(第9章)計画の前倒し

少し溜まっているので載せて置きます。

(第9章)計画の前倒し

―(8月21日『土曜日』例の実験から4日目)―

上海海洋研究所では再び数人が集まって会議が行われていた。
楊国花が
「どうやら厄介な事になりそうだわ……」
孫飛山は「アメリカのCIAや日本の内閣のCCI、そして地球防衛軍や国連の
連中も第1実験4日目だが……実験体の異変に気付き始めている」
楊国花は
「わずか4日目で『例の生物』の攻撃ホルモンと性ホルモンの効果は十分表れて
います。ですから……明日5日目に捕獲作業の準備を……」
と言いかけた時、高新一が手を挙げて立ち上がると
「それは……時期が早すぎる……もうすでに第2実験は始まっている!!」
中国人3人は驚いて「第2実験はもうすでに始まっている??」
と思わず同時に言った。
李仙竜は
「その第2の実験には一般の男性の実験体が必要だ。彼女はある一人の男性に対
して熱狂的に恋をしていることが分かっている。恐らく『例の生物』のホルモン
は特定の男性に強く反応し、その邪魔となるものを排除する性質があるらしい。
恐らくさっき言った事は彼女の周りに間も無く起こり始めるだろう……」
すると楊国花が
「つまり特定の相手の精子しか受け入れないと言う事?」
と聞いた。すると高新一は
「そうらしい……それに『例の生物』の血を引く、彼女が子孫を残せると分かれ
ば、量産もG塩基の研究も可能になる。」
と答えた。
しかし楊国花は
「でも……その男と彼女の間に子供が出来ても『カイザー』のような特殊能力を
持っているとは考えにくいわ……もしかしたら不完全なキメラかも知れないし。」
孫飛山は
「それでは彼女の卵子に『例の生物』の精子を受精させるのは無理ですね……」
高新一は
「とりあえず……第2実験の詳しい説明の前に大筋をまず説明すると、その特定
の相手の家の周りへ中国のスパイ達を張り込みさせる。一般人の家だから国連の
監視は手薄なはずだ……彼女はその男性の家に毎日必ず来るだろう。彼女は友達
に誘われない限り、ずっと彼の部屋でゴロゴロしている筈だから、ただ2人きり
の部屋を監視していればいい……何か大きな変化があればスパイが連絡を寄こす。
連絡の内容によって、拉致の命令など、楊国花さんにその辺は任せるよ!!」
楊国花は
「分かりました」
と答えた。

土曜の休みに友紀と山岸が凛の家へ遊びに行った。
友紀が
「今日はゲーセン行こうよ!!」
と2人を誘った。山岸は
「OK!!行こうよ凛ちゃん!!」
凛は小さい声で
「うん……」
とうなずいた。
友紀が心配そうに
「どうしたの、元気ないわね」
と言ったので凛は
「えっ?何でも無いよ」
と返した。
そしてしばらくゲーセンで遊んでいたが凛は1人で
襲ってくるゾンビや怪物を撃ち倒すゲームをやっていた。
友紀は
「そんな怖いゲームじゃなくて別の可愛いクレーンゲームをやろうよ」
と誘ったが彼女は一言も返さず、黙々と画面にいるゾンビ達を、銃型コントローラー二丁
で次々と打ち倒していった。
その動きはどこか中国拳法に似ていた。
やがてそのステージのボスが現れると、彼女は無表情でボスを撃ちまくった。
ものすごい早業で、ゲームの中のボスは反撃する隙がなかった。
彼女の銃さばきに山岸と友紀は唖然とした顔で見ていた。
凜はほぼ圧倒的な力でボスをあっさり倒してしまった。
山岸も驚いて
「凄い……この10ステージ目のボスは一番強いのに……それをたった二回のダ
メージであっさりと……」
友紀は
「さすがね……」
とつぶやいた。
凛は第11ステージもやり始めた。

(第10章に続く)