(第34楽章)更なる逃亡、穴待たずの魔獣と狩り人と魚よ。

(第34楽章)更なる逃亡、穴待たずの魔獣と狩り人と魚よ。
 
赤いセダンの姿をしたアレックスはそのカプラン巡査の怒りの声に対して
悪びれた様子も一切なくからかうような口調でこう返した。
「俺はレイプなんてしていませんよ!ミリオン(おまわり)さん!
貴方の大事な後輩達は急に俺とヤリたくなったんですよ?
望み通りヤッただけですよ!」
「ふざけるなあああっ!なんてことしゃがる!俺の大事な後輩達に!ふざけた奴め!」
激昂したカプラン巡査は警察のハンドガンの引き金に指を掛けた。
「まて!無闇に刺激するな!怒らせたら!ヤバい!このっ!
いい加減にしろ!この馬鹿野郎!お前の事だあああああっ!」
とうとうワンは怒り出し、カプランの耳元で物凄い剣幕で怒鳴った。
するとカプランは耳がキーンと鳴り、思わず頭が痛くなり、足元をふらつかせた。
ようやくカプラン巡査は我に返り、正気に戻ると赤いセダンに向かって
構えていたハンドガンの銃口をようやく降ろした。
静かにワン巡査はカプラン巡査にこう言った。
「確かに俺達の仲間達、3000人は全員、奴らに食われたし!
お前の大事な後輩2人はあいつにやられた!だが!今ここで無闇に発砲して刺激して!
ますます興奮して暴れ出したら?また大勢の人々が喰われるかも知れないし!
またグレイズ巡査やイコマ巡査と同じような
性犯罪に一般人が巻き込まれるかも知れん!
更に今度は好き勝手に町の建物や公用施設を暴れて破壊したら?
ますます被害が拡大してしまう!」
「ですが!こいつ!こいつ!まるで人間みたいに!犯罪を!!」
カプラン巡査は涙目で大口を開けてワン巡査に訴えた。
するとワン巡査は優しくも厳しくこう諭した。
「いいか?我々警察の仕事は犯罪から人々を守る事だ!
犯罪の拡大を防止するのも我々の仕事だ!
そんな俺達が犯人を刺激して被害を拡大させてどうする?どう責任を取るつもりだ!」
ワン巡査の言葉にカプラン巡査はとうとう黙り込んだ。
「いいか!実はな!俺の祖父がアラスカでグリズリーを狩っていてな!
そんな祖父が日本のヒグマと昔から北海道に住んでいた
先住民族アイヌの話をしてくれたんだ!それによると
ヒグマは人間を喰うと味を覚えてそのあとも人間を狙うようになる。
狙った獲物を執拗に追い続け捕まえるまで決して諦めない。
味を示すと満腹していても繰り返し襲う。特に厄介なのがシャトゥーンだ!」
「シャトゥーンって何なんですか?」
「『穴待たず』と言う意味のアイヌ語さ!
そう言う熊は喰い貯めに失敗して冬眠の穴を持たない。
常に極限まで飢えて人間を食べる危険性が極めて高いんだ!
それにあの赤いセダンのBOW(生物兵器)も間違いなく
肉食でタチが悪い事に人間の女とも交われる!
だからあいつは何百人の人を出動させてどんな荒っぽい方法を
使ってでも絶対に殺さなきゃいけない!でなければ!
さっき言ったように被害が拡大し続ける。」
「でも!普通にしゃべれますし!許しませんが!」
「いいか!どんなに人の真似をしようと!
車の真似をしようと奴はヒグマ以上の厄介で危険な動物だ!だから!」
ワンは鋼牙とジルを茶色の瞳で見た。
「ああ!いわずもが理解している!」と鋼牙。
「必ず……殺す!どんな理由があっても……」
「頼む約束してくれ!これ以上犠牲者を増やさないように!
とにかく何としてでも被害の拡大を阻止してくれ!
それと!とにかく俺の後輩達のグレイズ巡査やイコマ巡査のような被害者を……」
「分かっているわ!カプラン巡査!」
ジルは青い瞳で軽く頭を下げるカプラン巡査を見た。
「約束しよう!必ずあのBOW(生物兵器)は倒す!」
「さてさてお寒い三文芝居はここで終わりか?」
鋼牙とジル、ワン、カプランに背を向けたまま
赤いセダンの姿をしたアレックスは続けた。
「この先にセントラルパークの広場がある!そこで俺は待っている!
決着を付けようじゃないか?人間とBOW(生物兵器)どちらが強いか?
まあーマシに戦えるのはそちらのBSAAの冴島鋼牙と
ジル・バレンタインだけだろうな!勇気ある者よ!挑戦を待っている!」
そう言うと赤いセダンの姿をしたアレックスはキキキキッ!と
再びタイヤを激しく擦らせてまた時速100キロのスピードで走り去った。
ワンとカプラン、鋼牙、ジルはそれを見送った。
鋼牙は真剣な表情でワンとカプラン巡査を見た。
「これ以上!犠牲者は増やさない!決してな!」
「ええ!必ず追い詰めて倒すわ!」
「そうか!頼んだぞ!確か?ジル・バレンタインと鋼牙鋼牙か?」
ジル・バレンタインって確か?あっ!思い出したぞ!
元スターズでラクーンシティの生き残りで!FBCの陰謀を明らかにしたり!
アンブレラ社やトライセル社を壊滅させた伝説の人!」
「あら!今頃!気付いたの?」
ジルは笑いワン巡査やカプラン巡査を見た。
鋼牙はワンとカプラン巡査にこうお願いした。
それはこれ以上犠牲者が増えるのを阻止する為にニューヨーク市
マンハッタン区のフラットライアン・ディスクリストマディソン街、
