(第42章)贖罪

(第42章)贖罪
 
反メディア団体ケリヴァーのメンバーの一人
のリサ・アルミケラは真っ暗闇にいた。
間も無くして自分が良く知る女性の声が聞えた。
「リサ!起きなさい!」
あれ?あたし死んだんでしょ?だって……
リサは目の前がフラッシュバックした。
彼女の周りには幾つかボロボロに錆びたり、折れたりした
医療器具が床や鉄の皿や木の机の上に散乱していた。
更に自分の下腹部を見た時、血の気が引いた。
自分の下腹部が破裂し、自ら顔や床、
左右の壁を真っ赤な血で濡らしているのが見えた。
「いやああああああああああああああああっ!!」
リサは絶叫した。そして目の前がフラッシュバックした。
間も無くしてバラバラバラバラバラとプロペラがに鳴り続けた。
やがてリサは静かに瞼を開けた。そして再び周囲を見た。
すると周囲には黄色の液体の袋と血液が
大量の入った袋が何処からかぶら下がっていた。
「目覚めたようだね。気分はどうかね?」
「ええ、貴方は?」
「僕はジョン・C・シモンズ!ジルさんの知り合いさ!」
ジル・バレンタインさんの?さっきの声は??」
「君は幸運だった。君の下腹部が破裂し、
大量出血して顔が真っ青になっても
T-sedusa(シディユウサ)の作用によって
僅かな血のめぐりや呼吸で生きていた。
それをジルが見つけて私に連絡して
来たので医療チームを送り、君を助けた。
君の体内に栄養剤と輸血を投与しただけで君の身体は超回復し、
元の人間の姿に戻っている。もちろんあの巻貝も外したよ!
身が軽いだろ?ただ君は良く聞いて欲しい!
君は二度と死ぬ事が無い身体になった。
君は誰かに殺されても自殺しても死ぬ事は二度と無い。
あの親戚のリサ・トレヴァーの様にね。」
「そうですか……私は罪を犯しました。とても大きな罪です。
私はその大罪を背負って生きなければなりません。」
「そうだね!生きると言う事は『痛みそのもの』だからね。」
それにしても!驚いたよ!まさか君があのトレヴァー家の
親戚の娘だったなんてね。身元を調べてびっくりだよ!」
トレヴァー家で確かアンブレラ社の……」
「そう、あの一家はオズウェル・E・スペンサーと言う男に頼まれて
アークレイ研究所を偽装する為の洋館を建築させ、用済みとなった
一家をウィルス兵器開発の実験台にした。」
「私も『R型』にBOW(生物兵器)の製造の実験台にされました。
私はあの子を眠らせて止めようとしましたが………」
「出来なかったんだね。そして巨大なBOW(生物兵器)は
あの地下のアンブレラ社の人体実験補充用の
あのクリオネの何処かで眠っている。
今、BSAAのエージェントとジル・バレンタインが『R型』と
巨大BOW(生物兵器)を止めようとしている。」
「そうですか?止められるのでしょうか?私が産んだあれを……」
「心配無い!BSAAエージェントもジルもゾイもみんな一人一人大人とて
責任を持って『R型』と巨大BOW(生物兵器)を止めて見せるだろう。
それよりもしばらく聖ミカエル病院に入院して貰う!
残念だが直ぐに家には帰れないよ。」
「構いません!でも聖ミカエル病院は……。
私は若村とは恋人関係ではありませんが肉体関係でした。
そしてアシュリー先生が担当していた若村さんの精神鑑定の結果を
持ち出したのも全部、私なんです。
そして若村と反メディア団体ケリヴァーの抗議運動
によって救急車がER(緊急救命室)に入れず患者の
搬送が遅れて何人かが死にかけたと聞いて、今凄く後悔しているんです。
患者を助ける身なのに……人を殺そうとするなんて……。
いや!危うく殺しかけるなんて……あたし……。」
リサの目には大粒の涙が浮かんでいた。
「もう、いいよ。あとはBSAAやジル達がうまく丸く収めるさ!」
「良くありません!私は全ての罪を告発します!
それと私のもう一つのスマートフォン、元々は仕事用ですが持っています!
その中に私の独白動画と『R型』暴走の瞬間の動画が保存されています。
若村の虐待の瞬間も収められています!これを私のツイッター
動画サイトに投稿して下さい!ツイッターが炎上しても!
動画コメントが炎上しても!構いません!よろしくお願いします!」
リサはジョンに涙ながらにそう訴えたのでジョンはうーむと考え込んだ。
 
