(第15章)ある伝説の真相(その2)

(第15章)ある伝説の真相(その2)

インファント島の洞窟では小美人が
「もう一つあります!!」
山根優香は「何??」
小美人は「それは凛さんに関係があります!!」
凛は
「あたしに……」
と自分を指さしながら言った。
小美人が
「まだ人間が今とは違う姿をしていた頃、アトランティス大陸
超古代文明により『玄武』と言う生体兵器が作り出されました!!
美雪さん!!あなたの娘の凛さんのもう一つの前世は……」
とまで言い掛けた時、凛は思い出した様に
「それって?中学の時にパパの手掛かりを見つけようとして
カウセリングで見ました!!間違いありません!!」
と大声で言った。
美雪は
「でもそのカウンセラーはインチキ占い師だったんでしょ!!」
憤慨した様に言った。
しかし小美人は
「恐らく本当の前世の筈です!!あなたはその存在を知ってい
る筈です!!」
と強い口調で言った。
美雪は思い出した様子で「まさか?あの怪獣世界……」
とつぶやいた。
凛は
「知っています……知ってました……あの時見た激しい恐怖……死の瞬間の限界までの恐怖を……」
と泣きながら言った。
 
 東京練馬区にある国連研究所で神宮寺博士は数人の研究員と共に回収した
デストロイアの細い破片を顕微鏡で調べていた。
その細い破片は1mmの群体だった。また完全な形の個体が品川のビルの中で発見された。
1cmのデストロイアを調べた結果は驚くべきものだった。
デストロイアの体内はウィルスの様な微小構造体で出来ていた。
神宮寺博士は
「まさか……なんてことだ……早くこの生物の危険性を警告しなくては……」
とつぶやくとあわてて受話器を取った。
電話口に地球防衛軍の本部の室井少佐が出た。
宮司博士は室井少佐に
「室井さん……大至急波川司令官に変わってくれ!!
緊急事態だ!!落ち着いて聞いてくれ!!
デストロイアの体内を調べて分かった事だが、
この生物はウィルスの様な構造体で出来ている!!
1mmから1cmのデストロイアは人間の肺に侵入して
二酸化炭素を吸収し、ミクロオキシゲンに変えて体外に放出し、
肺の酸素を破壊して呼吸不全を起こさせ、最後は身体を液化さ
せて消滅させる。つまりこのデストロイアは別の生物にも感染
する危険性が極めて高いことが分かりました!!
だから早く!!東京の町全域に未知の病原菌が流行を始めたと緊急警告を住民に伝えてください!!
そして少しでも感染の疑いがある人間をただちに隔離する様に全病院関係者に伝えてください!!
またデストロイア本体の破片から卵の様なものが検出されていま
す!!まだまだ被害が拡大します!!
品川ビルの周りに冷凍メ―サーの鉄条網を張っているだけでは被害は到底塞ぎ切れません!!
急いでください!!」
室井少佐は
「分かった!!すぐに波川司令と病院の関係者に連絡して緊急の対策を!!」
と言うと電話を切った。神宮寺博士は力無く近くの椅子に座り込み、
「何て事だ……」
と何度もつぶやいていた。

小美人が凛に向かって、
「あなたのもう一つの前世はアトランティス大陸の女性科学者で、北の『玄武』
と言う組織に所属していました。他にも東に『青龍』、南に『朱雀』、西に『白虎』
と言う組織がありました。そして三種の神器の内『ヤタノカガミ』と
『アメノムラクモノツルギ』を作り出し、来るべき破局に備え、
アトランティス人を保護させる計画をしていました。
しかし『白虎』と『玄武』が対立を始めました。
さらに『朱雀』と『青龍』も対立関係となり、
『朱雀』と『白虎』が手を組み、『青龍』と『玄武』が手を組み始めたのです。
今までお互い協力していたのに……お互いの意見の食い違いでバラバラになりました。
そしてさらに悲劇は続きます。『朱雀』で開発していたコウモリの様な生体兵器
が狂い始めました」
凛は
「どうして狂ったの?」
と聞いた。
小美人は
「そのコウモリの様な怪獣は将来生体兵器『朱雀』として実用化される予定でした。」
凛は
「原因は欠陥のせい?」
と聞いた。小美人は「その実用化される予定の『朱雀』は、数千体の試作を統制
する為にさらに改良された一体でした。」
美雪は
「それって『カイザー』の様な?」
小美人はうなずいて
「生体兵器にはその自我となる人間、つまり兵器と精神的に一体化する巫女が必
要でした。『朱雀』にも巫女がいましたが、三種の神器の一つである
『ヤサカニノマガタマ』を使って『朱雀』と一心同体になった時、
その巫女の心の奥底に潜む傲慢な心に共鳴して『朱雀』は完全に狂ってしまいました。」
凛はおずおずと
「それでどうなったの?」
と興味深々で聞いていた。

(第16章に続く)