(第11章)種とは?

ゴジラの自作小説を書きます。

(第11章)種とは?

 伊達警察署の取り調べ室で尾崎は拘束したレイに
「そのサンドラに投与したあの未知のウィルスについて知っている事を全て話してくれ!」
しばらく黙っていたレイは
「確かに……メイスンの言うことは正しかったわ!」
尾崎は
「それじゃ?彼女に何か変化はあったんだな!」
レイは
「両腕に緑色の鱗が浮かんでいたわ!それから彼女は『あたし
ゴジラの様な強い生物の間に子供を作るの!』と言っていたわ!
未知のウィルスは種の保存の為に作ったのよ!」
 するとゴードン大佐が部屋に入ってきて尾崎の耳元で
「未知のウィルスを投与したサンドラを網走付近で見つけた!
他の3人もニセコ付近を逃走中の事だ!」
尾崎はインターポールと共にサンドラを探して網走に向かった。

 ニセコのホテルで蓮と友紀がテレビのニュースを見ていた時、友紀は不安な表情で
「なんなの?」
蓮は「まずい事になりそうだ!」
友紀は少し苛立ち
「だからこのニュースが何だって言うの?」
蓮は
「この3人をカルチャーセンターで殺したのは多分……洋子ちゃんと同じ宇宙人の仕業だと思う!」
友紀はさらに苛立ち
「それがどうしたの??」
蓮は
「長野先生が話していたよね?『母星では種を存続出来なかっ
た!だからこの地球の北海道やカナダに移住した』って?」
友紀は考えながら
「つまり種を保存しようとして宇宙人は3人の人を?」
蓮は
「それで失敗したんだ!」
と返した。
友紀は
「でも……」
と口ごもった。
すると蓮は
「大丈夫!洋子ちゃんは俺が命を懸けて!守る!」
友紀は「あら?ずいぶん大袈裟ね!」
蓮は笑いながら友紀のデジタルカメラを取り出した。
「そう?それとカメラは俺が撮るよ!」
と言うと自分のデジタルカメラを起動させた。
蓮は間違って再生ボタンを押した。友紀はカメラの画面を覗い
ていた。巻き戻された映像にベッドで寝転ぶ蓮と洋子が一瞬映
ったが、すぐに画面はノイズで映像が乱れ何も見え無くなった。
友紀は「今のは何?」
蓮は
「何でも無いよ!」
とあわてて返した。
どこか様子がおかしいと感じとった友紀は
「あなた?洋子ちゃんの事も好きなの?」
蓮は答えず、慌てふためいた様子で録画ボタンをあっちこっち
探し回った。その拍子にまた再生ボタンを誤って押してしまった。
 再生した映像には腹から8本の触手が生えた洋子の姿が一瞬だけ映った。
友紀は一瞬恐怖が走った。
蓮はすぐに停止ボタンを押すと早送りボタンを押し、ようやく
録画ボタンを押した。
 蓮は友紀の顔を録画しながら自分の机に置いた。カメラには
会話をする2人の映像が録画された。
「御免……変なのを見せて!」と蓮。
「今の映像は何なの??」友紀。
「なんでもないよ……」と蓮。
「もう一度見せて!」と友紀。
蓮は
「あの映像は幻さ!もう見えないよ!」
と言うと友紀の身体を両手で強く抱き、唇にキスをして、2人
はベッドに倒れ込んだ。
 その翌朝、蓮は眠そうな顔でパジャマをセーターに着替え、
洗面所で歯を磨き、コップの水を口に含み、ガラガラとうがいをして、
ペッと歯磨き粉を含んだ水を吐き出した。歯磨きを終えると机に置いてあったデジタルカメラを持ち、
起動させ、早速洋子のベッドを映すと何故かそのベッドに友紀が眠っていた。
蓮は昨夜の出来事を思い出しながら
「洋子ちゃん、昨日の事まだ怒っているのかな?」
昨夜、凛と山岸の部屋で遊び終えた洋子は、自分の部屋に戻っ
て自分のベッドに友紀がいたのを見つけるなり、憤慨して部屋
を出て行ったのであった。そして蓮は友紀を置いて部屋を出て、
彼女と激しい口論をした挙句、洋子は部屋を出て行き、まだ
