(第26章)嫌な予感

(第26章)嫌な予感

大戸島、蓮と覇王の部屋。
「やった!やっと繋がった!!」
何かの事情で国外のMBI捜査官が連絡を試みたらしく、
蓮が電話に出た途端にロシア語で歓喜の声が聞こえた。
「君は?サミー?」
「覚えてる?感激したよ」
「一体?何があったんだ?」
「今ロシアの地球防衛軍が大変なんだよ!」
別のロシア人の男が電話に出た。ガブリ―ラ・キルバスキー事、ガーニャである。
「ロシアの地球防衛軍のコンピュータに何者かがハッキングを仕掛けて来たんだ!」
「いま、ジーナと他の職員で懸命にハッキングを阻止しようと奮闘している。」
「肝心な時に。今伝えなくちゃいけない事があるのに全く今日はツイていないよ」
「伝えるべき事は?」
山根蓮はすぐにメモ用の小型パソコンを取り出した。
「謎のテロリスト集団からさっき国連に犯行声明文が送られた。どうやらバイオテロらしい。
既にアメリカのCDCは各国の関係機関とのホットラインを利用して
出来うる限りテロリストの情報を集めている。でも依然としてテロリストの正体は不明のままだ。」
電話から耳障りな雑音が聞こえた。その雑音は徐々に大きくなり彼のロシア語が聞こえにくくなっていた。
しばらくして電話越しからガーニャとサミーの緊迫した会話が聞こえた。
「雑音が!一体どうなってるの?」
「誰かが遠隔操作で電話線の回線を切ろうとしているんだ!」
「切らせないで!話を続けないと!」
サミーは精一杯、雑音に負けない声で続きを話した。
「連中は1時間後に日本の大戸島の怪獣住居設置委員会の事務所があるビルを攻撃するようだ。」
「やったわ!やった!侵入者の場所を特定したわ!」
「なんだって?何処から侵入したんだ?」
「日本の大戸島米軍基地の近くの洋館から発信されたようだわ!」
ジ―ナは耳障りな雑音に負けないように精一杯大声で話した。
「もう無理だ!電話回線が切れる!5秒前だ!」とサミー。
「お願いだ。テロ決行は日本時間の午後7時40分だ。」
すぐにジーナは大戸島米軍基地の近くの洋館の住所を素早く正確に伝えた。
それから5秒後、電話はブチッと切れた。
「もしもし?もしもし?」
蓮は懸命に呼びかけたが既に電話は切れて反応は無かった。
覇王が慌ててドアを開けて、部屋の中に入って来た。
「一体?何があったんだ?」
「今、ロシアの地球防衛軍のMBI捜査官のサミーとガーニャから連絡があった。
午後7時40分そのビルでテロリストがバイオテロを起こすつもりらしい。」
まさか?バイオテロ?また平和な日本で起こすつもりなの?山岸はTVカメラを構え、
今までの会話や出来事を全て録画しつつもそう思っていた。
「あとロシアの地球防衛軍本部がハッキングを受けた。」
「なんだって??」
「それでジーナがハッキングして来た侵入者の場所を特定した。」
「場所は?」
「大戸島郊外の洋館だ。住所は。」
蓮はすぐに覇王に住所を伝えた。
「だが今何時だ?」
すぐに山岸は部屋に置かれたデジタル時計を見た。7時30分だった。
「時間が無いな。直ぐに轟天号のSPB(スピーシ・バック)にすぐに伝えなければ!」
「私達はその侵入者の逮捕をするんですか?」
「ああ。このままではロシアの地球防衛軍の軍事データが全て盗まれてしまう」
「君達は洋館には入らせない!万が一命の保証が無いからな!」
蓮は真鍋と山岸を真剣な眼差しで見つめた。
「分りました。」
即座に真鍋は答えた。
そして真鍋、山岸、覇王、蓮の4人は慌ただしくレンタカーに乗り、現場の洋館へ向かった。
しばらくして今度は覇王の携帯が鳴った。
「もしもし?」
と覇王が電話に出ると大戸島大学の寺川と言う男の声が聞こえた。
「こんばんは。実はあの大戸島大学に現れたあのメガヌロンに似た怪物。
君が言う影の血液と菌糸のサンプルを調べていたらこんな事実が判明した」
寺川教授が言う調査の結果は以下のとおりである。
1・発見された菌糸が人間から人間に伝染するのは極めて稀で感染力は非常に低い。
菌糸自体もとても弱く、24時間以内には自然に死滅してしまう。
2・G抗体に弱い。
「以前、メガヌロンごと人間に寄生するかも知れないと話したが、どうやらそれは無いようだ。
基本は傷口の接触から侵入する事で感染する。
しかし体内に侵入して変身しても24時間以内には自然に死滅し、個体も死亡する様だ」
「じゃ?この菌糸を仮にテロ組織が悪用して、ビルの人間に感染させても?」
「うーむ、仮に感染した人間が影に変身したとしても、24時間、隔離されたらすぐに全個体は寿命で全滅してしまう。世間の恐怖を煽るのには効果的かも知れない。
ただこの菌糸を利用して大規模なバイオハザードを引き起こすには多分無理があるだろう。」
だとしたら?あの謎のテロ組織は何か別の方法を考えているのでは?
そう、午後7時40分、大戸島ビルに菌糸じゃない
未知の病原菌がまき散らされるのか?だとしたら?一体?どんな病原菌が?
覇王は嫌な予感がした。
山岸は、大戸島のホテルの外で島上冬樹の妻のル―シに
襲われた時に拾った建物らしき見取り図を再び開いていた。
ひょっとしたら?
山岸が良く観察するとそこは洋館らしき建物のようだ。
昔、凛ちゃんとゲームのバイオハザードをプレイした事があるから洋館の様子はなんとなく想像がつく。
やっぱり凛ちゃんはル―シの言う変な組織の連中に誘拐されたのだろうか?
そう言えば大戸島大学の小型怪獣出現騒動もやっぱりその変な組織の仕業?
ちなみに島上冬樹さんの日記は覇王が常に持ち歩いていたから、無事だった。
でも帰ったら部屋は何者かに侵入されて色々の持ち物が部屋中に散乱して滅茶苦茶だったけど。
ただ、凛ちゃん怪我してないかな?心配だな。
山岸は心の底からそう思った。
 
(第27章に続く)