(第30章)肝臓

おはようございます畑内です。
ゴジラの自作小説を載せます。

(第30章)肝臓

 Ⅹ星人がガイガンキングギドラを使用した
大規模な空爆を開始するまであと10日の事。
 ゴジラは真っ暗闇の海底で2つの人型の怪獣の死体を調べていた。
 海底の岩場に倒れていた2つの怪獣の死体には大きな違いがあった。
 最初に見た怪獣の死体はあのニューヨーク・ロウアーマッハタンで塵と化し、
原型を完全に失った『レッサーデスギドラ』の死体である。
 もう一つの死体は、M塩基が作り出した
特殊なたんぱく質を破壊する毒素によって全身ドス黒い塵になっているが、
一部が白骨化し、原型はまだ残っていた。
しかも小笠原諸島で見つかった怪獣の惨殺死体と同じく、
まるで体内で何かが爆発したかのように腹から背中まで巨大な風穴があいていた。
 ゴジラはその人型怪獣の死体の周辺に落ちていた
肋骨の一部を手に取ると肋骨の内部がスカスカになっている
らしくたちまち「バキッ!」と音を立て、海水に骨の中に溜まっていたドス黒い塵をまき散らした。
 それから奇妙な事に気がついた。
 この巨大な風穴を開く以前に付けられたと
思われる巨大な爪痕が、僅かに残った風穴周辺の皮膚から見つかったのだ。
 内臓はほとんど爆発して吹き飛んで何もない。
ゴジラが死体の周辺を調べ始めると、臓器のほとんどは見つかったが、
たった一つだけ、見つからなかった臓器があった。
 それは肝臓であった。
 つまり、この人型の怪獣を襲った犯人は、
光線かもしくは毒素か何かで巨大な風穴を開け、完全に殺して捕食する前に、
まずは素手で腹を引き裂き、肝臓を滴出した可能性が高い。
 しかし?何の為?
 ゴジラは僅かな岩の隙間に付着していた血痕と
胆汁らしき液体の跡をたどると狭い岩の隙間に辿り着いた。
狭い岩の隙間には大量の胆汁や血痕が付着していた。
この狭い隙間から犯人はわざわざ肝臓だけを取り出して持ち去ったらしい。
 その現場状況を見れば明らかにジラはこの人型の怪獣の肝臓を狙っていた事になる。
 犯人はあのニューヨークのロウァー・マッハタンに現れたジラに間違いないとゴジラは確信した。
数多くの怪獣達を捕食している内に嗜好が表れたらしい。
 ゴジラは思わず苦笑いを浮かべた。

 昨日の新聞記事を見せられ、凛は目を丸くしながらその新聞記事の内容を読んでいた。
「一か月前からミュータントの間のみに流行している
謎の感染症は留まる事を知らず、感染は拡大している。
ミュータントの伝染病の主な症状は『A群β溶血性レンサ球菌』による
壊死性筋膜炎に類似していると発表された。
死者は一カ月内に千人を超え、国連では緊急の対策会議を開き、
抗生剤の開発を始めると世間に公表した。」
と書かれていた。
凛は
「やっぱり……品川の公園のブランコで死んでいたあの男の死因と同じだわ!」
巡査は不安そうな表情で
「それじゃ?やっぱり?細菌テロ……でしょうか?」
「その辺は今……国連関係者に頼んで関連を調べて貰っているわ!」
と再び凛の携帯の着メロが鳴った。
凛が携帯に出ると国連の関係者から
「今すぐに調べて欲しいって話した例の細菌テロの件についてだけど……やっぱり……」
凛は待ちきれない声で
「やっぱり?」
と聞いた。
「一か月前に感染した複数のミュータントと
品川の公園で発見された男性の遺体の血液サンプルから検出された細菌を照合した結果、
ほぼ一致した!間違い無く!M塩基を破壊するあの毒素をまき散らした
犯人はG塩基を組み込んだA群β溶血性レンサ球菌だ!」
「それで?」
と幾分興奮した様子で凛は尋ねた。
「このM塩基破壊兵器用にG塩基を組み込んで作り出した
A群β溶血性レンサ球菌は、主にM塩基を持つ怪獣やX星人、
ミュータントに感染し、症状は分るだろ?壊死性筋膜炎に類似している!
2年前に世界中で頻発していた、あの事件。事故や殺人、自殺が原因で一度は死んだが、
G塩基を持つ宇宙植物のアオシソウに寄生されて突然、生き返った人間や怪獣達。
彼らには感染しない。
ゴジラや君と蓮さんを始め元々体内にG塩基を持つ生物にも一切感染しない!
もちろんM塩基を持たないごく普通の人間や、
すでにアオシソウに寄生されているノスフェラトゥ達にも一切感染しない!
ちなみに感染経路は、ちょっとした噛み傷やひっかき傷を始め、感染死した他のM塩基を持つ生物
の死体に直接、ミュータントや怪獣が触れただけでも皮膚を通して感染する事が分かった……」
凛は尾崎や他のミュータントの事を思い出し、心配のあまり黙り込んだ。

 24日間、閉じ込められていたマークは厳しい監視と狭い部屋から開放された。
マークは嬉しそうな表情で
「この24日間!ゴジラとジラの動向は?」
北村は穏やかな声で
ゴジラとジラに新たな動きは見られませんでした!」
「つまり?」
北村はマークの言葉を無視し
「プロメテウス計画は最終段階に入っています!
ちなみにアメリカの地下に潜伏しているジラを衛星の健康診断システムで分析した結果、
以前から一番問題になっていた視力が徐々に回復に向かっている事が判明しました!」
マークは怪訝な顔で
「最終段階?まだそんな話はしていないぞ!あまりにも急過ぎないか?」
「我々には時間が無いんです!」
「それに何故?視力が回復しているんだ?ジラは完全に盲目だっただろ?」
「それ以上の事は申し上げられません!」
マークはうすら笑いを浮かべ
「それは?どう言う事かね?」
北村はマークを厳しい目で睨みつけ
「君が閉じ込められている間!
この世界最大の地下特殊生物研究施設『アルカドラン』は、君の勝手極まりない
やり方のせいで!MWM社の上層部に不信感を抱かれている!
しかも!M塩基破壊兵器に関する重要な情報が漏れている……
『アルカドラン』はすでに上層部が決定し!移転が完了している!
今日限りでここは封鎖される予定だ!もちろん!彼女もそこに移しました!」
それを聞いたマークは
「何処に移転した?彼女……美雪さんは何処だ?」
「残念ですが……君はクビです!よって!
これ以上はすでに部外者になった君には移転場所は教えられません!
口が裂けてもね!」
とローランドは冷たくマークを突き放した。

(第31章に続く)

では♪♪