(第63章)冤罪

こんにちは畑内です。
ゴジラの自作小説を載せます。

(第63章)冤罪

 かれこれ4時間以上も軍法会議では、殺人と外患援助の疑いでアヤノの厳しい追及が行われていた。
「君は地球防衛軍のスピーシ・バック部隊に紛れこみ、テロ事件を起こした!」
「テロリスト達に食料を手配している可能性もあるからな!」
アヤノは泣きながら必死に
「違います!無実です!」
泣きながら無実を訴え続けるアヤノに心を痛めた熊坂司令は
「冤罪の可能性も……」
しかしドイツの地球防衛軍代表は更に冷たく
「冤罪と言う明確な物的証拠も無い!」
「結局は犯罪者に変わり無い!」
「もし!殺人罪が成立すれば!」
「君は300人の宇宙人や普通の罪の無い人間の命を奪った!」
「つまり!無期懲役!」
「いや!むしろ死刑に当たるだろう!」
アヤノは
「そんな……あたし……何もしていないのに!」
とその場で泣き崩れた。
しばらくの沈黙のあと、ロシアの地球防衛軍代表は
「さて……この地球防衛軍本部は完全に封鎖される!」
オーストラリア代表は椅子から静かに立ち上がり淡々と
「君達スピーシ・バック特殊部隊やこの日本の地球防衛軍本部内に
勤務している全職員関係者は遺伝子検査が終わるまで地球防衛軍本部内に軟禁状態になる訳だが……」
「Ⅹ星人は総攻撃を中止し、一部撤退を始め、代わりに最新型のガイガン
アメリカ・アパラチア山脈のシェナンド国立公園に現れた!」
「どうやら……一カ月も待たずに早めにテロリストの
ノスフェラトゥ達と決着をつけるつもりらしい……」
「また何者かに相次いで誘拐され、行方不明になった
音無美雪さんとサンドラさんはシェナンド国立公園内にある
地下の極秘研究所に監禁されていた事が分かっている」
「それで!君達の代わりに、音無美雪さんの娘の特殊諜報員の音無凛さんと、
その凛さんの実の父親の覇王圭介さん!
そしてロシア地球防衛軍の特殊部隊『ウラヌス部隊』がすでに出動している!」
それを聞いた熊坂司令官は思わず声を荒げ
「どうして?我々日本の地球防衛軍にその事実を伝えなかったんですか?」
と猛然と抗議した。
しかし各国の地球防衛軍代表達は
「最初は君達に任せようと思った!」
「しかし!今回の不祥事が発覚した今!」
「君達は信用できない!」
「今回は君達は、ロシア地球防衛軍の特殊犯罪調査部から
緊急に派遣されたガーニャさんの指示に従い!」
「美雪さんとサンドラさんの事は我々各国の地球防衛軍に任せて貰いたい!」
それから熊坂司令は反論できず、黙り込み、隣の尋問席で泣き崩れているアヤノを心痛な表情で見た。
長い沈黙の後、各国の地球防衛軍代表は
「これで!軍法会議を終了する!」
それからアヤノは無理矢理、特殊生物犯罪調査部の数人の関係者に連れて行かれ、
とうとう特殊犯罪調査部内の牢屋に閉じ込められてしまった。

 アルカドランの地下研究所の丁度、真上の森の中では
ゴジラとジラ、ガイガンの死闘が繰り広げられていた。
 ガイガンは逃げたジラを追いかけ、尾の先端部分が変化した
アサルトライフルを向けて、確実に当たるまで放ち続けた。
 ゴジラは逃げようとするジラに襲い掛かり、巨大な大口を開けると右肩に噛みついた。
 ジラは怒り狂い、片手のカマキリのようなギザギザの
トゲが付いた巨大な爪でゴジラの頬を深く切り裂いた。
 ゴジラは頬から血を流し、鋭い目でジラを睨みつけた。
 更にジラは追い打ちを掛ける様に再び片腕を振り上げ、ゴジラの腹を切り裂こうとしたが、
背後からガイガンの鉤爪が襲い掛かり、ジラの右背中を容赦なく切り裂いた。
 ジラは痛みで悲鳴を上げ、長い鞭のような尾をガイガンの首筋に叩きつけ、遠くに弾き飛ばした。
ゴジラはようやく立ち上がり、
「グオォォオオッ!」
と獣の咆哮を上げ、ジラの首筋に再び噛みつこうとした。
 しかしジラは体当たりでゴジラを押し倒すと馬乗りになって来たので
ゴジラはすぐさま放射熱線で反撃した。
 ジラは右に顔を避け、青白い放射熱線は頬をかすめた。
そしてもう一度、右手を振り上げ、再びゴジラの身体を切り裂こうとした。
 すかさずゴジラは再度放射熱線を吐き、右手を大きな爆発音と共に、粉々に破壊した。
 しかしジラの勢いは止まらず、ゴジラの顔面に噛みつこうと、
サメかワニに似たナイフのような牙から涎を垂らし、口を大きく開いた。
 ゴジラは手を伸ばし、破壊された建物の柱と思われる鉄パイプを掴むとジラの下顎に突き刺した。
ジラは悲鳴を上げ、ゴジラから離れると血に染まった鉄パイプを自ら引き抜いてその場に投げ捨てた。
 起き上がったゴジラはその隙を狙い、お返しと言わんばかりに強烈な頭突きを右胸に叩き付けた。
 ジラは息がつまり、危うく倒れそうになった。
しかしジラは倒れそうなのを堪え、逆三角形の頭部を上げ、
周りに涎をまき散らしながらゴジラを睨みつけた。

 アルカドランの地下研究所の巨大な手術室ではサンドラの人工授精実験が行われようとしていた。
 北村は額から汗を流し、ハンドルに手を掛け、丸い顕微鏡をのぞいた。
 顕微鏡にはサンドラの体内にある8本の触手に包まれた子宮が見えた。
北村は丁寧にその子宮を包んでいる8本の触手をピンセット型のアームを操作して
避けて行くと丸いピラミッドに似た一本だけ太い触手の先端が見えた。
 それからピンセットで少しずつ、先端のヒレの部分を開いて
行くと剃刀のような歯がある口が見えた。
北村は笑いながら
「確認したぞ!」
隣にいた別の医師は
「よし!受精卵を彼女の子宮に!」
と言い、巨大な機械のパネルを操作した。巨大な機械が作動し、
下腹部に「カシャアン!」と言う金属音を立てて、長い針が飛び出し、突き刺さった。
彼女は激痛で大きな悲鳴を上げ、歯を食いしばった。
しばらくすると再び「カシャン!」と金属音を立て、すぐに下腹部から針は抜かれた。
 サンドラは再び襲い掛かる激痛で悲鳴と共に宇宙人の姿に変わり、下顎が裂け、甲高い声で吠えた。
 北村は一瞬、サンドラの咆哮に驚いた様子だったが再び気合を入れ直し、
丸い顕微鏡を真剣に見つめながらその受精卵を子宮壁に床着させようと
ピンセットの形をしたアームで受精卵を動かし、特殊な電気信号を流し、着床を促した。
 しばらくすると受精卵は無事、子宮壁に着床し、妊娠した。
 北村は湧きあがる喜びを噛み締め
「成功したぞ!」
と言った。
その瞬間、「ドーン!」と言う大きな音と共に手術室全体が揺れた。
北村はすぐ近くの柱にしがみ付き、身体を支えた。

(第64章に続く)

では♪♪