(第19章)予兆

(第19章)予兆

ニックが
「オイ!!やめろ!!」
と怒鳴った。
さらに尾崎がめくると「上海の研究所……実験体の性格は『例
の生物』のホルモンにより、常に興奮した状態で精神が高場し、
子孫を残せない焦燥感を持っている様子。顔はピンク色にな
り、恋人と思われる男の名前を呼び続けている……また興奮し
て浅い眠りしかできず、時々汗をびっしょりと書いて悪夢を見
るようだ。」と書いてあった。
さらに最後のページには
「中国の上海の海洋研究所から別の研究所に移送後、コンテナ
の中でも落ち着きが無く常にコンテナの中をウロウロしている」
と書いてあった。
凛の護衛は
「君達に協力してもらいたい!!」
と持ちかけた。美雪はあわてて
「ちょっと待って下さい!!まさかこの人達に!!」
凛の護衛は
「秘密を知ってしまった以上我々に協力してもらう!!
これはCIAの上からの命令だ!!他に情報を持っているかも
知れ無いとの事だ!!」
と答えた。
しばらくして美雪は何かを決心した様に
「これは母と娘の問題です!!あたしが仕事で忙しくてあの子
の変化を見逃した責任もあります!!ですから……お願いです
暗殺は私が……」
と言ったので全員驚いて彼女に視線が集まった。
突然「ビーッ」と取り調べ室のスピーカーから警報が鳴った。
突然の警報に驚いた密輸船の船長が思わず
「お次は何だ!!」
と大声で言った。地球防衛軍本部のオペレータ室では
アヤノが
ゴジラとジュニア!!中国の上海に上陸しました!!」
ジェレルは「上海の研究所を破壊して現在も進行中!!」
アヤノは
「まるで何かを探している様だわ……もしかして?凛ちゃんを
探しているの?」
ジェレルは「恐らく……」とつぶやいた。

放課後、山岸はまた担任の先生に捕まり、再びラーメン屋で会話していた。
担任の先生は
「そうか……凛さんの様子がおかしかったのか?うーむ……
これはエリートとしてちゃんと気づいてやるべきだったな……」
と反省する様に言った。
一方、友紀の家へ母親が仕事から帰って来た。買い物の荷物を
キッチンに置いて、
何となくテレビを付けるとゴジラとジュニアが上陸したと言うニュースを見た。
母親は娘の友紀の事がとても不安になり、一緒に行った父親や警察に連絡した。

バイオメジャー達に占領された研究所ではCCIの職員の一
人が謎の怪獣の死体の資料を取り出し読んでいた。
バイオメジャーの一人が
「何か分かったか?」
と聞いたので、CCIの職員は、研究所の中心部に数本のワイ
アに吊るされた謎の怪獣の死体を眺めながら
「いいえ……何も……」
と言った。
その時、突然怪獣の死体を吊るしていたワイアだけが何故か地
震のように激しく揺れ始めた。
数人のバイオメジャー達が
「何だ!!どうしてワイアだけが揺れているんだ!!」
やがて謎の怪獣を閉じ込めた数本のワイアの激しい揺れが収ま
ると、その黒い身体と頭部に長い角を持った謎の怪獣の死体の
背中がまるで断層の様に引き裂かれ、そこから暁色の粘液が噴き出した。
それは蔦の様になり、カプセルの中で不気味にのた打ち回った。
その様子をコンテナの隙間から覗いていた凛が驚いた様に
「一体??何が起きているの??」
再び右腕から今度は右胸にかけて激しい激痛が走った。
凛は息が苦しくなり、痛みをこらえ倒れ込んだ。
凛の頭の中で不気味な声が聞こえた。
「そこから出たいか?」
凛は訳が分からず「何??」と言った。
「そこから出たければ!!本能に従い闇の森の神の身体の一部
になるのだ!!」
凛は自分でもよく分からなかったが本能的にうなずいた。
数人の悲鳴とワイアが切れる音が聞こえたかと思うとコンテナ
が激しく揺れ出し、凛はあわてて身体を丸めて、床に伏せた。
「バキッバキバキ!!」という大きな音が聞こえ、凛は思わず
う両手で耳を塞いだ。
起き上ると、コンテナは粉々になり、消失していた。
しかも彼女は奇跡的にもかすり傷も負っていなかった。

(第20章に続く)