(第17章)蔓延

(第17章)蔓延

小美人は答えた。
「2代目ゴジラの肉体にはかつての青龍の魂が宿っているから
です……肉体が宇宙怪獣か生体兵器かは、魂にとっては関係あ
りません……」
凛は「『白虎』も?」
小美人は「いつか肉体を持って現れるかも知れません……」
凛は「それじゃ……『白虎』と『青龍』の巫女はどうなったの?」
小美人は
「『白虎』と『青龍』の巫女もどこかに転生しているかもしれ
ませんが……どこにいるのか分かりません……」
と答えた。
最後に小美人は
「もしも必要な時はこのインファント島に伝わるお守りがあな
たの助けになるでしょう……」
と言うと、凛に新しいお守りを渡した。
それは小さな鏡だった。
凛は「まさか?この鏡って?」
小美人は黙ってうなずくと姿を消した。
そして凛は自分の部屋で目覚めた。
その直後、電話の大きな音が響いた。
凛は机から立ち上がって、つけっぱなしのパソコンの電源を切
り、涙を拭いて、小美人から貰った小さな鏡を机に置くと電話に出た。
その電話は友紀の母親からだった。

デストロイアが出現した「品川ビル」を中心に、半径3キロの距離に配置された
「冷凍メ―サー鉄条網」からさらに6キロの距離にある中学校や高校では生徒が
液化して消失する怪事件が相次いだ。
ミュータント部隊の調査の結果、液状化した生徒の体内から
「ミクロオキシゲン」や幻覚剤である「PS45」が検出された。
襲われた数ヶ所の中学校や高校を含めた半径20キロの住民を避難させて、今度
は冷凍メ―サー車や冷凍兵器を集め50mの高さの巨大な壁を作り、鉄条網を内
側に貼り、ドーム状のバリケードを築いた。
そのバリケード内に突入したミュータント兵は、茶道教室を行っていたと思われ
る古い家で緑色の体色をしたデストロイアを発見した。
尾崎は無線で
バリケード内の西エリア03ポイントにて緑色のデストロイア発見!」
と報告した。さらに数匹のデスロイアも出現した。
激しい銃撃戦の末、ほとんどを倒したものの、全身緑色をしたデストロイア
あわてて天井裏の数cmの狭い隙間に逃亡した。
尾崎は
「何であいつだけが緑色なんだ!それに!身体を変化させられるのか?」
ジェレルは
「茶道だからだろうか?」
ゴードン大佐は
「あのな~」
と呆れたように言った。
凛は、電話口で友紀の母親があわてふためいて
「大変よ!品川のビルで……友紀が……」
と泣き始めたので
「どうしたんですか?」
と聞いた。
「怪獣に襲われて!7人の友達を連れて!」
凛は
「何ですって!?」と大声で言った。
1時間後、母親の美雪と共に凛は地球防衛軍本部内にある「特殊生物病院」へ急いだ。
その途中、美雪と部屋で見た事を全て話した。
美雪は
「やっぱり……これは現実だわ。前にも何度もあったから……」
地球防衛軍内の病院に着くと、凛と美雪は感染症を防止する為に消毒液を両手に
付け、クリーンウェアーとマスクを着せられた。
黒と茶色が交ざった様な短い髪をして、灰色のシャツを着た凛の護衛の指示に従
って、病室内に入る前にGメ―サーでクリーンウェアーを殺菌し病室へ入って行った。
凛は
「友紀ちゃん……」とつぶやくとビニールシートのカーテンを開けて、ベッドに
近づいた。
友紀は眼を開けて凛の顔を見た途端、大泣きを始めた。
そして口を開け
「殺された……友達……怪獣に!」
としゃくり上げながら言った。

同時刻

地球防衛軍本部の会議室で尾崎は
デストロイアは……神宮寺博士の説明によれば普段は1cmあるいは1mmに
分裂していて、冷凍メ―サー鉄条網やバリーケードを建てる前からすでに東京品
川区から目黒区、港区、世田谷区、渋谷区、千代田区とわずか数ヶ月間で生息域
を拡大させていました!奴らはウィルスのような微小の構造体出来ていま
す!さらに奴は人間の体内に侵入して、ミクロオキシゲンを放出させて捕食した後
次々と他の人間に伝染していきます……
死者は数千人からこのままでは数万人にのぼるかも知れません。また襲われた人
間の体内からは『ミクロオキシゲン』の他にも『PS45』と言う薬品が微量なが
らも検出されています。また数年前に東京や北海道で発見された謎の変死体を
調査した結果、微量の『PS45』が全ての変死体の体内か
ら検出されています。デストロイア達はその薬品の匂いを辿って狩りをしているものと思われます。
薬品を摂取している人間や動物の数は不明です。」
するとCCIの関係者の一人は
「治療法は?」
と聞いた。
尾崎は
「皮肉にも……ゴジラの細胞の遺伝子情報をコピーしたGメ―サーを治療用に加
工したレーザーで、デストロイアを駆逐させる事に成功しました。おかげでほと
んどの人間の命を救う事が可能になりました。」
と答えた。するとゴードン大佐は
「これはミクロオキシゲンを探知する特殊なレーダーで見たものです!現在1cm
程のデストロイアの群れにはどうやら一カ所に集まろうとする習性がある様です。」
するとCCIの関係者の一人が
「3体のゴジラは?」
と聞いた。
尾崎は
「現在行方を調査中です!」
と答えた。尾崎の隣にいたニックが何かを決意した表情で手を上げた。

(第18章に続く)