(終章)ビックボス、そして真実の終焉
手術を無事終えたクワイエットは念の為にした検査で
肺に異常や声帯虫の幼生の存在は確認されなかったので無事、
マザーベースの基地内に帰還した。
正に奇跡の生還だった。
一方、クワイエットの死を感じていたビックボス(エイハブ)は
一人、マザーベースの基地内の赤いコンテナの上で丸まっていた。
俺はクワイエットに誓った想いを俺は守る事が出来なかった。
俺は彼女を助けるどころか助けられてこのマザーベースの
基地内のコンテナに丸まっている。
俺が生き延びた代わりにクワイエットは命を亡くした。
また一人ここを去って行った。
失ったものを取り返すつもりが失っている。
その時、オセロットが現われた。
同時にフッとまるで魔術師の様に人間が出現した。
それは死んだと思い込んでいたクワイエットだった。
「ビックボス(エイハブ)
ビックボス(エイハブ)はコンテナから立ち上がった。
素早く降りるとクワイエットを鍛え上げられた筋肉の両腕で抱きしめた。
確かに彼女の華奢な身体の柔らかい皮膚の感覚が両腕に伝わって来た。
ビックボス(エイハブ)は初めて悲しみでも憎しみの怒りでも無い
喜びの涙を両頬から顎にまで大粒の涙を流し、僅かに嗚咽を漏らした。
そんなビックボス(エイハブ)を
クワイエットは優しく細いしなやかな両腕で
筋肉質のがっちりとした彼の身体を抱きしめた。
彼女も両頬から顎にまで大粒の涙を流していた。
信じられん!失ったものが帰って来るなんて!
そんなビックボス(エイハブ)とクワイエットの姿を遠くで
オセロットは静かに鼻を啜り、少し涙を流し見ていた。
筆談の中で彼女が体験した奇跡を知り、驚きの表情をした。
彼らにとってクワイエットの話は余りにも
空想的で途轍も無く衝撃的な内容だった。
「ザ・ボスが君の命を助けた?」
「本当にザ・ボスだったのか?」
ビックボス(エイハブ)とオセロットはメモ帳にそう書いた。
余りにも衝撃的な事件だった為、
一部で英語の文体が崩れ、震えていたりしていた。
クワイエットはメモ帳に返事を書いた。
「間違いない」と。
それを読んだビックボス(エイハブ)
とオセロットはキョトンとお互いの顔を見合わせた。
確かに信じられない出来事だ。
だが今ここで彼女が嘘を付く理由は無い。
2人は純粋にクワイエットの話を信じ、
彼女の命を救ってくれたザ・ボスに感謝した。
そして再び過去から未来の舞台に戻る。
2016年。
全ての真実を語り終えたホープは
再び黙って話を聞いていたソリッド・スネークを見た。
ソリッド・スネークはちょっと信じられないと言う表情をしていた。
彼は再び口を開き、こう尋ねた。
「それで君と母さんは?」
「母はビックボス(エイハブ)と結ばれて……」
「はっ!まっ!まて!まて!まて!まて!まさか君は?」
「それ以上の事は申し上げられません。
ただ母はビックボス(エイハブ)を本気で愛していたようです。
私も知っているのはその位で後は!ほとんど知らないんです!
私の母は私を産んだ後にオセロットさんやカズヒラー・ミラーさんの
おかげで全ての情報は極秘にされ、祖母と私はアメリカの小さな田舎町で
素性を隠して暮らしていました。
他にもカズヒラー・ミラーさんやオセロットさん以外にも
多くの方々の協力によって祖母は52歳まで生きられました。
後、あたしも20歳まで生きられました。しかも平和に。
だから私達は彼らに感謝の言葉とオオアマナの花束を置きに来たんです。
「君は?今は?何処で働いているんだ?」
「私は祖母を助けくれたザ・ボスの意思を継いで
「それはいい、きっと……ビックボスもザ・ボスも喜ぶだろう!」
「さて、そろそろ帰らないと!」
ソリッド・スネークは「じゃ!」と手を振った。
「じゃ!」とホープも手を振った。
そして墓を去ったソリッド・スネークの後ろ姿を見送った。
「あたし達も帰りましょう!」
そして名残惜しそうに首を上下した。
ビックボス(イシュメール)、
ホープは静かに歌を歌った。
それは母が大好きだった曲だった。
「鳥よ。空へ。運んで。あたしの言葉を。
人生。甘く優しい。私の生命。
私の呼吸。愛。激しい痛み。それでもずっと。私を支えてくれた。
花。過去の輝き。咲き誇る太陽の下で。
記憶。貴方に捧げたい。でも解っているでしょう。
私達が残して来たもの。
希望が消えて不安は留まる。
貴方に全てを遺せばよかった。
明日の為に。その時が来ても。
畏れないで全てを遺せたのに。私達は手放した。
ホープは静かに歌い終えた。
クワイエットは震える手でノートに何かを書いた。
ノートにはさっきの歌の続きが書かれていた。
「消えた筈の希望は。新たに娘を遺せたのよ。
武器も兵士の証もすべて手放し。もう悔いも。
死の畏れも無いわ。不安。消え去った。
夜が朝になる様に。」
ホープは片手にノートを抱え、親指を上げサムズアップをした。
母親のクワイエットはグッと親指を上げ、娘のサムズアップに答えた。
ホープはフフフッと笑い、
ノートを大切に機械仕掛けの車椅子の籠にしまった。
それから6年後。
こうして彼女はようやく真実の終焉を迎え、静寂に還って行った。
を実現させる為の団体の活動に生涯の全てを全力で捧げ続けた。
それは自分の母親とザ・ボスの願いでもあったからである。
(MGS・THA END)