洋館の地下のかつてアンブレラ社が管理していた
人体実験用の人体補充用の療養所『クリオネ』の地下2階部分。
クエントと烈花はピンクのスマートフォンと写真を手に入れた。
そして改めて倉庫内の周囲を探し、
他に何か落ちていないかどうか探し回った。
2人はしばらく多数のコールドスリープ(冷凍冬眠)
カプセルの周囲を探し回ったが何も見つからなかった。
また床に『地下3階・食料と物品保管庫』
と書かれた大きなハッチを見つけた。
しかしその地下に続くハッチは完全に封鎖されており、
開ける事は出来なかった。
どうやら『R型』が完全に封鎖したようだ。理由は不明だが。
烈花とクエントはこの倉庫に何も無い事が分かると先のドアを開けて
HCFが工事中の空き部屋を使って作った仮説研究所に足を踏み入れた。
仮説研究所はほとんど恐らく『R型』が暴走する以前か
反メディア団体ケリヴァーがこの洋館を訪れる以前かは不明だが。
少なくとも数日前にはどうやら撤収作業を
終えているらしくほとんど何も残ってはいなかった。
勿論どの資料にもファイルにも医療器具もすべて外部に持ち出されていた。
あるのは広い四角形の部屋にボロボロの段ボールやゴミクズ、
紙屑が落ちていて埃まみれで汚れていた。
そして木の机がぽつんと中央にあった。
更にその上にはリー・マ―ラのノートパソコンが置かれていた。
更にパソコンのディスプレィにはとあるファイルが表示されていた。
クエントはボロボロの椅子に座り、マウスを操作してファイルを開いた。
そのファイルは間違いなくリー・マーラに関係のある情報だった。
ファイルにはこう書かれていた。
「リー・マーラ(プロト・プラントE-45Rー002)
『R型』(プロト・プラントE-45ーR001)
は優秀な核(コア)に成りえるだろう。
そして特に今回の実験においてどちらも
(BSAAが正式にB型T-エリクサーからT-sedusa
(シディユウサ)に名前を改めたのでこちらとする。
T-sedusa(シディユウサ)ウィルスに感染して変異した。
(リーの報告では10種類)の動物や昆虫、あのプラントデッド、
プラントスパイダー、ウィルスに耐性のある人間の脳や
昆虫の神経にプラントリーチが融合した小さな植物細胞が
一種のテレパシーを増幅させる役割を果たし、
対象の生物の精神を支配して統制のとれた軍隊の様な行動が可能となる。
更に統制官であり、核(コア)に成った者は同調している
他生物の視覚を利用して侵入者を監視や感情のある
生物の思念を遠くから常に理解が可能である。
故に裏切り者の監視や思考を読み取って早期発見する事も可能だろう。
全てはE型・エヴリンからヒントを得たのだ。
以前のプラーガータイプ2とタイプ3、エヴリンよりも
遥かに優れたこの核(コア)の力は確実に目玉商品となるだろう。
しかし唯一の欠点は『R型』と『リー・マーラ』には
精神や神経を同調させて操れる生物にバラつきがあると言う事。
つまりリーには操れない生物、『R型』には操れない生物がいると言う事。
もうひとつはT-sedusa(シディユウサ)のワクチンを投与されれば
この能力は簡単に無力化出来ると言う事だ。
これは今後の大きな課題となるであろう。
このアルバート・ウェスカーの能力をどう生かすか?我らHCFの
今後の議論となるであろう。またリー・マーラの遺伝子も優秀であるが。
それ以上にあの魔戒法師である烈花の遺伝子に注目している。
彼女の遺伝子には常人離れした優れた身体能力と
肉体の耐久性を司る遺伝子に
こちら側(牙狼)の世界では魔戒法師が持つ魔導力と
呼ばれる超能力の類の発現を司る遺伝子を発見した。
これらを使いR-003の製造を始める予定が上層部の会議で決定した。
またプラーガータイプ4と多数の反メディア
団体ケリヴァーの女性メンバーから
生まれたソルジャープラントデッドは指揮官によって烈花とクエント、
その他、殺し屋3名、後始末人2名の
実戦データを入手し、これから送信する事とする。
また指揮官は私のテレパシーによって『R型』に命令と軍事作戦を送信し、
忠実に軍事作戦を展開し、見事成功するかはあの子次第である。
『R型』はどうやら自分が創造した生物以外の
別の生物にはほとんど関心が無いらしい。
どうにか成功させたいのだが……大丈夫だろうか?
少し不安。以上で報告を終了する。
HCFのスパイ・リー・マーラ。」
 
(第43章に続く)