(第27章)TWinkle Twinkle Little star

(第27章)TWinkle Twinkle Little star

7時40分。
大戸島近海。
フィーン!フィーン!フィーン!
轟天号の巨大ブリッジ内にけたたましい警報音が響いた。
「敵襲か?」
「モニターに映します!」
轟天号内のブリッジの中央に設置された巨大なモニター画面では完全に夕日が沈み、
満天の星空になった大戸島上空で赤く発光する球体のUFOが静止していた。
「赤い球体は上空で静止したまま動きません。」
「赤い球体は一体?何なんだ??」
「分析の結果、X星人のUFOに使われていた装甲板と一致しています。」
「何者かがX星人のUFOの技術を参考に造り出した?」
「一体?誰が何の目的で?」
「内部には一体何があるんだ?小型のUFOか?それとも?」
「UFOは未だに静止中です。」
「一体誰が何の目的で?こんなものを?」
やはり赤い球体のUFOは満天の星空になった大戸島上空で静止していた。
ジェレルはレーダーを見た。
「レーダーに反応あり。2匹のゴジラです。」
「どうやら、2匹のゴジラも赤いUFOを狙っているようです。」

同時刻。
大戸島ビルの怪獣居住区設置委員会の事務所。
30分前、事務所で働いていた男性が全身の痛みを訴えた。
そして顔や両腕にはドーム状の青いイボが現れていた。
熱を測ると40度の高熱を出していたので休憩室のベッドで休ませていた。
しばらくして事務所内が停電となった。
さらに休憩室でドン!ガタン!ガタガタガタ!と大きな物音がしたので
女性職員や他の同僚は休憩室のベッドの上に寝ている男性の様子を見に来た。
彼が寝ていたベッドの上のシーツを懐中電灯の明かりで照らした瞬間。
「………」
全員言葉を失っていた。
ベッドのシーツは真っ赤な血でべっとりと汚れていたのだ。
「これは何なのよ。何が起こったの??何が??何が??」
休憩室の外の廊下でガタン!という物音。
全員、ビクッと身体を震わせた。
女性職員は懐中電灯を頼りに休憩室のドアを開けて、廊下を照らした。
何もない。なんなのよ。今の物音。
だが遠くの方で暗闇から青い光が二つ見えた。
なに?懐中電灯の光?誰かいるの?
何か黒い影がいた。
見えない。暗すぎる。
その黒い影は非常に緩慢な動きで徐々に近付いて来た。
やがて黒い影は女性職員や同僚達を青く光る複眼で捉えると
『グオォォッ!』と恐ろしい声を上げた。
そのおぞましい声を聞いた女性職員や男性職員達は悲鳴を上げた。
「ああああっ!」
「いやあああっ!」
30分後、女性職員は懐中電灯を持ち、清潔な事務所の廊下を走り続けていた。
事務所の廊下には全身を鈎爪で引き裂かれて殺された同僚の
男性職員達の死体があっちこっちに転がっていた。
女性職員は恐怖で顔を歪ませ必死に廊下を全速力で走った。
彼女の頭の中には世にも恐ろしいきらきら星が流れていた。
不安で恐ろしいからだ。
『キラキラ光る。小さなお星さま。 』
暗闇の中、女性職員は出口を求めて走り続けた。
その背後を成人男性らしき人物がゆっくりと確実に追い続けた。
『貴方は一体?何者なの?
「助けて!誰か!誰か!」
『世界の上でそんなに高く。
女性職員は懐中電灯を振り回し、出口を求めて走り続けた。
途中、極度の栄養失調で身体がやせ細り、
首筋の僅かな痛みと飢餓感で呻き声を上げている男性職員が一瞬、懐中電灯に照らされた。
その瞬間、女性職員は恐怖の余り、ますます頭の中がパニックに陥った。
確か?確か?何処かに対怪獣用のショットガンがおかれたケースが。何処なの?
思い出せない!!いやっ!思い出せない!クソっ!思い出してよ!
『まるでお空のダイヤモンドのように。
うしろからは青い二つの光が暗闇の中をユラユラ左右に揺れるように動いていた。
一瞬だけ暗闇の中に非常口と思わしきドアが照らし出された。
非常ドアの誘導灯の緑色のランプは完全に消えていた。
つまり彼女は懐中電灯で照らさなければ分からなかった所だった。
非常口が一瞬だけど見えたわ!でもなんで誘導灯が消えているのよ!
『燃える太陽が沈んで輝くものが何も無くなった』直後、懐中電灯のバッテリーが切れてしまい、
フッと白い強い光は消失し、 目の前には暗闇だけが残された。
『小さな光を放ち出す。夜じゅうずっときらきら きらきら。
彼女の背後には青い光を放つ、不気味な成人男性らしき影が緩慢な動きでじわじわと近づいて来ていた。
とうとう彼女は頭の中がパニックになり、泣き叫びながら、手探りで出口と思わしきドアを必死に探った。
『闇夜の中の旅人は貴方の小さなきらめきに感謝します。
貴方の光が無かったら。 』
女性職員は役立たずになった懐中電灯を力任せに投げ捨てた。
その後、手探りで出口を思わしきドアを必死に探ったが、
彼女の手の平で感じるのは真っ暗の壁や冷たい机の感触だけだった。
『行くべき道が分からない。 』
何処に非常口を思わしきドアがあるのかどこにあるのか全く見当がつかない。
どこなの?どこなの?何処よ!何処よ!
彼女の背後で獣の荒い息使いと唸り声が聞こえた。
彼女はガタガタ全身を震わせて振り向いた。
成人男性らしき黒い影ははっきりと見えた。
確かに姿は成人男性の形を留めているものの半ば全身が腫瘍に覆われている状態だった。
両腕の5本の鈎爪の生えた太い両手を大きく開いた。
同時に無数の牙のある巨大な口を開いた。そして口から発達した長い舌を伸ばした。
槍の様に鋭い舌の先端を彼女の柔らかい首筋の右皮膚に突き刺した。
「きゃああああああああああああっ」
彼女の絶叫は事務所の外の暗く陰気な廊下に響き渡った。
『あなたが何者か分らないけど。
キラキラ光る。小さなお星さま。 』

(第28章に続く)