(第28章)ブルーアイの恐るべき正体


第28章)ブルーアイの恐るべき正体

「その闇は圧倒的なまでに深くそこに存在する。」(出エジプト記 第10章21節)

 東京のとある封鎖された空間。
「ドラクルは原始アオシソウのDNAをメガギラスの化石から発見した。」
封鎖された空間にある3Dの巨大モニター画面が現れた。
モニター画面に白い髭のアメリカ人が木製のテーブルの上に座っていた。
エバート・F・ブッシュ大統領
「さて、君達が開発した『特別なG血清』のサンプルと全データをおとなしく提供して貰おうか?」
「おとなしく私の要求通りに全てのデータを渡せば、プロメテウス計画、
ホムンクルス計画、 Gコロニー計画の数々の違法な人体実験の真実は世間に公表したりはしない。」
「その『特別なG血清』を手に入れた後、どうするつもりですか?」
「我が息子が開発したBウィルスと特別なG血清とセットに、有機生物兵器の商品として
武器商人達を通じて、各国の政府や反政府組織に売れば
莫大な金が世界を動かし、全ての経済は豊かになるだろう。
君達はこの言葉を知っているかね?『武器商人つまり死の商人は売春婦の次に古い職業』だと。」
「たった今、貴方の息子さんが造ったBウィルスによる大戸島でバイオテロが起こっています。
一刻も早く、治療薬を造らないと!ウィルスが広がって世界中の罪の無い
大勢の人々が怪獣化し、パニックになります。」
「それに必ずそのウィルスを生物兵器として 利用するなら治療薬が必要な筈だ。」
「ミセスGが手に入ればBウィルスのワクチンが大量に製造可能だ。
以前、彼女の血液サンプルからBウィルスに対する抗体が見つかったのでね。」
「なんだと?彼女を誘拐する気か?」
とドイツの地球防衛軍の司令官。
「どの道、ワクチンと抗ウィルス薬があれば、このBウィルスは対人間や
宇宙人用の確固たるウィルス兵器となるだろう。
君達もおとなしく私の要求に従う事だ。」
しかしMJ12のメンバーの一人の金田トオルはきっぱりとこう言った。
「貴方が息子さんの作ったウィルスを悪用する気ならば!こちらは特別なG血清も決して渡しません!」
地球防衛軍の司令官のメンバーも金田トオルの言葉に同意し、彼の要求に応じない姿勢を示した。
その様子をモニター画面越しで見ていたエバート大統領は苦虫を噛んだような不快な表情をした。

大戸島米軍基地から5m離れた洋館内。
 凛は極秘資料保管庫で手に入れた極秘のログ(記録)
データのナハボ語の暗号データを解読していた。
しばらくしてナハボ語の暗号データは解読された。
凛のパソコン画面にはこう表示された。
「ナハボ語の暗号データを解読しました。日本語訳を表示します。」
そしてナハボ語が日本語に表示された。
「我々はゴジラ族や怪獣達の存在しない理想の世界を築くべく現代まで活動を続けた。
今まで我々組織は秘密結社として、理想の世界を創り出すのに必要な物を国連や世間に隠して準備して来た。そして世にも忌まわしいゴジラ族や怪獣達をこの世から永遠に抹殺する強力な生物兵器の開発に成功した。名前はリヴァイアサン。強力な毒薬『キャンサーカクテル』と
『Bウィルスの基本型』によるモンゴリアンデスワームの突然変異体だ。」
「まさか?RNA分子機械の正体って?Bウィルスの事?だとしたら?
大変!このBウィルスが世界中で流行したら世界中の人々はパニックになるわ!」
凛はそう結論に達すると手の平サイズのパソコンを閉じ、胸のポケットにしまった。
そしてメーサマグナムの弾の残量を確認しようと弾の入ったマガジンを取り出した。
メ―サハンドガンのマガジンは青色の大きなバッテリーのような物だった。
ちなみに大型・小型怪獣の襲来に備えて、通常のメ―サーショットガン、ハンドガン、
アサルトライフル、マシンガン、マグナム等の様々な武器を改造したメ―サ銃器を
施設内に設置する事が各国の政府により義務付けられている。
ただし一部の市民や政府の関係者から銃器に対する反発の声もある。
マガジンの残量は満タンである事を確認した。立ち上がり、
凛はマガジンを元の位置にしまい、両手でメーサマグナムを構え、先に進んだ。
その時、背後で気配を感じた。
メーサマグナムを両手で構え、用心深くゆっくりとうしろを振り向いた。
「これは?何の冗談なの?」
凛の目の前に立っていたのは?
半ば青い腫瘍に覆われた成人女性らしき人影だった。
そして凛を発見するなり、背中からメガギラスに似た青い巨大な翼を広げ、飛び掛った。
その動きがあまりも早すぎた為、凛はメーサマグナムの引き金を引く間も無かった。
前脚に当たる元々の両腕と中脚に当たる別の両腕が融合した太い腕を広げ、
両手の7本の小さなかぎ爪を凛の両肩の黒い服に食い込ませ、逃げられないようにガッチリと掴んだ。
無数の牙を持つ、口が開いた。口の中から4本の長い舌を花のように広げた。
そして4本の長い舌は瞬時に彼女の顔面を覆いつくした。
彼女は口や鼻を塞がれ、たちまち呼吸が出来なくなった。

