トワイライトゾーン(猫の世界)その3・ラスト

トワイライトゾーン(猫の世界)その3・ラスト
 
 再び扉を開けるとその上にはクリームの壺が置かれていた。
「壺の中のクリームを顔や手足、耳に良く塗って下さい。」
「モウ、ソロソロマズイ事二ナリソウデス。」
石坂はためらわず壺の中のクリームをとって舐めた。
「これ牛乳じゃない」
「コレハ酢デス。」
と金色の壺の中の液体をパチャパチャ
手の平に乗せて舐めたアンソニーが言った。
先には戸が。
「君はココデ待ッテイテ下サイ、先ヘ行ッテミマス。」
と静かに戸を開けた。
その先は真っ暗闇の部屋だった。
暗闇で蠢く影が。
「ダレダ!」
その黒い影は頭をもたげた。
「ソウカ、ソウ言ウ事デスネ!」
と言うと慌てふためいた様子で戸を勢いよく閉めた。
「石坂サン!逃ゲテ下サイ!ココハ!」
突然バーンと大きな音と共に戸が開き、アンソニーを突き飛ばした。
石坂は部屋に入って来た謎の黒い影を見た瞬間。
暗闇の中に何かがいる!
と言う原始的な恐怖が全身を駆け巡った。
「怖い目に遭ったな」
暗闇で不気味な声がした。
彼女は全身が震え上がった。
さらに彼女の恐怖を煽るかのように。
「もっと!怖いものを見たくないか?」
そこには2つの青い眼玉が浮かんでこっちをギロギロと動かし見ていた。
こちらを。
そして現れたのは巨大な猫だった。
猫は
グニャアアアアオオオオンン!
と恐ろしい鳴き声を上げると銀色のフォークとナイフ
の形をした巨大な爪を振り回し
石坂めがけて走って来た。
彼女は思わず悲鳴を上げて逃げだした。
そして彼女にフォークとナイフの形をした爪を振り回し、
ひたすら彼女を追い回した。
そこにアンソニーがとっさに猫の彼女の間に割って入った。
猫が振り回した爪はアンソニーのTシャツをビリッと引き裂いた。
彼は倒れた。
猫は口を動かした。
しかも異常な早口で。
「塩をもみ損ねたが旨そうな人間二人がかかった。
腹が減って死にそうなんだ!
食わせろ!やい!食わせろ!」
「フザケルナ!」
と肩から血を流しアンソニーが言った。
猫はアンソニーを食べようと襲いかかった。
彼は目の前に巨大な口が並んだ大口を見るなり、
観念したように眼をつぶった。
その時、奇跡は起こった。
彼は心の中で望むと猫の口はフッと消え去った。
彼は超能力で猫の口を消し去り、口を封じたのです。
猫はしゃべる事も2人に噛みつく事も出来ないまま。
ジタバタ部屋の中を暴れ回った。
石坂はその出来事にただ呆然とそれを見ていた。
やがて猫は暴れた拍子に石坂のほうへ転がって来た。
彼女は頭の中がパニックになった。
彼女は猫から逃れようと死に物狂いで反対方向に逃げた。
しかし不思議な事にそのまますり抜けて姿を消した。
それと同時に部屋は煙のように消えた。
そこは元のカルチャーセンターの公園に戻っていた。
「あれ?」
石坂が公園の芝生を見ると2人分の上着や財布が落ちていた。
「アンソニー
と叫ぶ声が聞こえた。
彼が目を向けるとアメリカ人の女性が走って来ていた。
彼は英語で。
「ここだよ。よかった。」
「探したのよ!いったい何が?」
石坂は何か段ボール箱の中にいるものを見るなり。
ペタンと芝生に腰が抜けたように座り込んだ。
「ナンデスカ?」
とアンソニーが見ると段ボール箱の中には。
「オーマイ、ゴット、ナンテコトダ!」
「かわいそうに」
アメリカ人女性。
石坂はアンソニーを見た。
「夢みたい……」
「こんな結末有りかよ!」
石坂は彼の心を悟ったように。
「あなたのせいじゃないわ。」
「あなたが助けてくれなかったらあたし達は今頃……グスン!」
と彼女は泣き始めた。
アンソニー段ボール箱の中で泣き崩れた。
段ボール箱の中にはちっぽけな子猫が死んですでに冷たくなっていた
 
  生物は生きている限り、他の動物や生物を食べないと生きていけません。
今回は飢え死寸前のごく普通の猫がトワイライトゾーン
段ボール箱と共に捨てられました。
もちろん飼い主は何も知らずに。
そして飢え死寸前の猫はトワイライトゾーン
生き延びる為に自ら恐ろしい怪物に姿を変え、二人を襲いました。
しかしアンソニーは自らの超能力を使い、
石坂さんと言う日本で初めての友達を守りました。
しかしその引き換えに猫は飢えて死んでしまったのです。
現在も捨て猫はよく見かけます。
もし?その猫がまたトワイライトゾーンに捨てられたら?
次は捨てた飼い主にその牙が向けられるのは人事ではないでしょう。
 
   「しっしっ!もうあんたは家には置いておけないんだよ!バ―カ!」
と一人の心無い飼い主が自分が飼っていた猫を段ボール箱に詰めて投げ捨てた。
 それから翌朝。
捨てた場所に一軒の西洋作りの一軒家が建っていた。
通り過ぎた飼い主は
「あれ?こんなレストランあったっけ?」
となんとなく中へ入って行った。
しばらくして
うぎゃああああああああああっ!!
と悲鳴が建物の中から聞こえた。
それっきり、その猫を捨てた心無い飼い主が出てくる事は無かった。
彼はトワイライトゾーンに足を踏み入れ、
そのまま二度と落ち入って出られなくなったのです。
 
 
END。