(第64章)ウリエル・バラードの正体とその目的!!

こんにちは畑内です。
ゴジラの自作小説を載せます。

(第64章)ウリエル・バラードの正体とその目的!!

 東京ドームから消えた洋子はふと目を覚まし、辺りを見渡すと、
そこには東京ドームンプロレスの控え室では無く真っ黒な空間だった。
「なんなの?ここは?夢なの?」
と混乱する洋子。
そこに、洋子の自宅の窓や瑠璃の絵に登場した、血のように真っ赤な両目と
頭部に巨大な角を生やし、赤と黄色に縁取られた稲妻形の模様をしたあの怪獣が現れた。
その怪獣は強い声で
「待っていたぞ!私は君の戦いを最後まで見守る義務がある!」
洋子は大声で
「戦いって何?第3の堕天使って?……
あなたはウリエル・バラードでしょ?一体?何者で目的はなんなの?」
しかしウリエル・バラードは長い間、沈黙していた。
「ちょっと!何か言いなさいよ!電話で良くも恐ろしい声で毎度毎度脅してくれたわね!」
と洋子が言いたい放題い始めた時、ウリエル・バラードは血のような赤い目で
洋子を激しく睨みつけ黙らせると、四角いギザギザの歯のついた口を開き、
太い荒々しい男の声で自らの正体とその目的を語り始めた。
「私の目的は地球全体の調和を、つまり、地球全ての生物の
調和を脅かすあらゆるものを徹底的に攻撃し、破壊し、審判を下す事だ!」
洋子は動揺した様子で
「えっ?人類や地球の生命を守るんじゃなくて?」
「地球全体の調和を目指し!地球全ての生物を守るのは相方の役割だ!」
洋子はしばらく考えているうちに思い当たった口調で
「それって?まさか?モスラの事?」
「いかにも!私は破壊本能で生きる漆黒のモスラ!」
「破壊本能のみの漆黒のモスラがあたしに何の用なの?」
「手伝ってもらいたい事がある!」
「何を?」
「この地球全体の生物の調和を脅かし、災いを起こす『第3の堕天使』が動き出した!
奴を止めなければ地球全体の生物の調和が乱れてしまう!
『第3の堕天使』に審判を下すには朱雀の巫女の力が絶対に必要なのだ!」
「じゃ?あたしにどうすればいいの?」
「まずは現実世界でその勾玉を持つ、凛に会う事だ!いいか?
『第3の堕天使』の言う事は偽りに満ちている!
お前の前世の大罪を示す邪悪な勾玉が無ければ!奴に審判を下せない!
『第3の堕天使』の言葉を信じてその邪悪な勾玉を永遠に葬ってはならぬ!
そうすればお前の前世の大罪を償う事は出来なくなるのだ!」
急に洋子の目の前にいた怪獣の姿がぼんやりと見え、再び目の前が真っ暗になった。

「待ってて……すぐに行くわ!ママ!」
と、母親の音無美雪が監禁されている場所を求めて、アルカドランの僅かな明かりが
漏れる陰気な廊下を歩いていた凛は、その廊下の先で倒れている洋子を見つけた。
凛は大慌てで洋子の方に駆け寄った。
「洋子ちゃん!どうしてここに?」
と言う声を聞き、洋子はぼんやりと目を開けると、
目の前に首にぶら下がっている勾玉と小さい鏡が目に入った。
洋子は凛に肩を担がれ、陰気な廊下の壁にもたれかけさせられた。
「凛ちゃん……久しぶりね……ここは何処?」
「ここは!極秘の地下研究所なの……それより!どうしてここに?」
洋子はようやく意識がはっきりとするとウリエル・バラードの正体がモスラだった事と、
そのウリエル・バラードの狙いや東京のトレーニングジムで
遭遇した第3の堕天使について細かく説明をした。
凛は腕を組み
「成程……モスラにここに連れてこられた訳ね?」
洋子は凛の首に掛けている勾玉を指さし、
「この勾玉が無かったら『第3の堕天使』に審判を下せないばかりか!
あたしの前世の大罪を償う事は永遠に出来なくなるんだって!
でも……あたしには何をどうしたらいいのか……」
と途方に暮れた様子で洋子は勾玉を見た。
「大丈夫よ!その代わり!とにかく!洋子ちゃんの話が真実なら、
朱雀の巫女が前世のあなたが持たないとどうにもならないわ!
実はあたしも『破壊しないと悪いことが起こりそうって……』
冷静に良く考えたら!やっぱり大変な思い違いをしているかも知れないって考えていた所なの!」
と言い、自分の首から勾玉を洋子の首に掛けた。
すると勾玉は本来の持ち主に戻ったと感じたのか、青緑色に今まで光ったよりも一番強く輝き始めた。
「とにかく!第3の堕天使は……きっと!
お爺さんの姿ではない別の姿であなたの前に現れると思うわ!」
洋子は混乱した様子で
「それって?お爺さんの正体なの?」
「多分……」
と凛はつぶやくと、洋子を連れて陰気な廊下を歩き始めた。
しばらく歩いていると、再び凛の脳裏に、先程、廃棄された研究所跡の部屋で見た、
水槽の中で死んでいた怪獣の死体とその研究所跡の部屋中に
充満していた酷い薬品の刺激臭と死臭を思い出し、
突然、「ウッ!」と激しい気持ち悪さに襲われ、片手で口を塞ぎ、床に倒れ込んだ。
「大丈夫!どうしたの??ああ……大変……」
と言い洋子は凛の背中を片手で優しくさすった。
凛は激しく咳込み、とうとう耐えきれず床に嘔吐した。
凛は荒い息を吐き
「大丈夫よ!」
と言うとフラフラ洋子の助けを借り、ようやく立ち上がった。

