(第22章)死亡(ジルマストダイ)

(第22章)死亡(ジルマストダイ
 
クエントはメルギスが潜む、暗闇に向かってマシンガンの引き金を引いた。
ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダッ!
連続した大きな銃声と共にマシンガンの銃口から72発もの
マシンガンの特殊弾が放たれた。
しかしメルギスは高速で移動している為か一発も当たらなかった。
「暗くて!早くて!全く当たりません!」
続けて暗闇から真っ赤に輝く電撃弾4発がジルに向かって飛んで来た。
「危ないです!ジルさん!」
ジルは咄嗟に回避しようとするが
間に合わず次々と真っ赤に輝く電撃弾が4発直撃した。
ジルの全身を真っ赤に輝く無数の電撃の束が包んだ。
彼女は感電し、熱さと激痛で全身を激しく痙攣させた。
「ぎゃああああああああああああああああああっ!」
彼女の全身の皮膚や衣服は黒く焼け焦げた。
さらにジュウウウウと言う大きな焦げる音と共に
全身から黒い煙を立ち昇らせた。
彼女は堪らず両膝を地面に付けた。
「ジルさん!狙いは私より彼女ですか!!」
ジルは歯を食いしばり、フラフラと足元をふらつかせ立ち上がった。
「ぐっ!がっ!まだ……闘えるわ!」
「ジルさん!無茶しないで下さい!」
クエントは慌ててジルの周囲の暗闇を最新の
ホラー探知機能が搭載されたジェネシスで映した。
そして邪気を感知し、枯れ木の姿をしたメルギスが映された。
直後、いきなりジェネシスの画面に向かって電撃弾が飛んで来た。
同時にジェネシスの画面は砂嵐とノイズで何も見え無くなった。
クエントが見るとジェネシスの機械はショートし、
火花を散らし、煙を噴き出し、完全に破壊されていた。
「畜生!烈花さんの次に大事な!私のメカを!!」
クエントはジェネシスをしまい、マシンガンを構え、
周囲の暗闇の銃口を向けた。
再び真っ暗闇から真っ赤に輝く電撃弾が飛んで来た。
それは再びジルの背中に直撃した。
再びジルの全身は真っ赤に輝く無数の電撃の束が包んだ。
彼女は感電し、熱さと激痛で絶叫した。
「うっ!ぎゃあああああああああああっ!ぐっ!あっ!ああっ!はっ!」
「ジルさああああああああああああん!」
ジルの青い瞳は白い瞳に変わった。
同時に呼吸も心臓の鼓動も停止した。
全身の力が抜け、崩れ落ちる様に地面にうつ伏せに倒れた。
彼女は信じられない事に彼女は……。
YOU DIED となった。
 
「ジルさん!ジルさあああん!」
クエントは地面に倒れたジルに何度も呼びかけたが何も反応は無かった。
ただ全身から黒い煙が立ち昇り、周囲には衣服と肉が
焼け焦げたような強烈な刺激臭が鼻を付いた。
「くそっ!畜生!許しません!殺してやる!殺す!」
クエントは怒りと憎悪をメルギスに向け、
マシンガンの銃口を暗闇に向けた。
しかし暗闇に紛れたメルギスの姿は肉眼で探すのは困難を極めた。
なにせメルギスの二つの赤い目のある方向に撃っても
すぐに高速移動で回避してしまうからである。
しかも暗闇の中で優位に立っているメルギスはクエントを翻弄し、弄んだ。
彼は自分の無力さに泣きたくなった。
 
