(第4章)洋館

(第4章)洋館
 
スーザンによる事件発覚から約10時間後。
BSAAエ-ジェントの烈花とクエントを乗せた
BSAAの特殊車両車は緑の木々に覆われた
森の中の岩に覆われた整備されていない道を走り続けていた。
運転しているのが坊主頭の男性の
BSAAエージェントのクエント・ケッチャム。
彼はBSAAでは指折りのメカギーク(機械オタク)
で機械知識や生物工学に精通しており、
バイオスキャナージェネシス』の開発者である。
慎重な性格で基本無茶はしない。
今回は相棒の新人BSAAエージェントであり、
向こう側(牙狼)の世界で魔戒法師の仕事もし
ている烈花法師の協力により、魔導力や邪気を感知する
魔戒フィルターが装備された改良型を持っていた。
他にも幾つもの武器も積んでいた。
間もなくして車のフロントガラスからかつてラクーンシティ
観光スポットとして有名だったヴィクトリー湖が見えた。
そして助手席に座っているクエントの相棒のBSAAエージェントであり、
向こう側(牙狼)の世界で魔戒法師の仕事も
している美しい顔立ちの日本人の女性は
茶髪の長いポニーテールに茶色の瞳をしていた。
その横顔も凛々しく女性でありながら男らしくも見えた。
更に性格も少々無茶をする事を厭わない活発的で行動的な性格である。
それ故、必ず仲間の魔戒法師達やクエントも常に気を配っている。
しかしその烈花と言う名前の日本人女性は何故か横顔が少し青かった。
その様子を心配そうにクエントが覗きこんだ。
「全く、烈花さん!車の運転中に本を読むから……
車酔いしちゃったんでしょ?」
「ああ、ああ、知りたい情報がたくさんあったからな……うっ!」
烈花は思わず右手で口を塞いだ。
クエントは「やれやれ」と呆れた表情をした。
烈花は申し訳なさそうにまた顔をうつむき、
自分が読んでいた分厚い本のタイトルを見た。
その分厚い本のタイトルは『黄道特急事件の真実』と印刷されていた。
また『黄道特急事件の真実』の表紙の下部には
『元STARSの衛生兵(メディック)に所属。
西オーストラリアのフィロソロフィー大学の教授及び
BSAAアドバイザー兼任のレベッカ・チェンバース著。』
と書かれていた。この本は2019年に発売されたものである。
そして主な本の内容は主に黄道特急からアンブレラ社の
幹部養成所までの道中に起こった出来事、
更に自分の日記や回想、その幹部養成所の初代所長にして
事件の黒幕のジェームズ・マーカス博士の日誌、
被害にあった幹部候補が残した手記やメモを彼女自ら編集し、
載録し、ノンフィクション小説としてまとめたものである。
ちなみに最後、『レベッカが捜索していた殺人犯の囚人ビリー・コーエン
ゾンビの群れに襲われて非業の死を遂げた』
とあるがこの部分のみフィクションである。
実際の真実はレベッカと最後まで行動を共にしており、
生き残り、彼女に逃がされ、行方不明となっている。
そして烈花はまた顔をうつむけ、下を向いたので更に気持ち悪くなった。
「前を向いていた方がいいですよ」
「ううううっ!ああそうする……」
烈花はしっかりと前を向き、
車のフロントガラスからヴィクトリー湖を見た。
「ところでやっぱり!彼女が言っていたあの女の子はやはり『R型』か?」
「可能性は高いでしょう。実際、この事件の裏には
HCFの産業スパイのライザー氏も関わっているようです。
「ライザー、確かあいつが!BSAA北米支部から『R型』を盗まれた。」
「はい!密かにBSAA北米支部
医療施設に潜り込んでいたホルム医師の手引きで……」
「そして、10歳前後まで成長した『R型』がBOW(生物兵器)として、
HCFの産業スパイのライザーを通じて
反メディア団体ケリヴァーの手に渡った。」
「しかし結局は『R型』は彼らが彼女を利用したバイオテロを起こす前に
暴走した事でメンバー以外のほとんどは女の子に次々と惨殺されたと。」
「何故?暴走したんだ?原因は?」
「さあー調査してみないと何とも言えません。」
やがてBSAAの特殊車両車は大きな広い駐車場に停車した。
そして意外に早く車酔い治った烈花と
