また!いずれ!会おう!」
と言うとまるで魔法の様に姿を消した。
 尾崎は魔法の様にいなくなった老人が立っていた
場所を阿呆の様に見つめていた。

(第14章に続く)

あともう3章を変更します。