(第37章)占拠された病棟

おはようございます。
畑内です。
ゴジラの自作小説を変更しました。

(第37章)占拠された病棟

 優香は思わぬ犯人の要求に驚き、真っ青な顔で国連関係者
を見ていた。周りのスタッフや取材班も同じだった。
優香は動揺を隠せない表情で
「どうして?あたしが?あたしは一般人なのよ!」
とレポートも忘れて上ずった声で言った。しかし国連の関係者は
「犯人達はあなたの息子さんについて色々尋ねたいそうです!」
優香は動揺と不安を隠せず
「どうして……」
国連関係者は穏やかに
「大丈夫です!我々はあなたや美雪さんの身の安全を最優先に
守る義務があります!我々はテロには屈しません!」
するとゆかりは恐る恐るマイクを国連の関係者に近づけ
「それでは犯人の要求を拒んだのですね?」
と尋ねた。
 国連関係者は無言で頷いた。

 オホーツク海沖に墜落した轟天号でゴードン大佐は
「電気ケーブルの修復は?」
杏子は
「あと3時間は掛ります!」
しかし傍でニックが
「現在!網走市内でゴジラと交戦中のサンドラの体温が急激に
低くなっています!」
グレンが
「マズイな……網走市内は再び吹雪になり始めました!」
ゴードン大佐は
「これでは……ゴジラが不利だ!」
尾崎は
「国連の関係者からの報告では網走厚生病院で立てこもり事件
が発生した模様です!」
ゴードン大佐は驚いた表情で
「何?」
と言った。

 更に優香は国連関係者に
「それではFBI本部にある調査資料も?」
しかし国連の関係者は
「そこはノーコメントです!」
と答えるとその場を歩き去った。
 周りのスタッフや取材班は安堵した表情を浮かべた。優香
も緊張のあまり全身に力が入り、不安が消えたのでそのまま力無く、
雪が降り積もった地面に座り込んでしまった。

 ビルに叩きつけられたサンドラは素早く立ち上がり、遅れて
立ち上がったゴジラを睨みつけた。
 サンドラは巨大なワニの様な口を大きく広げ、咆哮を上げた。
 すると先程まで雪はちらつく程度しかふっていなかったのに風が強くなり、
地面や空に大量の粉雪が舞いあがり始めた。吹雪になりつつあった。
 ゴジラはその粉雪が大量に舞う吹雪をものともせず、サンドラに向かって歩き始めた。

 撃たれたジュンは市内の別の病院に送られていった。
札幌の医大病院から分子生物学者の音無美雪や神宮寺博士が
駆けつけ、あわててウイルスが入っていると思われるスーツケースが
損傷していないか調べたが、幸いにも防弾加工されたケースに損傷は無く、
後のウィルス検査でも漏れていない事が確認された。
 そのケースは広場に作られたテントに運ばれ、
すぐに中にあるウィルスを美雪と神宮寺博士は調べ始め、
ワクチンを作り出す作業を始めた。

 網走厚生病院内の狭いタグトの中で洋子は不安な表情で
「あたしたち助かるのかな?」
蓮は洋子を優しく抱き抱え
「大丈夫さ!」
と励ました。ふと洋子は
「あの時の事……御免ね……」
蓮は驚いた様子で
「えっ?」
と答えた。
洋子は
「あなた……友紀ちゃんの事が好きだったんでしょ?」
しかし蓮は苦笑した様子で
「でも!別れちゃった!」
洋子は言葉を失った。

 蓮の病室のベッドに隠れていた友紀は、シャランがいなくな
ったのを見計らいベッドから脱出すると、すぐに見つからない様に抜き足差し足
をしながら周りの様子をうかがい、犯人が歩き去ったと思われる方向とは逆に走り、
凛と山岸の病室へ向かった。

 友紀は凛と山岸の病室に着くとそっとドアを開け、
中へ入ると凛と山岸と数人の友達がトランプで遊んでいた。
 友紀はすぐに「ここにテロリストがいる!」と凛の耳元に囁いて知らせようとした。
凛は何故か座禅を組み、トランプをしながら考え事をしていた。
その時、「ガラッ」の病室ドアが開きロシア語で声が聞こえた。
ドアの前ではいつの間にか黒ずくめの服に着替え、
眼鏡をかけたシャランが拳銃を構え、ドアの前に立っていた。
友紀は思わず両手を上げ、小さいデジタルカメラを落とした。
 シャランは
「この病棟は我々が占領したわ!言う事を聞かないと命は無いわよ!」
と鬼のような形相で友紀や周りの友達を睨みつけながら言った。
 その場にいた全員その言葉を聞いて戦慄し、全身が凍りつき動揺した様子で周りを見ていた。
山岸も唖然とした様子でシャランを見ていた。
しかし凛はまた野獣の唸り声を揚げ、メイスンを睨みつけていた。
 不意にメイスンは友紀のデジタルカメラを見るなり、胸倉を
掴み、病室のドアに叩きつけた。
シャランは日本語で
「さっきまで!何処で何をやっていたのかしら?
何か変な真似はしていないんでしょうね?」
 友紀は恐怖で足がすくみ、ただ半べそ状態のまま必死に左右に首を振った。
しかしシャランの怒りは収まらず
「それじゃあなたのお友達2人は何処よ!」
と問い詰めた。友紀は恐怖で首を振りながら
「知らないわ……本……本当よ!」
シャランは拳銃を友紀の額に付けた。ひんやりとした感触が友
紀の額に広がり、ただ恐怖で何も言えなくなった。こんなに怖
い思いをしたのはこれで3度目だ。でも……ここで死にたくない!助けて!誰か……
と彼女は必死に願い続けた。
周りの生徒達は助けることもできずただ呆然とその様子を見ていた。

(第38章に続く)

今日の変更はここまでです。