(第6章)ゴジラとギドラの始祖

(第6章)ゴジラとギドラの始祖

 大戸島のアメリカのモーテル風のホテル。
 凛と山岸は自分達の部屋で熱いキスを交わしていた。
お互い抱き合い、山岸は凛のピンク色になった首筋と胸元にキスをした。
 凛は頬笑み、ふと窓を見ると暗闇の中から
うっすらと初代ゴジラに似た何か黒い影が見えた。
さらに凛がよく見ると外にいる黒い影は木々の間から
オレンジ色の2つの目でこちらをじっと見つめていた。
「どうしたの?凛ちゃん?」
と言う山岸の声にまた2度びっくりし、すぐに山岸の方に取り乱した表情の顔を向けた。
凛は急に恥ずかしくなり、取り乱した表情を誤魔化そうと顔を真っ赤にした。
 そして改めて窓の方を見ると既にゴジラに似た影は木々の間から忽然と姿を消していた。
「何でもないわ」
と真っ赤な顔で凛は答えると素早く話題を変えた。
「そう言えば、今日、友紀ちゃんの子供が産まれたんだって。」
「えっ?本当?いつさ?」
「丁度、9時過ぎよ!結婚して次はあたし達の番かしら?」
と凛は頬笑み、目をつぶり、山岸に熱いキスを要求した。
山岸も微笑み
「まって!その前に長野先生と原田先生の子供がまだ産まれていないよ!」
「確か?あと4カ月だっけ?」
ちなみに原田先生は高校生だった頃の凛と山岸、友紀、洋子の担任だった男である。
長野先生も高校生だった頃の凛、山岸、友紀、洋子に国語を教えていた。
ついでに長野先生の正体は女性型ノスフェラトゥ(デコイ)である。
まだ凛は山岸に熱いキスを要求し続けた。
 山岸は仕方がないと言う表情で、凛の唇に熱いキスをした。

 午後6時。
 7時頃には全員夕ご飯を食べ終え、それからそれぞれの部屋に戻り明日に備えて休んだ。
 時計が丁度、9時を回った頃、凛は山岸の部屋の前で
「ちょっと景気付けにタバコいいかしら?外で?」
「イイよ!」
と山岸が答えたので凛はホテルの外のテラスでニコチンが入っていない
ハーブのハ―バル・シガ―レットの葉巻を取り出した。
凛はライターで、取り出した葉巻に火をつけるとそれを吸い始めた。
その時、ズボンのポケットから携帯のリリリリと言う呼び出し音が鳴った。
ズボンのポケットから携帯を取り出し、電話に出ると謎の男がロシア語で凛に話を始めた。
「こんばんは!ミセスG!決心はついたかね?」
「ええ、ついたわ!例の暗殺の仕事引き受けるわ!」
「ありがとう、明日、大戸島米軍基地にアメリカの地球防衛軍の戦艦ランブリングに
乗ってターゲットは到着する。
暗殺は午前10時決行だ!」
「それで、アメリカ大統領の暗殺は??」
「既にアメリカの民間警備会社に委託している!」
「どうして?大統領まで暗殺する必要が?」
「彼は密かにアメリカの地球防衛軍や米軍と協力して
怪獣王ゴジラを完全に抹殺する毒薬を開発した。
アメリカ大統領はそれを利用して、過去にジラをミサイルで完全に抹殺した様に、
日本や世界にとって貴重な財産の怪獣王ゴジラを抹殺する事で、
怪獣冷戦をアメリカ(即ち、人類側)の勝利で早く終戦させようと企んでいる。
しかしそもそもアメリカと言う国家は戦争し続けなければ経済が成り立たない国家だ。
だから怪獣冷戦を利用してテロリスト(つまり人間同士)と戦争を続ける事で、
アメリカの経済は潤い、世界の経済も維持できる。
今、ゴジラや他の怪獣達に死なれると『G血清』や怪獣との混血児が作れなくなる。
その結果、20世紀よりもアメリカの経済は転落し、国家そのものが崩壊する恐れがあるのだ。
そうなれば、世界中の経済にも影響を与え、世界の経済も維持できなくなる。」
「だから息子のウィルソンさんと父親のエバート米大統領を暗殺するの?」
「そうだ、あのアメリカの地球防衛軍所属の戦艦ランブリング艦長で
米大統領の息子のエバート・F・ウィルソン上級大佐もあの毒薬開発に深く関係している。
それにあのエバート米大統領は我々『秘密組織MJ12』を
ゴジラを利用した悪質なテロリスト集団』と非難した上で、
テロリストが行っている非人道的な人間と怪獣の混血を産み出す
人体実験の内容を全て世間に公表しようとした!
これ以上、彼を生かしておけない!世界を頼んだぞ!」
凛は携帯を切り、ズボンのポケットにしまうと大きくため息をつき
「さて!そのエバート大統領はあたし達、秘密組織『MJ12』を裏切った。
これで一人減って『MJ11』になっちゃったわね!後任のアメリカ大統領は誰かしら?」
と言うと再び口にタバコを加えた。

 大戸島大学病院。
 寺川はパソコンのキーボードで難しい文章を書き続けていた。
「完成した受精卵はしばらく液体窒素で冷凍保存された。
それからメスのコモドドラゴンを東京から送って来るまで、
私は初代ゴジラの体細胞内で発見した
テロメラーゼの活性を
コントロールする物質について徹底的に調べ上げた。
何故なら、もしかしたら不老不死の薬が作れるかもしれないと思ったからである。
またテロメラーゼをコントロールする物質から初代ゴジラのDNAを採取、
分析した結果、実は初代ゴジラのDNAは
爬虫類と哺乳類の両方の特徴を持っている事が判明した。
さらにそのテロメラーゼからこの地球のどの生物にも
当て嵌まらない生物(恐らく宇宙怪獣)のDNAも検出された。
そしてDNA鑑定の結果、実はそのDNAは95パーセント以上がキングギドラのDNAと一致したのだ。
つまり『初代ゴジラとギドラは同族』と言う意外な事実が判明したのだ。
初代ゴジラがギドラの始祖である可能性も検討中」
とまで文章を書き上げると例の難しい文章をワードのファイルに保存した。
 それから彼はパソコンの電源を切ると研究所の部屋に備え付けてあるテレビをつけた。
テレビでは丁度、ニュースで若いキャスターが
「昨夜、午後9時、下着会社の美人社長の山梨友紀さんが無事、病院で男児を出産した」
とニュースで報じていた。
 彼はそのニュースを見ながらふと考えた。
果たして、この女性から産まれた子供は純粋な人間なのか?
それとも人間と怪獣の混血の子供なのか?
もし後者であれば、3か月前に結婚した妻か夫のどちらかが怪獣と人間の混血だろうか?
それとも人間のDNAを持つ怪獣だろうか?
これで純粋な人間がその子供を育て、純粋な人間も怪獣も歳をとり、後は安らかに死を迎える。
残るは大人になり自立した混血児の子供だけだ。
つまり人類は混血児達に次の世代を託し、最終的に人類は絶滅するだろう。
もちろん地球にいるミュータントやノスフェラトゥと言う連中に対しても同じ事が言える。
あとは彼ら新人類(怪獣と人間の混血児)がこの地球を支配する。
ゴジラを初め、他の怪獣達を従えて。
そして彼はこうも思った。
結局、暴走しているのは科学では無く、人間自身ではないかと。
これは単なる自業自得なのではないかと。

(第7章に続く)