(第72章)隠ぺいと昇天

こんにちは畑内です。
ゴジラの自作小説を載せます。

(第72章)隠ぺいと昇天

 舞台は数日前のアメリカ・アパラチア山脈、シェナンド国立公園に戻る。
 シェナンド国立公園内の米軍のテントから、
ゴジラが大手のタバコメーカーのフィリップス・モリス社を
半壊する様子を見ていた米軍の軍曹が出て来た。
 軍曹は断崖絶壁の上から双眼鏡でガイガンゴジラ、ジラの様子を観察していた。
 そこにもう一人、迷彩服を着た若い米軍兵が軍曹に他の米軍兵士達の様子を報告した。
その報告は驚くべき事だった。
「大変です!オニール軍曹!過半数の兵が倒れて精神病院へ搬送されました!」
双眼鏡をのぞいていたオニール軍曹は
「何?やはり……アンフェタミンが不足しているのか?」
アンフェタミンとは覚せい剤の代表的なもので
19世紀後半に発見され、低血圧やうつ症などに最初は用いられていた。
また第二次世界大戦中にアメリカ、イタリア、日本、ドイツなどで
兵士の眠気を払い気力を高ぶらせるために多く使用されるようになった。
 そして最終的にベトナム戦争後、
アメリカ国内で爆発的にアンフェタミンによる麻薬中毒者が広がって行った。
今でもペンダゴンでは密かに、アフガニスタン
イラク戦争でも米軍兵士達にアンフェタミンを供給し続けているのである。
「ええ……頻繁にアメリカ全土で起きている化学薬品工場の
爆破事件はやっぱりテロリストのノスフェラトゥ関係の組織の仕業の様です!
やっぱり!あいつらは我々米軍の弱点にすぐに気が付いたようです!」
「うーむ!困ったな……」
とオニール軍曹は双眼鏡から目を離し、腕組みして考え込んだ。
「これでは……まともにジラ、ガイガンゴジラと戦える兵士もごく僅かしかいません……」
と心配そうな表情で話した。
「M塩基破壊兵器よりも厄介だな……アンフェタミンの補給は?」
「全く追い付いていません!それどころか長期間もアンフェタミンが補給出来ない事で、
依存症になった兵士達が急に強い不安や妄想に駆られて暴れ出したり、
倒れたり、場合によって性急な判断ミスをする等の深刻な問題が……」
「ペンダゴンは、第2次世界大戦、ベトナム戦争湾岸戦争
アフガニスタンイラク戦争を通じて大量の『アンフェタミン』を
米軍兵達に支給して来た……そのアンフェタミンが大量に
支給出来なくなった今!我々は残念ながら長時間に渡る
戦闘態勢を維持させられない……早く決着をつけなければ!」
と言い、双眼鏡でゴジラ、ジラ、ガイガンの戦いを幾ら観察しても、
3体の怪獣の体力は有り余るほど残っているらしく未だ力が衰える気配は無かった。
そのときふと若い米軍兵はオニール軍曹に
「もし?あいつらが世間にその事実を公表したら?」
と質問すると、オニール軍曹は双眼鏡を下ろし、首を左右に振り、
「そうなればアメリカ軍はおしまいだな!」
と答えた。

 地下極秘研究所アルカドランのプールのある広場でバキューン
と言う銃声が部屋中にこだました。
 北村と他の医師や看護婦達はベッドに寝ているサンドラを連れ、
極秘研究所アルカドランの陰気な廊下を歩いていた。
しかし北村は途中で
「あっ!しまった!大切なものを忘れていた!」
と言うとサンドラを他の看護婦や医師達に任せ、
「すぐに追いつくから!」
と言うと慌てて元の道に戻ろうとした。
しかし一人の医師が急に白衣からレーザー銃を取り出し、北村に向けると
「ご苦労さん!」
と言った。
北村は動揺し
「何だ?まさか?お前達は?」
「君の様な裏切り者はマークと共にこの極秘の地下研究所の情報と共に消えるのよ!」
ともう一人の白衣の看護婦が言った途端、レーザー銃の引き金を引いた。
 たちまち北村の心臓から火花と血が辺りに飛び散り、彼は即死して冷たい陰気な地面に倒れた。
 看護婦はすぐにレーザー銃をしまうと冷たくなった北村の死体を避け、先へ進んだ。
 それからある部屋に入ると看護婦や医師達全員、
部屋の天井にある巨大で丸いマンホールの穴を意味ありげに見上げた。
その穴から虹色の強い光が差した。
その虹色の光が徐々に強くなるに連れて周りから風が吹き始めた。
 それから30分が経過した頃、先程までサンドラが寝ていた空のベッドだけが思い出したように
「ガタン!」と音を立てて、倒れた。
先程いた筈の看護婦や医師達やサンドラの姿が忽然と消失していた。
 一方、覇王とロシア地球防衛軍の『ウラヌス部隊』
は廃棄されたばかりと思われる研究所跡にたどり着いていた。
 そこは既に何者かが数時間前に来て研究所跡を焼いたらしく、
水槽が完全に壊され、更に酷い薬品の刺激臭と死臭と焦げ臭い匂いが入り混じり、
ウラヌス部隊のメンバー達は思わず口を塞ぎ、激しくせき込んだ。
 しかし覇王だけは全く平気なようである。
 それからさらに先へ進むと、人工授精に使う医療器具や机、
床を見ると、几帳面に並べられ、骨まで焼かれた怪獣の子供らしき焼死体が見つかった。
「これは隠ぺい工作か?」
と覇王がつぶやいた。
 更に全員が壊れたカードキーのある部屋の中に注意深く入り、
先へ進むと床にカプセルらしきガラスの破片が散乱していた。
 『ウラヌス部隊』の一人が部屋の隅に真っ黒焦げになった
灯油タンクが転がっているのに気が付いた。その灯油タンクのラ
ベルにはBDFと書かれていた。
ウラヌス部隊の隊長が
「よし!ここはいいな!」
すると隣で聞いていた覇王は
「おい!それはどういう事だ?」
ウラヌス部隊の隊長はうすら笑いを浮かべ、
「彼女のおかげさ!」
「彼女って誰だ?」
と覇王。
ウラヌス部隊の隊長は
「これから!その彼女と合流するよ!ついて来たまえ!」
と言うと他の部隊の仲間に腕を振って指示を送った。
それから覇王を連れて、廃棄されたばかりの研究所跡から出て行くと、再び陰気な廊下を進んだ。
 プールのある広場で洋子は、母親の美雪と娘の凛の再会に一緒に涙を浮かべ、
凛が笑いながら美雪の頬に軽くキスをする様子を見ていた。
洋子はふと首に掛けている勾玉が青緑色に輝いているに気が付いた。
 目の前に青緑色の強い光が現れ、
気が付くとアルカドランの地下研究所にあるプールのあった広場では無く、
何処か狭い部屋に尻餅をついていた。
 周りを見渡すと複数の人間の赤ちゃんが保育器の形をしたフラスコの中で眠っていた。
 その隣の棚に目を向けると青黒い塵が詰まった四角いカプセルが大量に陳列されていた。
 また場面が変わり、洋子の脳裏に
アパラチア山脈・シェナンド国立公園で戦いを続けるゴジラガイガンとジラの映像が流れた。

(第73章に続く)

では♪♪