(第39章)危険な人形遊び

(第39章)危険な人形遊び

レベッカは、占領している凛達の病棟のドアや壁や柱に
プラスチック爆弾が入った木箱を銀色のガムテープで固定し始めた。
そこに蓮と洋子を探していたメイスンが通りかかり、
怪訝な顔で
「何?それ?」
と尋ねた。レベッカは澄ました顔で
「あたし達の身が危なくなったら!この病棟、人質やあたし達
の手掛かりと共に消えてもらうわ!」
と妖艶な笑みを浮かべた。
シャランは真剣な顔で
「金髪の日本人のガキには気付けて!」
レベッカは驚いた表情で
「何?急にどうしたの?」
シャランは
「音無美雪の娘よ!何か得体の知れない力があるの……」
レベッカは少し考えると
「成程ね……ありがとう!気を付けるわ!」
と返した。シャランは手を振ると拳銃の弾を込め
「それじゃ……例の2人のガキ達を探すわ!」
と言うと蓮と洋子を探して別の廊下を探し始めた。

 ガーニャ達は中国人の女性を逮捕した後、機動隊、国際警察
官達を引き連れて病院の駐車場から非常階段を昇り4人が占領
している病棟の非常ドアの前に立ち、突撃の合図を待っていた。
ジェレルが監禁されている部屋で彼の見張りを
していたレイは腕組みをしながら今までの出来事を考えていた。
元テログループのリーダーであるサンドラが自分や仲間達を
裏切るのは時間の問題だとうすうす感づいていた。もちろん他
の4人も同じだった。だから4人はいつもサンドラの行動を監視していた。
 ある日シャランは
「裏切られる前に利用しましよう!」
とレイ、レベッカ、メイスンに提案した。その提案に最初に乗ったレイは、
サンドラに自らを実験体にしてウィルスの与投与実験を進める様に仕向けた。
 次に乗ったレベッカはサンドラが作り出したウィルスにある細工を施した。
ウィルスにはサンドラの怪獣化の可能性を考慮し、
そのリスクを最小限に抑える為、中国で回収された暁のアメーバ
『デスバガンバクテリア』のDNAと、オルガナイザーG1と凛と美雪のG塩基を入れていた。
しかし、レベッカはそのゴジラのDNA情報のみのオルガナイザーG1に、クリオネやヒグマを始め、
様々な生物のDNAを目茶苦茶に組み込んだ。
さらにG塩基を基準を下回る量に減らし、もちろんサンドラに渡した全ての資料は偽造した。
2人の企み通り、サンドラは暴走して怪獣化した。
さらに今は網走市ゴジラと戦っている!後は自ら破滅してしまえばし
めたものだと考えていた。
ヒグマやクリオネや他の様々な生物に感染するリスクは極めて高かったが、それはやむをえない。
ここまで考えてレイは妖艶な笑みを浮かべ
「あとはサンドラの死体を国連より先に回収して!
何処までウィルスが変異したのか徹底的にサンプルを調べなきゃね!……
まあ……今は例のガキ2人を捕まえて……それからこの男をいただいて…」
とまでつぶやくとそこに3人のロシア人が現れた。
レイは口を開き
「それで例のガキは?」
メイスンは無言で首を左右に振った。
その隣にいたレベッカ
「どこに逃げたのかしら?」
と金髪の髪を両手でいじりながら言った。
レイは
「それじゃ?サンドラは?」
レベッカ
「あの女はかなり変異しているわ!」
と答えた。
 ちなみに変異したサンドラはパソコンのTV画面で監視下に
置かれていた。つまり3人はサンドラを誘惑し、
彼女はゴジラの危険な力に魅せられ、まんまと暗黒へと堕ちた。
 しかしメイスンただ一人は違っていた。
彼女は危険な策略に反対していた。
だがリーダーとなったレベッカに脅され、
結局レイと共に泣く泣くこの策略に協力させられた。
そしてサンドラは愚かにも自分が裏切ったと思い込んでいる。
しかし先に裏切ったのは彼女達の方だった。
そしてゴジラの力を得るのはサンドラでは無く、彼女達なのだ。
 何故シャランはこんな案を思いついたのか?レイやレベッカは良く分からなかった。
しかしメイスンだけは何となく理解していた。
そう……『人形遊び』なのだと……新しい人形があれば欲しがり……
気に入らない人形があれば捨ててしまう。
現にサンドラも同じ事である。
いずれあたしも「人形」として捨てられるかも知れない……ゴジラの力が手に入るまであともう少し……
サンドラはその為の捨て駒にすぎない。
一体シャランの心には次はどんな策略が浮かんでいるのか?
考えただけでも背筋が凍り付く思いに駆られた。
自分達はその策略を利用して高みの見物をしながら楽しんでいる……
そしてあたしはそんな『危険な人形遊び』
に無理やり付き合わされている忠実なしもべ……と言った所かしら?
とにかく、捨て駒にされる前に何とかして脱出しなければならないとまで考えていた時、
ふと我に返るとレベッカは妖艶な笑みを浮かべ
「我ながら……素晴らしい策略だったわね!」
メイスンも同じく妖艶な笑みを浮かべ
「ええ!」
と答えた。網走厚生病院立てこもりから早24時間が過ぎようとしていた。

(第40章に続く)