運転していたクエントは車から降りた。
彼らはBSAA特殊車両の荷台からそれぞれ多くの武器を装備した。
突入準備が出来た事をクエントと烈花は
しっかりと忘れ物が無いかを含めて確認した。
2人は改めて目の真に立っている大きな洋館を見た。
大きな洋館全体は無数の緑色のまるで大蛇の様な蔦で覆われていた。
また洋館のほとんどの窓もどれも細長いクモの巣の様な蔦に覆われていた。
更に一部のコンクリートの壁からは太い茨の棘に
覆われた大木の様なものが天に向かって幾つも伸びていた。
それだけでは無く他にも様々な木々が勝手気ままに
コンクリートの壁に穴を開け、天に向かって無数の枝を伸ばしていた。
また穴の開いていない壁一面には
血の様に真っ赤な薔薇の花が覆い尽していた。
「不気味ですね……」
「何故こんなにも木々やイバラが?これも『R型』の力なのか?」
「恐らく……中に入ってみない事は詳しくは不明です。」
「慎重すぎるぞ」
「そう言う性格なのですから仕方ありません」
「正面玄関は空くのか?」
烈花は正面玄関の大きな四角い木のドアを押した。
すると意外と簡単に開いた。
「開きましたね……」
クエントはゴクリと生唾を飲んだ。
「入るぞ!令状はいらないだろ?」
「はい!必要ありません!」
クエントは愛用のマシンガンを両手で構えた。
烈花も彼女に支給された
自分専用のハンドガン・サムライエッジを両手で構えた。
そして静かに慎重に歩を進め、洋館の中に足を踏み入れた。
洋館内の2階建ての大きなホール内もまた凄い状態だった。
洋館内のあらゆる壁や天井が無数の細長い蔦に覆われていた。
しかし床の赤いカーペットは驚く程、綺麗だった。
天井には大きな豪華な埃にまみれたシャンデリアが飾ってあった。
また黄色に輝く照明も付いていた。
一階の大きなホールの正面には大きな階段があり、
二階の踊り場は左右に分れていた。
そして大きな階段の右側に小さな丸い机が置かれていた。
小さな丸い机の上には1998年製の
タイプライターがちょこんと乗っかっていた。
二階の踊り場の正面の白い壁には老人の大きな自画像があった。
「あの自画像の人物……もしかして?ジェームズ・マーカスじゃないか?」
烈花は『黄道特急事件の真実』に乗っていた彼の顔写真を思い出した。
「もしかしたら!この洋館も元々は
アンブレラ社の所有物だったのかも知れません。」
その後、2人は一階の大きなホールの周囲をざっと見渡した。
一階の大きなホールは左右に床と天井を繋ぐ
白いアーチ状の大きな柱があった。
だがその白い柱も細長い無数の蔓で覆われていた。
また右側の壁に茶色の扉が一つだけあった。
また反対の左側にも茶色の扉と青色の扉があった。
その時、不意に二階から愛らしい女の子の歌声が聞えて来た。
GO TELL AUHT RHODY(ローディ叔母さんに言いに行きな)
GO TELL AUHT RHODY(ローディ叔母さんに言いに行きな)
GO TELL AUHT RHODY(ローディおばさんに言いに行きな)
EVERYBOD Y IS(誰もが)
DEAD(死んだってね)」
「これは?『R型』の歌?」
「ですが2階にあの子の姿はありません!」
クエントは改良型のジェネシスを両手で構えた。
続けてジェネシスを左右にゆっくりと振りながら、
二階の踊り場の辺りを捜索した。
しかし残念ながら『R型』の姿は発見出来なかった。
「見つからない……近くにいる筈ですが……」
「探しましょう!何か手掛かりがあるかもしれません!」
「ああ、まずは生存者のスーザン氏が
通った二階の廊下付近を捜索しましょう!」
「そうしよう!何か手掛かりがあるかも知れない!」
2人はすぐさま目の前の赤いカーペットの
床の大きな階段を昇り、二階へ向かった。
洋館の2階は1階の構造とほぼ同じく右側に1つだけ二階の廊下(恐らく)
に続く茶色の扉があり、左側にも2つの茶色の扉があった。
2人はお互い頷き合い、
まずは左側の二階の廊下に続くと思われる茶色の扉を開けた。
そこは一階にある食堂全体が見渡せる大きな四角い構造の
赤いカーペットが敷かれた長い廊下だった。
 
(第5章に続く)