起きている凛と山岸の部屋に向かって泣きながら走り去ったのだった。
 蓮はその出来事を一度忘れて、安らかな表情で眠っている
友紀の寝顔を録画しながら小さい声で
「今友紀ちゃんが寝ています……寝顔も物凄く美人です!」
すると友紀はうっすらと目を開けて、カメラの方をじっと見る
と、ようやく気付いた様子であわてて毛布とシーツで身体を隠
しながら起き上がり
「なにしてるの??恥ずかしいから撮らないで!」
と大声を上げた。しかし蓮は笑いながら
「わかったよ!御免ね!」
というとカメラの停止ボタンを押した。
 その後、友紀はあわただしく服に着替えた。
蓮は歯磨きをして顔を洗っている友紀のうしろ姿を再び録画しながら
「クラスの部屋の割り振りって何か適当だよね!」
後ろ姿の友紀は
「えっ?何が?」
と聞き返した。
蓮は
「だってさ!一人の部屋の人数が2人か3人だったりするんだよ!」
友紀は
「あら?別にいいけど……」
と返した。
 彼らは朝のスキー授業を終えてホテルに帰ると、昼ご飯を食べ、
今日はニセコから流氷のある北海道網走までバスで移動した。
まずは市民会館に移動すると長野先生が「種とは何か?」
の授業を始めた。この一風変わった授業に生徒全員は戸惑いを隠せなかった。
長野先生は
「我々人間を始め様々な動植物がいます!」
ヒグマ、キタキツネ、エゾリスエゾシカ、道産子馬、北海道
犬の親と子供の日常やハンティングの様子を撮影した映像、そ
の動物達が住む雪に覆われた釧路湿原や豊な森の映像、北海道
にかつて住んでいたが今は居なくなってしまった
エゾオオカミの群れ、先住民族の暮らしの映像が大スクリーン
でそれぞれ流れた。
長野先生は
「北海道に住む動植物やアイヌ民族です!」
と説明した。
 また場面が変わり、人間の子供が出産する瞬間をドキュメン
タリーで捉えた映像も見せられた。女子生徒は、激痛で痛みに耐える母親になる女性を見て心が痛んだ。
その激痛を少しでも和らげようと必至に夫は彼女の背中を優しくさすり続けていた。
それから産声上げ、赤ちゃんが無事生まれた時、
多くの生徒から大歓声が上がった。
 それから場面が変わり、
今度は小笠原怪獣ランドのラドンが卵を産む様子が映された貴重な映像だった。
卵から双子のベビーゴジラが殻を破壊して、周りに大小多くの破片を撒き散らし
ながら産声を上げて孵化した。
 双子のベビーゴジラは生まれて初めてカメラを見て、
「何だろう?」
つぶらな瞳でカメラを覗き込みながらタイミングもぴったり
に首を傾げた。
女子からは
「可愛い!!」
と歓声が上がった。
 また場面が変わり、今度は数年前にインファント島で撮られた、
生き残った卵から産声と共に双子の幼虫が孵化する貴重映像を見せられた。
 長野先生は
「このように多種多様の生物達は子供を作り、種を存続させます!
みなさんに質問です!今恋人がいる人は手を挙げて下さい!」
すると蓮や凛、友紀、山岸、洋子、他大勢の生徒達が笑いなが
ら手を挙げた。さらに長野先生は
「それでは子供が将来欲しいと言う生徒は?」
その質問に対して手を上げたのは蓮、友紀、凛、山岸、洋子他、数名だった。
長野先生は
「そうですか……」
と残念な顔で言った。
 やがて長野先生の授業が終わり、凛のクラスはバスで網走の
水族館へ移動した。その途中周りの生徒達は
「長野先生の授業!なんか凄く面白かったね!」
と次々と感想が上がっていた。
 凛はクラス全員の生徒達に配られた『アイヌ神話集・知里
恵編』と書かれた薄い本を熱心に読んでいた。
 隣にいた山岸は
「なんだろう?ローマ字で変わっているな?」
と感想を述べた。
凛は小さい声でそのアイヌ語を読んでいた。

(第12章に続く)

では♪♪