(第36章)テロリスト

(第36章)テロリスト

 友紀は蓮の病室にある箱をいじり、本当に洋子が宇宙人なの
か疑惑を晴らそうとしていたが、ロシア語が聞こえてきたので
友紀はあわてて蓮のベッドの下に隠れた。
しばらくして足音が聞こえた。

 轟天号はボロボロの状態のまま、海岸沿いにある流氷の一角に激突し、墜落した。
追い打ちをかける様に巨大クリオネの群れが大津波のごとく襲いかかって来た。
しかし突然、その巨大クリオネの群れが苦しみ始め、次々と石化して消滅して行った。
ゴードン大佐は「一体?どうしたんだ?」
ニックは巨大クリオネの画像を分析しながら
「どうやら……何者かによって強制的に消滅させられた様です!」
ゴードン大佐は
「まさか?サンドラが?」
尾崎は
「彼女に一体何が起こったんでしょうか?」
ニックは
網走市に出現したサンドラが変身したと思われる怪獣がゴジ
ラと交戦中との報告が入りました!映像を出します!」
やがて巨大なスクリーンに赤紫色の怪獣が映し出された。
尾崎は
「あれが……サンドラ?」
ゴードン大佐は
ゴジラにそっくりだな……すぐに彼女の所に行けるか?」
杏子は
「いや……電気ケーブルの一部が破壊されていて……すぐに修
復できるかどうか」
ゴードン大佐は舌打ちをして
「クソ!」
と怒鳴った。

 長い間睨み合った末、サンドラが頭部の8本の角をゴジラに向け、
闘牛の如く猛然とゴジラに向かって行った。
 その攻撃をゴジラはジャンプして踏みつけ、かわした。
8本の角はビルやマンションに突き刺さり、粉々に粉砕した。 
怪獣はワニの様な巨大な口を広げ、雪降る空に大きく咆哮を上げた。
ゴジラの背びれが再び青白く輝き、ゴジラは口から放射熱
線をサンドラに向かって吐こうとしていた。
 しかしサンドラは腹から2本の長い触手を伸ばし、
ゴジラの両足に巻きつき持ち上げた。
ゴジラはバランスを崩し、後ろに倒れ、放射熱線は真上に向かって飛び去って行った。
上に再びサンドラがのしかかった。
その時、ゴジラは再び狙いすました様に放射熱線を吐いた。
放射熱線はサンドラのワニのような顔面に直撃した。
サンドラは吹き飛ばされ、近くのビルに叩きつけられた。

 隠れている友紀が見たのは一人の黒髪の女性、
メイスンだった。
メイスンは友紀のいる部屋に入ってきた。
 ロシア語で何を言っているのか良く分からなかったが、
小さい頃、趣味でロシア語を独学で学んでいたのでなんとなくは分かった。
 メイスンは眼鏡を上げて、何かを取り出し、蓮の机に置いた。
ノートパソコンの起動音が聞こえた。
 メイスンは、ニュース動画をパソコンに映し出した。
友紀はその様子をベッドの陰からじっと見ていた。
 その映像に怪獣化したサンドラとゴジラが長い間、睨み合っているのが見えた。
友紀は口をポカンと開け、
「これって?あの怪獣って?まさか?何なの銃なんか持って?」
とつぶやいた。
 しばらくしてメイスンはまたも眼鏡をかけ直し、小さい箱か
ら1枚のデータディスクを取り出した。
友紀は見つからない様にそっとパソコンの画面を覗くと、
何かロシア語で長い文章が書かれていた。
メイスンは
「あとはあの事件とFBI地球防衛軍保有している資料と……
その主要人物を人質にして!それから……」
と何かブツブツとロシア語でつぶやいていた。
しかし友紀にはその先は分からなかった。
友紀は
「人質??まさか?この人テロリスト??」
と不安と動揺が彼女の心を包み込んでいた。

 蓮と洋子は狭い天井裏を這って進んでいた。
気が付けばそこは狭いタグトの中だと分かった。
 蓮は何かを感じた様子で「ハッ!」と顔を上げた。
洋子は不安な表情で
「何なの?」
蓮はしばらくして
「あの女は……闇に堕ちた……」
洋子は頭の中混乱し、ますます不安な表情で
「それってどういう事なの?」
と尋ねた。蓮は思わず口ごもりバツ悪そうな表情で
「それは……怖がらせて御免……」
と謝った。

 パトカーから現場である網走厚生病院に着いたガーニャ達は、
国際警察の関係者から、その犯人と思われる女がサンドラの母親でジュンだと
名乗っていると説明を受けた。
3人はその犯人と思われる女性の元へ案内された。
着くと早速サミーは、ウィルスをばら撒くと
周りの地元の警察や国際警察の関係者に脅しているジュンに向かって
「やめるんだ!そのウィルスをこっちに渡すんだ!」
と説得をした。しかしジュンはガーニャに銃を向けながら怒り
と悲しみの表情で
「こっちに来ないで!撃つわよ!それともウィルスをここでばら撒かれたいの?」
とすさまじい剣幕で怒鳴った。
 その時、1発の銃声が別方向から聞こえた。
ガーニャがジュンの方を見ると地面に倒れていた。
あわててガーニャやジーナ、サミーが駆けつけた。彼らはウイルスを回収し、
機動隊や国際警察はジュンを撃った犯人らしき女性を見つけ、後を追いかけ始めた。
それにガーニャ達も続いた。

(第37章に続く)