完全に死亡したジルの意識は。
真っ暗闇の空間の中に青緑色の魂の姿でふわふわと漂っていた。
真っ暗闇の空間にまたあの魔女王ホラー・ルシファーの姿は無かった。
しかし代わりに何処からか威厳のある
魔女王ホラー・ルシファーの声が聞えて来た。
「お前はどうやら死んだ様じゃな!」
「えっ?嘘?あたし死んだ?」
ジルは青緑色の右腕を見た。
「そうじゃ!純粋な人間は簡単に死ぬ
肉体が壊れても。精神が壊れても。寿命が尽きても。
いとも簡単に死んでしまうものじゃ!」
「……………………」
「覚えておるかのう?
『時が来ればお前は純粋な人間ではいられなくなる』と。
そして今のお前の肉体も魂も外神ホラー・ニャルラトホテプの化身たる
魔女王ルシファーのマリオネット。
つまり操り人形の様な存在じゃと言う事じゃ。」
「あたしがホラーのマリオネット??ふざけないで!!
あたしはもうウェスカーの時の様に精神を操られたりはしないわ!
大体!あんたのせいで!あたしとあたしの娘は!!」
ジルはニャルラトホテプの細胞の一部の賢者の石と
始祖ウィルスについて指摘しかけて口をつぐんだ。
「そうじゃな!しかし今は下らぬ問答をしている場合じゃないかのう?」
しばらく怒りで血が昇っていたジルは不意に現世で暗闇に潜む
メルギスと闘うクエントを思い出した。
「しまった!クエント!」
「仲間の純粋な人間の男の命を助けたいと願うなら。
お前の魂を元の肉体に戻し、外神殺しの力に一時的に目覚めさせてやろう。
それでメルギスを追い詰めればよかろう!!お前は我の外神殺し!!
お前が何度も何度も何度も死んでもお前が望めば黄泉帰らせよう!」
「分ったわ!早く黄泉帰らせて!」
ジルの視界は真っ赤に染まった。
 
現世のこちら側(バイオ)の世界。
メルギスと交戦中のクエントは必死に
両手でマシンガンを構え、撃ち続けていた。
しかし暗闇の中に潜んでいるメルギスには一発も当たらなかった。
そればかりかメルギスは暗闇から飛びかかり、
無数の鋭い牙でクエントの右腕に噛みついた。
「ぐあああああっ!」
メルギスは無数の鋭い牙でクエントの
右腕の衣服と肉を無数の牙で切り裂いた。
幸いにも傷口は浅かった。
しかし傷口からは数滴の赤い血がポタポタと地面に流れ落ちた。
彼は荒い息を吐き、歯を食いしばり、
僅かな痛みと悔しさと憎しみを噛みしめた。
その後、両手でマシンガンを構えた。
彼の姿にメルギスは愉快に暗闇から笑った。
「ケケケケケケケケケッ!
ケケケケケケケケケッ!ケケケケケケケケケッ!」
「畜生!ジルさんの仇打ち!!」
クエントは大きく叫んだ。
その時、突如、メルギスの電撃弾の攻撃により、
完全に死んでいたジルの身体が一瞬、真っ赤に輝いた。
「えっ?何が?まさか?賢者の石?ああマズイ!
今ここで魔獣ホラー化したら……」
クエントが戸惑い警戒する中、暗闇に隠れていたメルギスも戸惑った様子で
一瞬だけ真っ赤な光に包まれたジルの身体を見ていた。
やがてうつ伏せに完全に死んでいた筈のジルの瞼がカッと開いた。
彼女の青い瞳は真っ赤な瞳に変わっていた。
更に黒味を帯びた茶色のポニーテールの髪も真っ赤に輝き始めた。
両頬には真っ赤に輝く模様があった。
静かに起き上がったジルはニヤリと不敵な笑いを浮かべた。
ジルは両腕を組み、勢い良く左右に広げた。
次の瞬間、彼女の全身から真っ赤に輝く光が放たれた。
その後、彼女の全身から放たれた真っ赤な光は
夜の暗闇をドーム状に照らした。
「こっ!これは?一体?賢者の石?うん?あああっ!!」
クエントが見ると真っ赤な光に照らされて
メルギスの姿がはっきりと肉眼で視認出来た。
その姿は正に真っ赤な髭の大きな枯れ木のようだった。
もちろんジルも何事も無かったかのようにこう呼びかけた。
「クエント!反撃するわよ!」
クエントは何事も無かったかのように
立っているジルの姿を茫然と見ていた。
しかしさっきのジルの呼びかけにより、
我に帰りすぐさまジルにこう返した。
「了解!反撃を開始します!」
クエントは両腕でマシンガンを構えた。
ジルは両手でBSAAの青いジャンバーを左右にガバッと開いた。
更に円形のバックルに付いている球体の宝石が真っ赤に発光した。
同時に真っ赤な光は全身を包んだ。
そして一瞬で緑色の異形の戦士アンノウンに変身した。
続けてジルは両腕を天に向かって勢い良く突き上げた。
 
(第23章に続く)