キラーアイ(第1章)未知の恐怖の始まり

こんにちは畑内です。
お待たせしました。
キラーアイの短編小説が完成したので載せます。
未知なる恐怖をお楽しみください。
 
キラーアイ(第1章)
 
アメリカ政府のとある部屋。
政府の人間である短い髪の男。
名前はジョーダン。
彼はアメリカ政府の国防総省の上層部の人間で、あの前代未聞の実験の当時の責任者だった。
ジョーダンは一本のカセットテープを取り出し、それをビデオで再生させた。
ちなみにその映像はある前代未聞の実験が行われた極秘研究所の複数の監視カメラの映像を
アメリカ政府が極秘に回収し、編集したのちに分析担当の部署がキャプチャ―処理を施し、
世間には一切公表されず、国防総省の管轄下で厳重に保存されていたものだった。
つまりこのビデオテープは公文章扱いでアメリカ合衆国の所有物である。
最初のビデオテープに映し出されたのはジムと言う名前の男が
前代未聞の実験の前に残したメッセージだった。
「私が知る限り、およそ多くの人々は常に社会が形成した常識や
平均的な世界の中にある物事に素直に従って生きています。
つまり平均的なこの現実の世界から外へ出ようとは誰も思いません
例え様々な分野であらゆる科学技術が発達しようとも。
しかし我々はこの平均的な現実世界を超越し、ある科学的な方法で
未知の8次元の世界を見る事を試みようとしています。
もし成功すれば我々の世界は大きく広がるでしよう。」と。
やがて再生し続ける内にあの極秘研究所で起こったその前代未聞の実験の全容が明らかになった。
 
2012年5月2日に実際に起こった出来事である。
ふさふさした赤毛の髪と同じ色の豊かな髪を持った背の高い中年の男、
天才機械技師マックス・ケルビアンは広い研究室内の
展望台に設置された巨大望遠鏡の準備を慌ただしく進めていた。
ちなみに今やっているのは巨大な望遠鏡のピント合わせである。
一方、ガラス張りの素粒子加速器のコントロール室内では
パイルマインド磁気研究所の短い黒髪の男性スタッフのジョナサン。
きりっとした眉毛と両目。
両頬まで伸びたブロンド髪の女性スタッフのアシュリー。
2人は素粒子加速器の最終起動チェックの為に忙しなくパソコンのキーを押し続けていた。
「ジョナサン、アシュリー、最終起動チェックできたか?」
そして短い黒髪の物理学者の男性ジム・キャリアは2人のスタッフにそう質問した。
「出来たぞ。」
「いつでも起動できるわ。」
「じゃ、いよいよ起動開始だ!」
ジムは素粒子加速器の赤い起動スイッチを押した。
素粒子加速器はウィーンと甲高い音と共に起動を始めた。
そして予め用意された大きな台の上に幾つもの青い稲妻が光った。
しばらくして小さな黒い点が台の中央に現れた。
黒い小さな点は徐々に巨大化して行った。
やがて大きな高さ3m横幅2m余りの大きな黒い球体のワームホール(虫食い穴)が出来た。
ジョーダンは早速、数m先の大きな展望台に設置された望遠鏡で大きなワームホール(虫食い穴)を覗いた。
ちなみにワームホール(虫食い穴)とはブラックホールと同じように
強い重力で極端に捻じ曲げられた空間である。
さらに宇宙空間を繋ぐトンネルの様に別の空間に繋がっていると考えられる。
パイルマインド磁気研究所の物理学者であるジムの理論が正しければ
素粒子加速器が造り出した大きなワームホール(虫食い穴)から望遠鏡で覗けば
ワームホール(虫食い穴)のトンネルの先にある8次元の世界が見える筈なのだ。
ジョーダンは望遠鏡でワームホール(虫食い穴)を覗き続けた。
「見えたんでしょうか?」
天才機械技師のマックスがジョーダンの隣で静かに囁いた。
「真っ暗で何も見えないよ。」
ジョーダンは見える筈だと堅く信じ、辛抱強く、ワームホール(虫食い穴)を巨大望遠鏡で覗き続けた。
ワームホール(虫食い穴)が真っ暗で何も見えない。」
「やっぱりエネルギーが足りないのでしょうか?」
その時、ワームホール(虫食い穴)に異変が起こった。
再び、幾つもの青い稲妻が光った。
「なんだ?」
「分りません!ワームホール(虫食い穴)の中に何かがいます!」
「何んだって?」
ジョーダンは慌てて巨大望遠鏡で覗いた。
ガラス張りの素粒子加速器のコントロール室内でアシュリーとジョナサンは
すぐにワームホール(虫食い穴)の異変に気が付いた。
「あれはなんだ?」
「何か出て来るわ!」
「なんだって?」
ジムも目を丸くしてワームホールの穴を食い入るように見ていた。
バリバリと破れる様な音を立てて、ワームホール(虫食い穴)の奥から巨大な眼球が徐々に現れて来た。
「なんなの?あれは?」
さらに巨大な眼球はまるで漫画の様に黒いワームホール(虫食い穴)から飛び出した。
続いて視神経の様な赤い胴体と赤い4本の触手が現れた。
ジョーダン達はその様子をただ黙って見ていた。
巨大な眼球を持つ異生物は赤い胴体から生えた赤い4本の触手で起き上がると広い実験室の部屋を見渡した。
何処から出て来るのか分らないが凄まじく甲高い鳴き声を発した。
目玉の異生物は周囲の物をなぎ倒した。
その後、大きくジャンプすると視神経に似た尾の先端に分かれた3本の長く赤い触手をくねらせ、
空きっ放しの天井のダクトの中に吸い込まれるように姿を消した。
「・・・・・・・・」
その有様をジョーダン達はただ黙って見ていた。
数時間後、前代未聞の実験の最中に起こった思わぬ事故について
ジョーダン氏は重々しい口調で語り始めた。
「今回の実験で貴方達が黒いワームホールから発見したあの異生物はすぐに捕獲するべきだ。」
「でも、あの生物の正体も何も分からないんですよ。」
「マックスの言う通りだ。」
「もしかしたら危険かもしれないぞ。」
すかさずジョナサンと黒く短い髪の警備員の若者はそう反論した。
「そうですか?グラップさん。しかしその為に我々は生物学者ノートンさんを用意した。」
ジョーダンとグラップはあの目玉の異生物が逃げた天井のダクトの周囲に付着していた
目玉の異生物の赤い皮膚組織を嬉しそうな表情で採取しているアメリカ人の若い男性学者の顔を見た。
「それじゃ!マックスさん何か捕獲する方法は無いかい?」
ノートンの隣に立っていた黒い服を着た坊主頭の黒い男がにっこりと笑いこう言った。
「そんな事を言われても。ボビーさん。貴方は銃の扱いは凄腕と聞きました。
でも私は銃の扱いは凄腕じゃないし、警備員じゃない、ただの巨大望遠鏡の設計者です。」
マックスは困った表情で腕を組んだ。
「君達は?」
ジョーダンに意見を求められたアシュリーはこう提案した。
「そうだわ。目玉の異生物が潜んでいる研究所内の監視カメラの映像に繋げられれば。
広い研究室のダクトは必ず研究所内のどこかの部屋に繋がっている筈よ。」
 
(第2章に続く)