 北村はすぐ近くの柱にしがみ付き、身体を支えながら
「何事だ!」
と大声を上げた。
やがて手術室全体に赤く非常灯が付き、
「ビィーッ!ビィーッ!」
と騒がしく警報が鳴った。
警備員らしき人物が現れ
「大変です!既にゴジラガイガン、ジラがこの研究所の真上にいます!」
更に別の警備員も現れ、
「あと!……音無美雪を助けに娘の音無凛がこの地下研究所に侵入しました!」
「とうとう来たか……分かった!すぐに美雪さんとサンドラを連れてここから逃げよう!」
と北村が言うと、サンドラのベッドを動かし、全員手術室を出た。
そして北村が廊下を歩いている内に突然、廊下の角から目の前に白衣を着たオーストラリア人が現れた。
北村は驚きの声を上げ
「まさか?マークか?睡眠薬を飲んで死んだと思ったのに……」
「生憎……死に切れなくてね……美雪がどこにいるか教えて貰おうか?」
と言いコルト・ガバメントを北村の目の前に突き付けた。
北村は微笑を浮かべ
「残念だが……部外者の君には教えられないな……」
と言うと白衣からベレッタを取り出し、マークと同じく両手で構えた。
更に警備員2人と他の数人の研究員も拳銃を取り出し、構えた。
「昔の彼女をそんなに助けたいのかい?」
と北村はせせら笑った。
マークもせせら笑いながら脅す様に北村達にコルト・ガバメントを構えると
「そうさ!早く言え!さもないと……頭をぶち抜くぞ!」
その瞬間、再び「ドーン!」と言う音を立て、地下研究所が大きく揺れた。
「今だ!取り押さえるんだ!」
と北村は2人の警備員に命令した。
警備員はすぐに拳銃を取り上げ、両手を掴みマークを抑えつけた。
「この野郎!どうなっているんだ?」
北村は
「地上ではジラとガイガンゴジラが戦っていてね……早く逃げないとこっちの身がヤバいんだ!」
それから警備員2人はマークを無理やり連れて、陰気な廊下を歩き出した。

 ボルチモア市のホテルで大いびきをかいて眠りこけていた
ローランドはようやく目を覚まし、片手で頭を押さえると、
ベッドから起き上がり、まだ暗く僅かな朝日を浴びようとカーテンをシャッと開けた。
その時、コンコン!とドアを叩く音が聞こえ、ローランドは
「誰だろう?ルームサービスかな?もしかして昨夜のあの人かな?」
と思い部屋のドアを開けた。
そこにはルームサービスに来たホテルのボーイでも無く、
昨夜、自分の部屋に来た女と同じ金髪の男が立っていた。
その後ろに私服で潜入していた7人のロシア人が立っていた。
「いや!朝早くから申し訳ない……私は日本の地球防衛軍特殊諜報部の覇王圭介です!
こんな朝早くから申し訳ないが……すぐにこちらに来てもらいましょうかね?」
ローランドは呆れた表情で
「私に何の用ですか?」
「……音無美雪さんの誘拐事件について何か知っていないかな?」
その覇王の言葉を聞いたローランドは大慌てで
「私は何も知らない!その音無美雪さんが誰なのか?私にはさっぱり!」
しかし覇王は動揺せず、
「小笠原怪獣ランドの監視カメラで撮影されたある映像を写真に直したんだけど……」
胸のポケットから1枚の写真を取り出し、ローランドに見せた。
写真にはヘリの僅かなプロペラの隙間に数人の黒服の男と髪の短い女性が映っていた。
覇王は短い女性を指さし、
「この人は音無美雪さんで!これは?」
と言い、数人の黒服の男の内、ある男の顔を指さした。
「明らかにあなたですよね?ばっちり映っていますよ!」
ローランドは歯を食いしばり、
「しかし……」
覇王はもう一枚写真を取り出し、さらにそこだけ拡大された黒服の男の横顔の写真を見せた。
「双子の兄弟だとか?似ている人とか?変装した人だとか?」
とうとうローランドは悔しさを滲ませ、
「それで?私をどうする気かね?」
「実は……君と美雪さんが乗ったヘリの型を調べたらアパラチア山脈の極秘研究所に着陸したとか?」
「だから?私は知らないぞ!」
ヘリポートの場所は分かるでしょ?そこに彼女がいる事は分かっているんだよ!」
ローランドは白状した様子で、昨夜、凛が持って行った地図とは
別の地図のメモを取り出し、覇王に渡した。

(第65章に続く)

では♪♪