大戸島米軍基地。
 広い軍内の会議室でドラクルのメンバーが全員集まって何やら会議をしていた。
「洋館内で作業していた2人のメンバーも無事、彼女に見つからずに帰還できたな。」
「はい、出来ましたウィルソン様。」
「さて、色々報告して貰うことが山ほどあるな。」
テーブルに座っていたミュータント兵2人は立ち上がった。
「はい、オニール軍曹の裏切りで例のDNA分子機械の一部が流出しました。」
「しかし感染した売春婦達は全員、店ごと始末したので問題は無いです。」
「では、大戸島米軍基地所属のウィルス学者や遺伝子生物学者の方々の働きぶりはどうかね?」
「はい、我々が開発したDNA合成装置により、何種類かの発癌性の高いDNAウィルスの遺伝子情報を元に化学物質で繋ぎ合わせ組み込みました。」
「その過程で大戸島の森で発見されたあの古代昆虫のメガギラスの化石から採取した原始アオシソウのDNAとそのメガギラスのDNAも同時に組み込んでいます。」
「しかし、何者かが試作中のブルーアイに天然痘ウィルスを組み込んでいた事実が判明しました。」
「その後、何故か気がつかぬまま特異な遺伝子配列を持つブルーアイDNA
ポリメラーゼを合成されていて。」
「ブルーアイDNAポリメラーゼをRNAに変換し、実験用の人間の細胞から注出した液に注入した結果、
ウィルスDNAがタンパク質を創り出し、人造ウィルスが開発されました。」
「まさかオニール軍曹以外にまだドラクルの組織内に裏切り者がいるのか? 何故ウィルスに細工を?」
とウィルソン上級大佐
バアンと扉が開き、CIAと国防総省の人間と思われる特殊部隊が乗りこんできた。
そして逃げる間もの無くたちまちそのにいた全員は両手に手錠を掛けられ、拘束された。
「違法な実験で危険なウィルスを産み出し、バイオテロを行った容疑でね。」
CIAの特殊部隊の一人が無言でウィルソンにボイズレコーダーを再生すると差し出した。
ボイズレコーダーから実の父親のエバート・F・ブッシュ大統領の厳しい口調の声が聞こえた。
「実は最近、分った事だが。MJ12から追放されたロシアの地球防衛軍司令官は私の事を誤解していたようだ。そのいらぬ誤解を招いたのはお前の責任なのだ!現実をきちんと良く見るのだ!
愛する息子よ!お前が目指している、ミュータントや普通の人間を新人類として進化させる事はおろか、
ゴジラ族や怪獣達の存在しない理想の世界の創造など不可能である事を。」
「お前が造り出したあのウィルス兵器『Bウィルス』と強力な化学兵器『キャンサーカクテル』
生物兵器ビジネスの為に有効活用しなければならない。
お前もアメリカ国民であり、アメリカの地球防衛軍の軍人の一人ならすぐに分かる筈だ!
わが国の巨大な複合軍事産業アメリカの経済を、世界の経済を支えている事と言う事に。」
 まさか親父が裏切り者?最初から私のBウィルスと
化学兵器の開発を軍事商品として利用する気だったのか?!
 それを聞いたウィルソンは信じられず、「くそおおおっ!」と絶叫した。

(第29章に続く)