23丁目、26丁目、5番街とブロードウェイ全ての住民に
外出禁止命令を出し、そして外出している住民は警察とBSAA隊員と
協力して自宅に帰らせるか安全な場所に避難させるようにして欲しいと。
ジルは直ぐにBSAA北米支部に連絡した。
間も無くしてBSAA北米支部から特殊部隊と医療チームが駆け付け、
万が一の為、グレイズ巡査とイコマ巡査を一度、コールドスリープ(冷凍冬眠)
カプセルの中に入れるとそのままBSAAの医療チームの車に乗せられ、回収された。
「よろしくお願いします!」とカプラン巡査はグレイズ巡査とイコマ巡査を回収した
医療チームに何度も頭を下げていた。
ワン巡査はカプラン巡査を促し、一度鋼牙とジルと別れてニューヨーク市警に戻った。
そしてBSAAと協力して新型BOW(生物兵器)の追跡作戦の準備を始めた。
今回は警察の署長とBSAA代表のマツダ・ホーキンスが合同で
指揮を執る事になっていたのである。
一方、シャノンとアヴドゥルが乗っている白いバイクは最初はペンシルバニア
の道路を走っていたが鋼牙とジルが乗るBSAの車がパトカーに見つかり、
そしてあの赤いセダンが30台のパトカーを破壊して走り去った辺りで
自分達もパトカーに見つかってしまい。止む無く俺はこの道路も
またニューヨーク市警の警察が道路を封鎖するのを予想した。
俺は素早く道路の分かれ道の右側の道路に入り、そのまま高速道路に入った。
そして道路を変えておけば少なくとも封鎖された道路で足止めを
喰らって警察に逮捕される事はあるまい。
しかし思わぬアクシデントに見舞われた。
自分とシャノンが乗っている白いバイクが走る高速道路とBSAAの赤いセダンと
パトカーが走っている通常の道路とは複雑に入り組んでいて
あっと言う間に見失ってしまった。
俺は大慌てで通常の道路にいたBSAA車や赤いセダンの姿を
必死に目を凝らして探し続ける事、10時間。
ようやく高速道路のすぐ横の別の道路を走っている
BSAA車と赤いセダンを発見した。
どうやらパトカーはもう追跡していないようだ。
多分あの車(BSAA)と赤いセダンはパトカーを振り切ったのだろう。
これで俺は捕まらなくて済む。アヴドゥルはシャノンを乗せて
安心して高速道路を走りながら通常の道路を走りながら横の通常の道路を
走っているBSAAの車と赤いセダンを追跡し続けた。
勿論、二人は鋼牙、ジル、カプラン巡査とワン巡査が目撃した惨劇は
途中で見失っている間に起こったので全く知らないのである。
またふと高速道路のすぐ横の道路を走っている赤いセダンを
一つの真っ白なライトが照らされているのにアヴドゥルは気づいた。
彼が夜空を見上げるとバラバラバラバラと言うヘリのプロペラ音がした。
そして上空の夜空には警察の追跡ヘリが飛んでいて赤いセダンを追跡していた。
「おい!マジかよ!マズイ!見つからないようにしないと!」
アヴドゥルはバイクに乗りながら大声を上げた。
「ちょっと!あんた!ちゃんと赤いセダンを見て!また見失っちゃうでしょ!」
一緒に白いバイクに乗っていたシャノンが苛立った口調でキーキー声で怒鳴った。
アヴドゥルも耳元でキーキ声で怒鳴られ、苛立ちを覚えつつも
すぐに警察のヘリから赤いセダンに視線を移した。
BSAAの車の中では車の運転はジルに任せて鋼牙は
無線機で警察のヘリコプターに乗り上空からライトを当てて
赤いセダンを追跡し続けるワン巡査と連絡を取っていた。
「こちら!ワン巡査!赤いセダンは5番街に向かっている!
間違いなくセントラルパークに行くつもりだ!
きっとそこであんた達を待っているんだ!」
「そうか!すまない!もっと早く駆け付けられれば!」
「あのSWAT(スワット)隊員や婦人警官や
男性警官達やグレイズ巡査やイコマ巡査を助けられたはずなのに……。
御免なさい私達!急いだけれど!間に合わなかった!」
ワン巡査は無線機を通してジルと鋼牙の謝罪を聞いていた。
「仕方ないさ!いくら急いでも間に合わない事はあるさ!
それよりもまずはあいつを止めてこれ以上!
俺達の仲間やグレイズ巡査のような犠牲者を増やさないようにしないとな。
出来る限りニューヨーク市警も協力する!以上だ!」
「ありがとう感謝する!引き続き監視を続けてくれ!」
「了解した!監視を続ける!」
鋼牙は無線でそう返すと一度スイッチを切り、元の位置に戻した。
その直後、ジルのズボンの中のポケットの携帯が鳴った。
咄嗟にジルはズボンのポケットから携帯を取り出してすぐに電話に出た。
すると日本人と思われる男性の声が聞こえた。勿論、ジルには聞き覚えがあった。
そうアリスが私のパソコンでよく観ているYOU TUBER(ユーチューバー)
FISCHRRS(フィッシャーズ」のメンバーの一人で
モトキさんの声だとすぐに分かった。
「あのージル・バレンタインさんですか?」
「ええ、そうよ!貴方はモトキさんですね!娘が楽しんで良く見ています!
いつも面白い動画をありがとうございます!」
ジルは笑顔で携帯でFISCHRRS(フィッシャーズ)メンバーのモトキに礼を述べた。
 
(第35楽章に続く)